SLと並走しながら南アルプスの源流域へ
一時は枯れ川になってしまった大井川だが、住民運動の高まりもあって、1987年から河川維持放流を開始。最近はカヌーを楽しめる程度にまでは流れを取り戻している。
そんな大井川に寄り添いながら、南アルプスの山懐へと深く分け入っていくのが川根路である。
道の両側には緑の茶畑が点在し、それが太陽の光をいっぱいに浴びてきらきら輝いている。胸のすくような走りや景色を楽しめるわけではないが、交通量は少なく、淡々と走るにはじつに心地いい道だ。
もうひとつ、この川根路に彩りを添えているのが、毎日1-3往復走る大井川鐵道のSLである。時刻表を見ると、SLが牽引する急行は金谷駅から千頭駅までの40kmを1時間15分ほどで走る。平均時速は約30km/h。始発駅で出発を見送り、そのあとを追走すれば何度もSLの姿を目にできる。
千頭駅をすぎると、大井川鐵道はアプト式ディーゼル機関車の走る支線になり、川根路もまた渓谷にへばりつくような険しい山道へと変わっていく。
奥大井と呼ばれる行き止まりの山間部に人が住み着きはじめたのは江戸時代のはじめ。駿府城を築くため、大井川を利用した木材の伐り出しが盛んになったのがきっかけである。点在する小さな集落を抜け、ダム湖の脇を走り続けると、やがて雪を抱いた南アルプスの高峰群が目の前に見えてくる。