Garage Life

英語の俗語”DogHouse”そのままの自動車趣味人は「ジネッタ」「ヒルマン・インプ」乗り!【ガレージライフ】

「ジネッタ」が暮らす夢のガレージは窓もドアもなし!? 1mの低い間口はジネッタ専用の証

ジネッタ G12×2+不動のヒルマン・インプ+軽トラックというラインナップで、潔い自動車趣味生活を楽しんでいるMさんは、自らの手でコツコツ仕上げたガレージにもシンプルであることを求めた。独自の割りきりによって完成した空間には、驚くべきことにドアやガラス窓が存在していないのだ。

「取材してもらえるということで、先日ガレージの表側に”DogHouse”って書いたんですよ。急いで施工しようと思ったこともあり、下書きの段階でHouse の”u”が抜けてて、この春から中学生になった息子たちにスペルが間違ってるよって指摘されたんです。あやうく、ドッグホセになるところでした笑」

DogHouseという文字と、2台のジネッタ G12を見て、英国の由緒正しいクラブのことをイメージした方が多いと思う。英語のスラングとしてのDogHouseは、自動車趣味に没頭しすぎて妻に愛想を尽かされ、家から追い出されて犬小屋しか寝る場所がなくなった夫のことを意味している。役立たずの亭主、居場所のない者、などのドキッとするような意味もあるようだ。

ジム・クラークやスターリング・モスも在籍していたという「INTERNATIONAL DOGHOUSE CLUB」にあやかり、自らの手で仕上げたガレージに由緒あるクラブ名を付けたMさんは、相当な自動車趣味人である。言葉が過ぎるかもしれないが、”こじらせ系”の英国車オーナーだといってもいいだろう。

【写真15枚】英国車、夢のガレージライフを見る! 

17年所有するジネッタG12とともに
撮影当日は、奥さんも一緒に出迎えてくれたので、夫婦仲はよさそうに感じた。しかしMさんによると、ここ最近はルイス・バラガンの設計物件をイメージして建てた母屋ではなく、ガレージ内のラウンジにて寝泊まりしているらしい。DogHouseというネーミングは、あながち大袈裟とは言いきれないのかもしれない。Mさんが寝起きするラウンジの真横に置かれたG12は、独身時代から愛用してきたものだ。すでに17年ほど所有しているという。

エンジン・レスのほうは友人のクルマで、組み立て作業をMさんが手伝っている一台。「6年ぐらい前に、この地に来ました。それまでは流山で一軒家を借り、G12、G15、キャトルをカーポートで、ビートとNA ロードスターを草の上で保管していました。独身寮でも、流山のカーポートでもG12を整備していましたが、やはり、本格的なガレージが必要だなと思うようになり、土地を探して、現在の場所に引っ越してきたわけです」

まず母屋を建て、その1年後ぐらいにガレージを設けたそうだが、実はMさん、建物の設計業務に携わっている会社員。図面を自らの手で描くことにした。そして、ロードスターを介して知り合った友人が木材問屋だったので、彼に図面を渡し、必要となる木材をチョイスしてもらうことにしたという。

建築時にはヒヤヒヤエピソードも!
かなりの手弁当ぶりを発揮しながらガレージが構築されていったわけだが、プレカットして持って来てもらった木材を職人が組み上げる際に、手弁当および自動車趣味人のガレージだからこそ発生した面白エピソードがあったらしい。何かというと、重機が入れない場所での作業だったため、7m×90cmの梁を架ける際にM家にあった単管パイプとエンジンを吊り上げるためのチェーンブロックを活用したのである。

見ているほうが心配になる危うい作業だったので、設計のプロであるMさんは非常にヒヤヒヤした……とのこと。思いがけないトラブルはあったものの、わずか1日の作業でガレージは姿を現した。骨格だけを職人に造ってもらい、その他の部分はMさんが仕上げているが、G12の車高に合わせ、入口の高さを1mに設定した表側の板張りなどはその好例である。

現在でこそ、背の高いクルマを収納する際に開く可変部分があるが、当初は完全な固定式だった。その他、窓ガラスを多用していない点もトピックで、ガレージの後ろ側はフルオープン状態になっている。それらは、自作したからこそ実現できたディテールだ。

ショップの力を借りず自身でメンテナンス!
この冬に備え、早くもラウンジ内に設置された薪ストーブもなんとMさんの力作。設計だけでなく、さまざまな分野において施工まで出来る点が、Mさんが展開しているガレージライフの強みだ。そのアドバンテージポイントは、うらやましいことに愛車を整備する際にも余すところなく発揮されており、既述したように15~16年前から、G12をはじめとする愛車たちをショップの力を頼ることなくフルメンテしてきた。

「いまはもう閉店してしまった都内の整備工場でクルマのことをいろいろ学びました。そのおかげで、愛車をメンテナンスするだけでなく、友人が所有しているG12の組み立て作業をサポートできるまでの知識と技術が身に付きました。

フロントカウルのエアアウトレットを新設するといったボディのモディファイも自分でやれますし、ドレンまわしやコッタ抜きのような工具まで自作してしまいましたから、通常の整備に関してはもうショップを頼らなくて大丈夫でしょうね。

以前所有していたG15も不動車を直したものでしたし、エンジンのオーバーホールとかもガレージDogHouseにて普通にできちゃいますよ」

ファミリーカーを所有していないMさんは、家族4人で移動できるクルマの最有力候補としてヒルマン・インプを見つけてきた。しかし、M家に辿り着いた瞬間にエンジンが力尽き、現在は不動車となっている。ヒルマン・インプという新しいオモチャを迎えたことにより、Mさんが母屋で寝る日がさらに遠のいたことは間違いない。

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