3車3様の個性がパフォーマンスに現れる
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840iグランクーペ・エクスクルーシブMスポーツ
3台の中ではもっとも非力な840iグランクーペ・エクスクルーシブMスポーツは、それでも340ps/500Nmを発生。さらに今回はこのクルマだけがFRだったので、前後重量配分は前軸重/後軸重とも980kgで、BMWの大好きな前後50:50を実現していた。後輪だけで受け止めるにはむしろこれくらいのパワーのほうが扱いやすく現実的で、前輪が駆動力を持たないがゆえのスッキリとしたステアリングの手応えと、ターインでのスムーズな所作はFRらしさを存分に満喫できる。
3025mmのホイールベースは2ドアのクーペやカブリオレに対して+200mm伸びており、そのぶんグランクーペの後席はレッグルームに余裕があって、大人ふたりがゆったり着座することができる。フツーのセダンに飽き足らない方がスタイリング優先でこのクルマを選んだとしても、パッケージという機能性もきちんと確立されているので不満を抱くことはないはずだ。
BMW M社が開発するモデルは現在、”Mパフォーマンスモデル”と”Mハイ・パフォーマンスモデル”と呼ぶふたつのカテゴリーに区分されている。簡単にいえば、後者がM3やM5などサーキット走行でも耐え得る性能と機能を備えたいわゆる”M”で、前者はそれよりもオンロード性能に寄せたセッティングとなる。
さり気なく華やかなイルミネーテッドグリル
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M850i xDriveカブリオレ
M850i xDriveカブリオレはM8と同じ4.4LのV8ツインターボを搭載するものの、750Nmの最大トルクはM8と同じながら最高出力は530psで、M8よりも抑えられている。
xDriveは4WDといっても前後の駆動力配分を随時可変し、基本的には後輪寄りに配分されるので、FRの操縦性を維持したいという作り手側の思惑が透けて見える。そうはいっても750Nmという強力なトルクを備えているので、840iと比べれば前輪に駆動力がかかっていることは常に意識させられる。ハンドリングはリアに標準装備されるアクティブMディファレンシャルのセッティングが絶妙で、後輪左右の駆動力を状況に応じて随時最適化するため、とにかくきわめてスムーズによく曲がる。ハンドリングとパワートレインの観点だけで見れば、今回の3台の中ではもっともバランスがよかったと感じた。
目元にアクセントが加わり表情はさらに精悍に
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M8コンペティション・クーペ
そしてM8コンペティション・クーペである。正直なところ、自分ごときの運転スキルではそのポテンシャルを余すことなく引き出すことは不可能で持て余してしまう。さまざまな電子制御デバイスがつたない運転を積極的にサポートしてくれるので気持ちよく走れるけれど、運転しているのか運転してもらっているのかよく分からなくなってしまう場面もあるほどだ。M8には2WDモードもあるので、腕に覚えのあるドライバーがサーキットでこのクルマをFRで振り回したら、きっと楽しくてしかたないだろうなということは容易に想像が付く。M8は、そういう孤高の存在なのである。
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