新型最大のトピックBSGとは何なのか
新型Cクラスの最大の見所はC200が搭載するエンジンにある。M264型の1.5L直列4気筒エンジンはターボチャージャに加えてBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレータ)と組み合わされた新しいパワートレインで、昨年の現行Eクラスクーペの登場と共に姿を現した。メルセデスではSクラスなどに「ISG」と呼ぶ次世代型ガソリンエンジンをすでに投入しているが、ISGとBSGの違いは何か? いずれも、通常の12Vバッテリーとは別に48Vのリチウムイオンバッテリーを搭載し、ウォーターポンプを電動化している。決定的な違いは、ISGにはベルトが存在しないが、BSGはその名の通り、プーリーを介したベルトがエンジン前方に残る。このベルトにより、エアコンのコンプレッサーの他にクランクシャフトを回すスタータージェネレータ(=モーター+充電器)を動かしている。
そもそもダウンサイジングエンジンとは簡単に言えば、エンジンの排気量を小さくし(=使用燃料量の削減)、パワー不足を過給機で補うという論理である。アイドリングの回転数からわずかに上がった時点で最大トルクが発生するセッティングになっているものが少なくない。ただ、エンジンの燃焼効率だけを見ると(特に小排気量の4気筒エンジンは)低回転域よりも中回転域付近のほうが一般的に効率はいい傾向にある。そこで、1.5リッターエンジンを3000〜4000rpmの燃焼効率のいい範囲で最大トルクが出るようにして、3000rpm以下の部分をターボとモーターでアシストするというのがBSGの考え方だ。
寿命がなんとなく見え始めた内燃機が少しでも長く生きられるよう、たとえわずかな燃費向上であったとしても最後まで改良の手を休めないエンジニアの執念というかプライドには頭が下がる。
M264型のBSGを搭載するセダンのC200アバンギャルドを試してみると、発進時や再加速時に後ろからわずかにグッと押されるような感触があるものの、それ以外はいたって普通の動力性能である。これはいままでのクルマから乗り換えても違和感なく使えるよう、あえてそういうセッティングにしているのだろう。エンジン音は小排気量の4気筒なので、高級感のある音色とは言えないけれど、日常の使用範囲でエンジンパワーに不満を覚えることはまったくないはずである。
W205は初期モデルから操縦性や乗り心地がよかったので、その部分に関しては大幅に刷新された印象は薄い。というか、その必要もないだろう。切り始めからきちんと反応しつつも絶対的な安定感を誇るハンドリングや、電子制御ダンパーなしでもしっとりとした上質な乗り心地はこれまで通り提供されている。この素性は、ボディがワゴンやクーペやカブリオレになっても、エンジンが1.6リッター直4ターボ(C180)や2.0Lディーゼルターボ(C220d)や3.0LのV6ツインターボ(C43 4MATIC)になっても大きく変わることはない。
今回試した4種類のエンジンの特徴を端的に言えば、C180カブリオレスポーツはパワーを使い切れる楽しさ、C200アバンギャルドは次世代型内燃機に触れる喜び、C220dステーションワゴン・アバンギャルドはロングドライブに最適な頼もしさ、そしてC43 4MATICは余りあるパワーを攻略する嬉しさ、となるだろうか。
Cクラスはここにきて、現在だけでなく近い未来まで見据えた完璧な布陣(=豊富なボディタイプとパワートレイン)を整えた。これに対抗できる同セグメントの日本車がまったく見当たらないのはなんとも寂しい限りである。