清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safty Test)
Number74(SEASON.6):新プラットフォームを採用したプレミアムSUVの実力はいかに!
ボルボXC90 T6 AWDインスクリプション vs アウディQ7 2.0 TFSIクワトロ/Test02:ウェット旋回ブレーキテスト
●テストの「方法」と「狙い」
ドライ路面からウェット路面に100km/h(±2%)で進入、半径40Rのカーブをフルブレーキングしながら曲がる。路面はハイドロプレーニングよりもウェットグリップが問われる水深5mmに設定。ABSやタイヤを含めたクルマの総合的なブレーキ性能と、シャシーの旋回性能(ラインが外に膨らむクルマは危険)をみる。
ボルボXC90 T6 AWD Inscription vs アウディQ7 2.0 TFSI quattro(ウェット旋回ブレーキ編)
タイヤコンデション
AUDI Q7 2.0 TFSI QUATTRO

ピレリがSUV用に開発したグリーンタイヤのスコーピオン・ヴェルデ。オンとオフロードを走ることができるだけでなく、転がり抵抗にも配慮している。ウェット性能が非常に優れていた。
VOLVO XC90 T6 AWD INSCRIPTION

同じくミシュランがSUV用に開発したラティチュード・スポーツ3は、日本自動車タイヤ協会が規定するラベリングでは、低燃費タイヤとして認定されている。テストでは、ウェット性能が気になった。
Q7はSUVのブレーキの常識を覆す好成績を叩き出した

VOLVO XC90 T6 AWD INSCRIPTION
●制動距離:50.5m(★★★☆)
DSTはやってみないとわからないと、20年もの間感じ続けている。電子制御の粗さやタイヤのウェット性能は、実際に濡れた路面でテストしないとわからない。だから、このウェット旋回ブレーキは、鬼も泣くテストなのだ。XC90はタイヤの摩耗が残り5mm台だったが、ウェットグリップ力が少し低下していた。その影響もありABSが比較的早期に効き、大きな制動力が得られなかった。2回目はステアリングをやや先行させて操作しブレーキを踏む。ABSのコンピュータはウェットよりも滑りやすい路面だと勘違いし、リアの制動力を低下させた。安定性は問題ないが止まりにくく曲がりにくい状況となってしまった。
AUDI Q7 2.0 TFSI QUATTRO
●制動距離:36.5m(★★★★☆)
Q7で驚いたのは、スピードメーターの誤差がほとんどなかったこと。タイヤサイズが影響していたかもしれないが、その精度はかなりのものだ。肝心のウェット旋回ブレーキではタイヤの溝がXC90よりも1mm程度多く残っており、タイヤのコンパウンド的にも安心できるパフォーマンスだった。ブレーキの効きもABSの制御も非常に正確で、濡れた路面に対し最適な制動力を発揮。2回目のロバストテストでもABSはごまかされないで安定したデータが得られた。フィーリング的にも安心してウェットの旋回路で大きな制動力を発揮した。「大きなSUVは重いから曲がらないし、止まりにくい」という常識を覆したといえる。