試乗記

【比較試乗】「フォルクスワーゲン・Tクロス vs ジープ・レネゲード vs シトロエン・C3エアクロスSUV」コンパクトSUVならこんな楽しさもある!

その昔、SUVといえば4WDでヘビーデューティなイメージ=大きいクルマだったが、いまや、その人気はコンパクトクラスにも派生し、次々と個性的なモデルが登場している。本格的なオフロード性能はなくとも、その代わりにコンパクトならではの魅力が満載ですから!

頼もしいし、楽しいドイツの最新ニューカマー=Tクロス

あらためて、クルマっていいなあと思う今日この頃である。だって、いま電車やバスのなかでカラせきひとつしようものなら、一斉にガン見されますから。その点、クルマは自分だけの空間を占有して、どこへでも走って行ける。なかでもSUVは、より自由に使えて、より自由に走れる。さらにそのなかでもいちばんお手頃で現実的なのがコンパクトSUVである。

VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st/広々とした居住性に加えて、リアシートも最大14cm前後にスライドするなどレイアウトを簡単に変化させることも可能。1L3気筒TSIエンジンに7速DSGを組み合わせ、軽快かつ俊敏な走りを実現。上級モデルに採用される先進安全装備も数多く採用する。

Tクロスはこのクラスの最新ニューカマーだ。ポロ級のSUV。ティグアンと違って4WDはない。かつてクロスポロというクルマがあったが、今度はすっかり別モデルとして独立した。それだけSUVの地位が上がったということだろう。国内発売は2020年1月だが発表はその2カ月前。ディーラーにまだクルマはなかったのに、その間1800台もの受注があったという。待たれていたクルマなのだ。

VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st

乗るとたしかにポロとは別物である。開閉時のドアの重みからしてプレミアム感が高い。プレーンなところが魅力のポロに対して、けっこうな高級感も備えるのがTクロスである。

VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st

パワートレインはポロと同じ999cc3気筒ターボ+7段DSG。100kg以上重くなった車重(1270kg)に対処して、出力とトルクは1-2割増強されている。街中ではターボがグイッと力強くスピードに乗せてくれる。一方、4000rpm以上回すと、3気筒らしい軽やかなビートが小気味よく、気持ちいい。

VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st

フラットな舗装路での乗り心地は実になめらかだが、荒れた路面だと多少の突き上げもくる。しかしサスペンションのフトコロは深く、大入力になればなるほど強い。デコボコやうねりの多いワインディングロードをハイペースで走ると、頼もしいし、楽しい。高速道路でのスタビリティも高い。

VOLKSWAGEN T-CROSS TSI 1st

ひとつだけ気になったのは、テールゲートだ。閉めるとき、160cmくらいの人だと内側の持ち手に手が届かない。それを除くと、すべてに偏差値の高いコンパクトSUVである。しかも試乗車の“1st”は299万円。この価格でこのクォリティのSUVを提供できるのは、さすがフォルクスワーゲンである。ポロを買いに来たお客さんをだいぶ奪いそうだ。

フォト=柳田由人/Y.Yanagida ルボラン2020年5月号より転載

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