世界は日本の輸入車市場の“質”に注目している
19インチのランフラットタイヤは路面状況によって少し硬さを感じることもあるが、スポーツセダンとして3シリーズを求める向きならば許容できる範囲だろう。サスペンションのバネレートは先代に比べるとかなり締め上げているとのことだが、ボディ剛性も上がっているので動きはスムーズ。“コンフォート“から”スポーツ”に切り替えて可変ダンパーの減衰力が上がると、微少な入力域でもダンピングが効くとともに伸び側も抑えが効いてよりフラットライドでスポーティな乗り味になるが、不快になるほどではない。これもまた優秀なボディの恩恵だろう。
新型3シリーズの剛性関係でもっともドライビングプレジャーに効果をもたらしているのがフロントサスペンションの取り付け部がアルミダイキャストになったこと。従来比1.5倍の剛性を得たことで、ステアリングをわずかに動かすぐらいから極めて正確に反応し、どこまでもリニアな感覚で曲がっていく。そのダイレクト感たるや凄まじいレベルで、これもまた究極のスポーツセダンの呼び名に相応しい。ゆっくり走っているときでも、正確無比なステアリングを操作するだけで幸せな気分になる。
320iに乗り換えてみると、まずはたった1インチでも乗り心地にはずいぶんと違いがあることを認識する。こちらもランフラットではあるがタイヤのゴツゴツ感が減ってどの場面でも快適に感じる。スポーツセダンとしての硬質な雰囲気と不快感のない好バランスな乗り味なのだ。それでいて正確なハンドリングも健在。限界まで攻めれば19インチのほうがハイグリップなりの良さが出てくるだろうが、ワインディングレベルなら18インチでもなんら不満はない。320iが1560kg、330iが1630kgと車両重量に小さくない差があることも320iの印象を押し上げているようだ。
肝心のエンジンだが、320iでも最大トルクは300Nmあるので日常的な走りでのパフォーマンスは十分以上。最大トルク発生値は330iが1550-4400rpmなのに対して320iは1350-4000rpmとより低回転化されているので、普通に走らせているとその差は思っている以上に小さいのだ。ただし、アクセルを踏みつけていったときのパワー感には明確な差がある。ともに5000rpmで発する最高出力は330iが258ps、320iが184psなのでやはり速度のノリが違う。加えて330iはサウンドに迫力があるが、320iはそこまでスポーティではなくライトな感触。同じ型式のエンジンながらチューニングでの違いは小さくないのだった。
日本のファンの多くが3シリーズに究極のスポーツセダンを望んでいるが、330iはそれに真っ正面から応えてくれている。日常域で不快になるかならないかのギリギリまで攻め込んだのはあっぱれだ。320iは少しマイルドになっているものの、デイリーユース重視ならばかえってバランスが良く、ライバルに対しては圧倒的にスポーティ。思っている以上に買い得感が高い。
いずれにせよどちらも甲乙付けがたい魅力を放っており選択は悩ましい。日本のBMW愛をますます深めることになりそうだ。