2014年4月に発売されたBMW i3は、量産車として初めてCFRPを基本骨格に採用するなど、徹底的な軽量化をはじめとした革新的な手法を様々採用したEV。都市型のモビリティとして、必要十分な性能を備えたモデルである。
電欠が心配な方にもオススメのEV
全長4mのコンパクトボディに20インチのホイールを履くクルマなんて他にあるだろうか。おかげで大型ロボット犬の子犬みたいな印象を与えるルックスを始めとして、i3は登場から7年経つ今もなお新鮮な驚きに溢れたクルマだ。

BMW i3 RANGE EXTENDER/1回の充電走行可能距離はWLTCモードで360km、さらに発電用の直列2気筒エンジンを搭載したレンジエクステンダー装備車では最大で466kmを達成。インテリアではラウンジさながらの快適性を追求している。リサイクル素材を採用した機能的なディテールも納得のクオリティだ。
運転しても、楽しい。速くて静かなのはEVの常識だが、フットブレーキを踏まなくても停車ができる日産e-POWERが言うところの“ワンペダル”ドライブを最初に導入したのもi3だった。
とくにお薦めしたいのは、日本だと9割の人が選ぶというレンジエクステンダーだ。バッテリーがなくなっても、発電専用エンジンが起こした電気でさらに100数十km走り続けることができる。BMWスクーター用の647cc2気筒が後ろで回りっぱなしになると、静かとはとてもいえないし、そのときは当然、排ガスを出すからゼロエミッションカーではない。しかし現実問題として9Lの化石燃料という“保険”が付いていると思うと心強いし、電欠を防ぐためのちょっと不条理なこの解決法そのものがおもしろいと思う。

BMW i3 RANGE EXTENDER
これだけEVが増えてきた今も、基本、EVはEVが好きな人、EVに興味がある人が乗るクルマだと思う。逆にいちばん乗っちゃいけない“心配性の人”にも薦められるのがi3レンジエクステンダーである。
下野康史/Y.Kabata
BMWが考え抜いたEVのカタチ
ようやく各社からEVが発売されるようになったけれど、“健全”なEVはテスラとポルシェ・タイカンとBMWのi3くらいしか見当たらないと思っている。“健全”とは、シャシーからのすべてがEV専用として設計・開発されたモデル、という意味。EVには大きなパワートレインがないのでパッケージの自由度はかなり高い。このメリットを活かさずに、既存のモデルにバッテリーとモーターを組み込むやり方は、なんとももったいないというか志が低いように感じてしまうのである。

BMW i3 RANGE EXTENDER
i3はパッケージの自由度を最大限に活用して、極端に短いボンネットと前後のオーバーハング、観音開きのドアの採用など、EVでないとなかなか難しいスタイリングを実現している。内装にはリサイクル素材を積極的に使っているし、同じコクピットレイアウトに固執していたBMWが、i3にはまったく新しい造形を与えている。白紙から「EVとはどうあるべきか」を真剣に論議して辿り着いた痕跡が随所に窺える。
日本仕様は乗り心地が硬めだ。車高を下げるためにスポーツサスが組み込まれているからだが、「乗り心地が悪い」だけでこのクルマを全否定するのはいかがなものかと思う。聡明で礼儀正しく優しい男子を「でも背が低いから」で一蹴してしまうようなものだ。
渡辺慎太郎/S.Watanabe
【Specification】i3 RANGE EXTENDER
■全長×全幅×全高=4020×1775×1550mm
■ホイールベース=2570mm
■車両重量=1440kg
■エンジン種類/排気量=直2DOHC8V/647cc
■最高出力=38ps(28kW)/5000rpm
■最大トルク=56Nm(5.7kg-m)/4500rpm
■モーター最高出力=170ps(125kW)/5200rpm
■最大トルク=250Nm(25.5kg-m)/100-4800rpm
■サスペンション(F:R)=ストラット:マルチリンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=155/70R19:175/60R19
■車両本体価格(税込)=6,080,000円
お問い合わせ
BMWジャパン 0120-269-437