国内試乗

【国内試乗】「ポルシェ・カイエンクーペ」ついにポルシェにも登場したクーペボディ

ポルシェSUVラインナップの新たなスポーティバージョン、カイエンクーペが日本に上陸した。特徴的なルーフラインを描くカイエンのクーペ版かと思いきや、そこにはポルシェの最新テクノロジーをはじめ、様々なハイライトも用意されていた。

ポルシェ初となるSUVクーペ

2月の終わりの週末、都内でクルマを走らせていたら、短い時間に何台ものポルシェ・カイエンクーペとすれ違って驚いた。聞けば、この週にちょうど納車が始まったところというわけで、オーダーを入れて待ち侘びていた人たちが、手に入れて早速ドライブに出かけていたのだろう。やはりクーペには、そんな風に自分の、そして周囲の気分をアゲる華やいだ存在であってほしいものだ。

約20mm下げられたルーフエッジに呼応して、カイエンよりも低いフロントウインドーとAピラーを採用するカイエンクーペ。さらに再設計されたリアドアとフェンダーによってリアトレッドが18mmワイド化され、全体的に力強い印象を醸し出す。

今やひとつのカテゴリーとして確立されたSUVクーペの市場だが、ポルシェの参入は遅かった。実際のところアイディアはかなり早い段階からあったそうだが、やるならばモデルライフ途中での追加ではなく、当初よりその設定を前提に開発したかったというのが、このタイミングになった理由だという。つまり3世代目となる現行カイエンは、当初よりクーペと並行して開発されていたのである。

試乗車は最高出力340ps/最大トルク450Nmを発揮する3L V6エンジン搭載のカイエンクーペ。これを筆頭に5モデルをラインナップする。

実際、カイエンクーペはカイエンのテールゲートを斜めに切り落としただけの存在ではない。たとえば、そのフロントウインドーはわずか1度ではあるが傾斜角が強められて、20mm下げられたルーフに繋げられている。

室内の仕立てや装備は基本的にカイエンに準じる。その形状から後席のヘッドルームが心配になるが、ヒップポイントをカイエンよりも30mm下げたことでそれを解決。後席は2人掛けが標準だが、無償で3人掛けも選択可能。2種類のルーフコンセプト(標準装備の固定式ガラスルーフと、オプションのカーボンルーフ)が用意される。

もちろんテールゲートも傾斜が強められているが、実はよく見れば、ガラスルーフを標準とすることで横から見た際のルーフラインを、あたかも911のそれのように薄く見せ、さらにルーフスポイラーを標準装備とすることで、実際以上に傾斜感をアピールするなど、その造形は細かく工夫されている。しかも、リアデッキを低く抑えることができたのは、ポルシェアクティブエアロダイナミクスに含まれる、90km/h以上で展開するアダプティブリアスポイラーの採用により高速域でのリフトが抑えられたおかげというわけで、このフォルムはまさにデザインとエンジニアリングの巧みな融合によって描き出されたのだ。

さらに言えば、スタイリングに違和感がないのは、ポルシェのアイデンティティであるフロントデザインのおかげでもあるだろう。この顔にクーペフォルムが似合わないわけがない。むしろこちらこそがカイエン本来の姿かもしれない、なんて思わせるほどである。

一方、インテリアはほぼカイエンそのまま。ただし、低くなったルーフに合わせて着座位置を前席で約10mm、後席で約30mm下げている。おかげで後席は前後スライドがなくなり2座が標準となるが、オプションで3人掛けシートも選択できる。今回の試乗車はベースグレードであるカイエンクーペの、定員5名となるこの仕様だった。

カイエンと差別化する多彩なクーペ専用装備

ドアを開けてまず運転席に乗り込むと、確かに言われてみればドライビングポジション、より低くしっくりと来る感じがする。では後席はといえば、3人掛けシートの場合でも大人2名には十分なスペースがあるし、短時間なら中央席に座るのも十分許容できそうと感じた。しかも、標準装備となるパノラマガラスルーフのおかげで視界も開けているから、閉塞感を抱くこともないはずだ。なお念のため、直射日光を防ぐローラーブラインドも標準装備である。

