まさにアウディスポーツの真骨頂
試乗会はフランクフルト空港を起点にアウトバーン5号線を50kmほど南下、ハイデルベルグ東方の丘陵地帯で行われた。この5号線は片側4車線の直線路が24kmも続き、戦前には自動車による世界記録を達成するのに格好の場所であった。かつてアウトウニオンは1938年1月28日にタイプRで挑戦したが、残念ながらドライバーのベルント・ローゼマイヤーは429km/hで横風を受け横転、事故死してしまった。ちなみに、現在はレストエリアとなって記念碑が立ち、いまなお多くの人が伝説のドライバーを偲んで立ち寄っている。
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48Vマイルドハイブリッドを搭載する4L V8ツインターボ。組み合わされるトランスミッションは8速ATで0→100km/h加速は3.6秒!
さて、現代のRS7は、その速度無制限のセクションを300km/h近い速度でもきわめて安定した姿勢で突き進む。もちろん、この速度になるとオプションのエアサスが車高を10mm落とし、高速レーンチェンジもクワトロ+リアアクスルステアのおかげで躊躇なくこなせる。制動性能も盤石のひと言で、オプションのセラミックブレーキは踏力に応じて2トン近い4ドアクーペの車速を自在にコントロールしてみせる。
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スポーツステアリングはグリップがアルカンターラとなる。
一方、一般道では48Vマイルドハイブリッドシステムのおかげで、快適かつ経済的なドライブが楽しめる。55km/hから160km/hの間で条件が整えばエンジンは停止、コースティング走行に入る。さらに負荷が一定以下になるとリンダーオンディマンド(気筒休止システム)で2、3、5、8番シリンダーのバルブが閉じて4気筒走行を開始。さらに赤信号などで22km/h以下になるとエンジンは休止する。これらの作動はごく自然に行われるので、ドライバーはメーター内の表示を見なければまず気付かないはずだ。結果として、日常のドライブでは最大で100kmあたり0.8Lのガソリンを節約することができる。
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専用のRSモニターディスプレイ。
もちろん、ワインディングに入れば、最大で80%のトルクを後輪に送るクワトロにより、全長5mオーバーのサイズを忘れるほど軽快なステップを踏んでコーナーを駆けぬけていくこの万能さ。まさにアウディスポーツの真骨頂、ここにありである。
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上質なレザーに赤いステッチが施されたスポーツシート。後席の居住性も上々で、アウトバーンの超高速移動も楽にこなせるはずだ。