メルセデス・ベンツEクラスも新型が登場しているのは既報の通り。奇しくもドイツを代表するプレミアム・アッパーミドルセダンが同じタイミングで新型を導入しているとなれば、その仕上がりの違いを比べてみたくなるというもの。そこで昨年フルモデルチェ ンジを果たしたアウディA6も交えて、それぞれのキャラクターをあらためて比較検証してみた。
時を同じくして新型となった永遠のライバル
Eクラスと5シリーズ。一目瞭然、ガチガチのライバル関係となる両車が、日本市場ではこの9月に相次いでマイナーチェンジが施されることとなった。
そもそもモデルチェンジタイミング自体が1年未満と近接しているとはいえ、同月に揃って更新という事態は記憶にない。これが生産も物流も滞らせたコロナ禍がもたらした偶然か、あるいはいずれかが仕掛けた必然かは知る由もないが、ユーザー側からしてみれば、ことさらそのテイストを比べたくもなるだろう。そこでこの項では、昨年フルモデルチェンジを受けたA6も相まみえて、売れ筋の4気筒グレードでそれぞれの仕上がりをチェックしてみた。
新しい5シリーズは先行して3シリーズなどに搭載されているAI音声会話コマンドシステム 「インテリジェントパーソナルアシスタント」 を採用したほか、Appleとの協力関係からiPhoneとの親和性が強化され、ナビの目的地設定が地図アプリとリンクする機能や、NFC認証を利用して解施錠やイグニッションのオンオフを可能にするデジタルキーなど、ユーザビリティを広げる機能が標準装備となっている。
また、ADASのアップデートによりハンズオフ機能付きの渋滞運転支援システムが標準装備されるなど、デジタルテクノロジー系の進化や強化が著しい。一方で走りの進化については特に触れられていない。試乗グレードは530iラグジュアリー。B48系2L 4気筒直噴ターボは252ps/350Nmを発揮する。ラグジュアリーゆえサスはノーマル、タイヤも18インチと見るからに穏やかなキャラクターだ。
改められた内外装の雰囲気からはスポーティさが高められた印象を受けるも、むしろ特筆すべきは常速域での乗り心地の良さだった。橋脚ジョイント段差や轍が入り交じる首都高速の路面にも直進性は乱されず、硬質なインパクトや横揺れの類はしっかり封じ込まれている。路面の激しい凹凸や路肩の段差などでも不快なバタつきや突き上げなどはほとんど感じられない。
良路でのしなやかな滑走感は、45偏平の18インチとはいえ、ケース剛性の高いランフラットタイヤを履いているとは思えないほどだ。こればかりは経験値の差なのか、メルセデスやレクサスのようなランフラット使用歴の浅いブランドに対して、乗り心地面では今やBMWは優位に立っている。そう言っても過言ではないだろう。
しかも新しい5シリーズは乗り心地だけでなく、ハンドリングも確実に洗練されている。操舵初期の動きのリニアさ、切り増しでの追従性などハンドリングは努めてニュートラルな一方で、中~大舵角での旋回や切り返し時などの応答性にはBMWらしいビビッドさがきちんと感じられる。BMWの試乗といえばとかくMスポーツという理由もあるとはいえ、標準的な5シリーズにこれほどの性格の丸さや動きの上質さを感じようとは思いもよらなかった、というのが正直なところだ。