四国カルスト公園縦断線(No.079)
四万十川の源流域に天空の大パノラマが広がる。
カルストとは石灰岩などの水に溶けやすい土地が、雨水などによって溶食されてできた地形のことをいう。日本ではまず秋吉台が有名だが、眺めのすばらしさという点では、この四国カルストも負けてはない。
本州のように高い山がなく、最高峰が標高1982mの石鎚山という四国では、ちょっと高いところに登ると、抜群の眺望を得ることができる。四国カルストの東端に位置する天狗高原でも、毎朝、幾重にも折り重なる山並みの向こうから、太平洋の海面をきらめかせて朝日が昇ってくる。天狗高原から太平洋までは直線距離で約30km。その遙か彼方に見える水平線まではいったい何十kmあるのだろうか?
周囲にさえぎるものが一切ないサハラ砂漠のど真ん中でも、地球が丸い関係上、平らな土地で見わたせる距離はせいぜい25kmどまりである。それを考えると、四国カルストからの眺めはすごいものといえるだろう。
大地が水溶性の石灰岩のためカルストには土壌が蓄積されず、樹木は育たない。そのため古くから牧草地として利用されてきたのだが、緑のカーペットを敷き詰めたような高原には、溶け残った白い石灰岩が無数の羊の群れのように頭を突き出している。この地表に露出した石灰岩のことを専門用語では〝羊群岩〞というのだそうだ。
四国カルストでは、この石灰岩の作り出した牧場の風景が稜線に沿って20km以上にわたり続いている。