走りの印象は、率直に言って慣れ親しんだカイエンとの違い、ほとんどない。前述の通り着座位置が下がっていることから、クルマとの一体感が高まっている感は確実にあるものの、優れた乗り心地にしても高い快適性にしても、明らかな差はないと言っていい。

実際にはリアトレッドが拡大されており、またリアゲートの開口部は大きく、その複雑なリンク機構のおかげで重心から遠い位置で重さが増しているといった事情で、標準装備となるPASMのセッティング変更、アンチロールバー径の拡大などが行われているというのが、昨春に参加した国際試乗会で聞いた開発者の弁である。要するに、それは違いをもたらすためではなく、違わないようにするためだということだろう。

エンジンラインナップもカイエンと共通。試乗車は最高出力340ps、最大トルク450NmのV型6気筒3Lターボエンジンを搭載する。そのパワー、トルクに不満はなく、日常使いにはもちろんクーペらしく活発に走らせようという場面でも、十分楽しませてくれる。しかも試乗車はオプションのスポーツエグゾーストシステム付きだったから、小気味良いサウンドも満喫できた。

ラゲッジルーム容量は カイエンの770~1710Lに対し、カイエンクーペは625~1540Lと若干小さくなる程度。

近頃のポルシェは何でもかんでもオプションということがなくなり、このカイエンクーペも標準で車線変更時に後方から接近する車両の存在を警告するレーンチェンジアシストやアダプティブクルーズコントロール、サラウンドビュー付きパークアシストにLEDヘッドライト等々は最初から標準。スポーツクロノパッケージも備わるなら、ほとんど素の状態でも、まずまず満足できそうだ。

クーペモデルでは、ポルシェアクティブエアロダイナミクスのパーツとして、リアの上部にある固定式ルーフスポイラーと、90km/hを超えるとリアガラス 下から135mm立ち上がる新しいアクティブリアスポイラーが組み合わされている。

一方でクーペには専用オプションとしてライトウェイトスポーツパッケージが設定されている。これはカーボンルーフ、22インチGTデザインホイール、スポーツデザインパッケージに、ブラックレザーと千鳥格子のファブリックを組み合わせたシート、アルカンターラのトリムなどをセットにしたもので、とりわけ20kg以上も軽くなるというルーフは当然走りに大きく影響する。後席は2名掛けのみとなるから、クーペらしく走りや見た目に一層の重きを置く人向けの装備となるが、筆者はこれ、ぜひ選びたい。
ベースグレード同士の比較だと、カイエンとの価格差は100万円を少し超えるが、PASMやスポーツクロノパッケージ、パノラマガラスルーフなどが追加されていることを加味すれば、その差はもっと小さいと考えていい。実際、ターボS Eハイブリッド同士では価格差は50万円ほどとなる。
この価格差に現在のトレンド、スタイリッシュな存在感、犠牲となっていない走りや快適性などを考えれば、今後はカイエンの販売の少なくない一定数がクーペになるのは間違いないだろう。この華やかな姿と街ですれ違う機会、もっともっと多くなるに違いない。

【Specification】ポルシェ・カイエンクーペ
■車両本体価格(税込)=11,356,481円
■全長×全幅×全高=4931×1983×1676mm
■ホイールベース=2895mm
■トレッド=前1674、後1653mm
■車両重量=2030kg
■乗車定員=4/5名
■エンジン種類=V6DOHC24V+ターボ
■内径×行径=84.5×89.0mm
■総排気量=2995cc
■最高出力=340ps(250kw)/5300-6400rpm
■最大トルク=450Nm(45.9kg-m)/1340-5300rpm
■燃料タンク容量=75L(プレミアム)
■トランスミッショッン形式=8速AT
■サスペンション形式=前マルチリンク/コイル、後マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前275/45ZR20(9J)、後305/40ZR20(10.5J)

お問い合わせ
ポルシェジャパン 0120-846-911

フォト=郡 大二郎/D.Kori ルボラン2020年5月号より転載
島下泰久

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