山も空も雲も美しい、信州を代表する絶景ロード。
群馬県の草津温泉と長野県の湯田中渋温泉郷をつなぐ国道292号・志賀草津道路は、日本の国道最高地点、標高2172mの渋峠を越えていく。草津温泉側から走り始めると、最初の3-4kmこそ「よくある林間のワインディング」といった雰囲気だが、高度を上げるにつれて、周囲の風景はダイナミックに変化していく。
白樺湖から車山にかけては、美しい緑の丘が連なる。
山国・信州には魅力的なワインディングロードが数多くあるが、そのなかでも前出の志賀草津道路と双璧をなしているのがビーナスラインである。茅野市内の起点から美ヶ原台上の終点まで、かつての有料道路をたどると総延長は65kmにも達する。まことにスケールの大きなワインディングロードで、そのほとんどがすばらしい風景の中をゆく。
道の駅に併設される美ヶ原高原美術館(入館料1,000円/ 9:00-17:00)。
ビーナスラインという名前は、たおやかな蓼科山の山容を〝女神〟とたとえたことに由来するという。1960年代後半、蓼科有料道路(茅野市-白樺湖)と霧ヶ峰有料道路(白樺湖-美ヶ原台上)の総称として公募されたものだが、これほど道の雰囲気とぴったりのネーミングは他にはないかも知れない。
車山や霧ヶ峰、美ヶ原などのなだらかな山々の姿も、そこを抜けていく道路の曲線も、どことなく女性のボディラインを思わせる優雅なもので、男性的な山岳風景の中をゆく志賀草津道路とは好対照をなしている。
さらに古い話をすると、このビーナスラインは軽井沢と上高地を結ぶ壮大な観光道路〝中信高原スカイライン〟の一部として計画されたもの。その名残が美ヶ原山頂を挟んで王ヶ頭直下まで延びる美ヶ原スカイラインである。自然保護のため美ヶ原台上-王ヶ頭間の工事は中止となり、美ヶ原山頂付近の高原風景は昔のままの姿でいまも残っているのである。