海外試乗

【海外試乗】もう一度ワゴンに乗りたくなる! ボルボ V60

SUV全盛のいまだからこそ輝きを増す
良質なツールとしての機能と存在感

XC90以降、新世代のプラットフォーム&パワートレイン戦略を成功に導き、いま勢いに乗るボルボが放つ次なる一手は、かつて1990年代に一世を風靡した850シリーズの再来を予感させるミッドサイズ・エステートの最新作。背の高いクルマが幅を利かせるいまだからこそ、思わず振り返ってしまうほどの存在感がそこにはある!

なにからなにまでジャストフィット

冒頭からなんだが、特にレクチャーもなくスッと運転席に乗り込み、スターターを捻ってサッと走り出し、ものの数分で波長が合うクルマなんて、そうザラにあるもんじゃあない。2月下旬、スウェーデンのストックホルムで行なわれたワールドプレミアに立ち会って以降、イメージはしていたものの、今度のV60は出足から仕立てのいい軽快なジャケットを羽織ったときのように身体にフィット、自然と車両の隅々にまで神経が行き渡るかのような一体感に包まれる。経験上、ファーストコンタクトでこうした印象を受けたクルマにまず外れはない。

まずは、そのジャストなボディサイズ。基本的な成り立ちは、90シリーズやXC60と共通のSPA(スケーラブル・プロダクト・アーキテクチャー)をプラットフォームとする第5弾で、実質的な兄弟車となるXC60
とはメカニカルコンポーネンツの多くを共有。一方、ボディタイプでいうとワンクラス上のV90と同様にスマートでスポーティなスタイリングは、それだけでも十分に魅力的に映る。

ただしデイリーユースを前提にすると、そのV90に対して大きなアドバンテージとなるのがボディサイズで、全長は4761mm、全幅は1850mm、全高は1427mmと、全長4.9m超、全幅約1.9mのV90に比べると、実際にステアリングを握っての扱いやすさは数値以上に説得力があるものだ。両車ともにスクエアなフォルムゆえ、幹線道路を走らせている限りサイズを意識することはほぼないが、おそらくV90であれば一瞬躊躇するであろう街中の狭い路地へも臆することなく入っていけるのが今度のV60。ボルボは新型を“プレミアム・ファミリーエステート”と謳っているが、これなら毎日の通勤や買い物などでもストレスフリーで使いこなせるはずだ。

 

ボディの無駄な動きを抑えたフラットライド、リニアで正確なステアリングフィールなどにより、スポーティワゴンとしての一面も合わせ持つ。Cd値は0.29と空力性能も優秀。

ちなみに、従来型のV60と比べて随分と広がったように見えるプロポーションだが、実は全幅の数値はほぼ変わらず。ルーフラインが50mm以上も低められたことによるタテヨコ比で錯覚しがちだが、全長が約120mm伸びただけで、いわばロー&ナロー。エステートならではの存在感を際立たせる。

こうしたジャストフィット感は室内全般にも通じる。パッセンジャー同士の距離感、プライバシーがほどよく保たれたスペース、ダッシュセンターの縦型9インチタッチスクリーンとステアリングスポークにインターフェイスやコネクティビティ、コントロール系の操作を集約したユーザビリティ、どこかホッとするような居心地のよさが身に染みるインテリアなど、すべては「人」を中心に据えたボルボのクルマ作りの精神と世界観がそこにある。試乗車のトリムラインは最上級のインスクリプションで、クールなブラックレザーとメタルのコンビだったが、ボルボが設えると冷たさとは無縁の装いとなるから不思議なものだ。

なお、ラゲッジルームは通常時で529リットル、最大で1441リットルと十分な容量を確保。週末のアクティビティに向けてこれでも足りないなら、ルーフキャリアを付けてお気に入りのギアを積めばいい。今度のV60ならアクセスは容易だ。

 

ステーションワゴン復権の狼煙

試乗車は2リッター4気筒ターボ+スーパーチャージャーのT6にFFベースのオンデマンドAWDを組み合わせた仕様で、新型のパワーユニットにはこのほか電気モーターで後輪を駆動するT6ツインエンジンとT8ツインエンジンというふたつのプラグインハイブリッドを用意。また、ガソリンではT5、ディーゼルではD4/D3というベーシックな2リッター4気筒ターボも選択できる。なお、日本へも本年中には新型が導入される見込みだが、パワーユニットなどの詳細は現時点で未定とのことだ。

試乗車は310psと400Nmの2L 4筒ターボ+スーパーチャージャーを搭載するT6。このほか電気モーターで後輪を駆動する2種のPHVなど、パワーユニットは多岐に渡る。ドライブモードはデフォルトのコンフォートのほか、エコ、ダイナミック、インディビデュアルをセンターコンソールのダイヤルで任意に選べる。モード変化はかなり明確に伝わる。

走らせてみての第一印象は冒頭のとおりで、エンジンしかりシャシーしかり、あらゆる操作に対してリニアでダイレクトなレスポンスがまず心地いい。個体差はあったが、特にステアリングは精度が高くフィードバックも正確に伝わってくるから、こちらがリズムを合わせるというよりも、まさに意図したとおりにクルマが動いてくれ、街中から高速まであらゆる状況下でリラックスして運転できる。

 

切り詰めたオーバーハングや低く長いボンネットやルーフにより、ステーションワゴンならではの伸びやかなスタイリングを実現。スウェーデンのトースランダ工場で生産される。

サスペンションはフロントがダブルウイッシュボーン、リアは樹脂製のリーフスプリングを採用するマルチリンクで、試乗車には電子制御式ダンパーのFOUR-Cを搭載。オプションのエアサスペンション(リア)は未装着だったものの、速域を問わずフロアは終始フラットに保たれ、ドライブモードをダイナミックにしても路面の凹凸などに無闇に身体が揺すられるようなことはない。それでいてコーナーの連続に差し掛かっても、早め早めにステリングを切り増していけば、狙ったラインを外すことなく軽快なステップを踏んで駆けていける。回り込んで先が読めないようなタイトターンでは、若干ノーズが外側へ膨らむ素振りもみせるが、そもそも目くじらを立てて攻め込むようなクルマではないし、マスが大きいぶん、いい意味でもやや鷹揚な動きを示すV90と比べれば、その身のこなしは明らかに機敏でスポーティだ。

310psと400Nmという出力のエンジンも、まるでドライバーの気持ちを汲み取るかのように忠実に応えてくれる。立ち上がりでほんのわずかにアクセルを踏んだ瞬間からトルクはついてくるし、高速道路上でも流れに合わせて緩急自在。8速ATのマナーも上々だから、欲しいときに欲しいだけの加速を引き出すことができる。スタートダッシュなどでやや雑味のあるサウンドが耳に届くのは玉に瑕だが、総じて扱いやすいエンジン特性といえる。

対向車線からはみ出た追い越し車両が目前に迫り、完全衝突が避けられないと判断すると10km/hまで自動減速する機能が付加されるなど、安全性能でもさらに一歩先を行く新しいV60。かつてステーションワゴンの代名詞的存在だったブランドの矜持とも受け取れる、さすが納得の一台に仕立ててきたボルボの底力をみた思いがする。

 

Photo:ボルボ・カー・ジャパン

ル・ボラン2018年8月号

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