走り応えあふれる峠越えのワインディング
福島県と山形県の境に連なる吾妻連峰の険しい山並み。その西寄りの稜線を越えていくのが西吾妻スカイバレーの白布峠である。この峠道の南側、桧原湖の水底には会津米沢街道の宿場町が静かに眠っている。
標高1410mの白布峠を越え、裏磐梯高原の桧原湖と白布温泉を結ぶ県道2号は西吾妻スカイバレーとも呼ばれている。
日本百名山のひとつ、標高2035mの西吾妻山の少し西寄りの稜線を越えていく道で、もともとは県道として昭和36年(1961年)に開通。その後、山形県道路公社によって舗装化工事が行なわれ、平成15年(2003年)までは西吾妻有料道路として運営されてきた。西吾妻スカイバレーというのは有料道路時代の愛称である。
磐梯エリア周辺では、吾妻連峰の東側を南北に走る磐梯吾妻スカイラインと双璧をなす本格的な山岳ワインディングロードではあるが、この2本の道路の雰囲気は大きく異なる。スカイラインが中央分水嶺の稜線に沿うようにゆったりとアップダウンを繰り返してゆくのに対して、スカイバレーは福島/山形県境の吾妻連峰を一気に駆け上り、駆け下っていく。典型的な峠越えの道なのだ。
西吾妻スカイバレーの南側起点、桧原湖の最奥部に位置する早稲沢から走りはじめると、しばらくはなだらかな上り坂が続く。ただし起点から3kmほど走ったところ、標高1000mを越えたあたりから勾配が急になり、そこからはヘアピンカーブの連続となる。
深い森のなか、タイトターンを20回ほど繰り返すと、ようやく稜線上に出て視界は大きく開ける。そこが東とう鉢ばち山やま七曲りの展望台。ここで裏磐梯方向を振り返ると、眼下には桧原湖、その向こうには爆裂火口を大きく広げる磐梯山という大パノラマが展開する。
白布峠の前後はしばらく稜線伝いをゆくため、東西南北どちらも眺めがいい。天気が良ければ飯いい豊で連峰や朝日連峰の雄大な山並みも遠望することができる。
白布峠の北側は最上川源流の深い谷を眼下にしながら一気に下っていく。スカイバレー(天空の渓谷)の名前がぴったりのダイナミックなワインディングである。左右の崖からほとばしる大小の滝を眺めながら、さらに進むと、やがて奥羽三高湯に数えられる秘湯、白布温泉にたどり着く。