クロスオーバー、スポーツ、エステートなど様々な車型が用意される新型クラウンだが、その歴史と伝統を鑑みた上で一番の本命と言えるのがこのセダンだろう。初のFCEVも用意される本車の仕上がりはどれほどのものだろうか?
これぞ「クラウン」に相応しい仕上がり
その姿を初めて見た際、個人的にはLWB版のミライ的な佇まいにある種の諦観を抱かざるを得なかった新生クラウンのセダン。だが、結論から先に言うとその中身はまさに「ザ・クラウン」と呼べる見事な仕上がりだった。
新型クラウン4車型のなかで唯一となるFRプラットフォームを採用。前後を水平に貫く伸びやかなショルダーラインは、セダンの名に相応しいフォーマルな佇まいを演出。
搭載するパワートレインは、2.5L直4自然吸気+電気モーターに10速ATを組み合わせたハイブリッドとクラウン史上初となるFCEVの2種。最初に試乗したのは前者だったが、走り出した瞬間に歴代モデルの感覚が蘇って思わずニンマリとさせられる。路面からの入力を柳に風とばかりに受け流す上品なライド感は、長年クラウンが得意としてきたところ。ドイツ車的な「剛」の風情とは一線を画するが、特に日本の環境だと確かな説得力を持っているのは確か。もちろん、単に柔らかいわけではなく積極的に操れば身のこなしはナチュラル志向。むしろ、車重が2トンを超える体躯とは思えない一種の軽やかさは、新型に備わる固有の一面と言えるかもしれない。
パワートレインは2.5L直4エンジン+モーターのHEVのほか、クラウン初のFCEVも用意される。両車の価格差はちょうど100万円だが、各補助金などを考慮するとほぼ同等と考えていいだろう。
システムのトータルで245psとなるハイブリッドの動力性能にも不足はない。物理的なギアを介するとあって、アクセル操作に対する反応も自然だ。唯一、気になったのは2.5Lエンジンの質感がセダンのキャラクターには若干そぐわないことだろうか。
「ニューフォーマル」という新たな価値観に挑戦したという室内空間。後席は3000㎜というホイールベース長を生かし、足回りのスペースを含めて充分な広さだ。
そんなハイブリッドと比較すると、純電動車となるFCEVはさすがに静粛性が高い。数値上はハイブリッドより軽量ながら、こちらのライド感はなぜか一層重厚なだけに高級セダン、あるいは新しいクラウンとしてはこちらの方が理解しやすいかもしれない。
走行モードにはリアシートの乗り心地を重視した「Rr CONF」モードが備わる。オンにすると大船に乗ったような国産高級車らしい“あの”乗り心地に。
さらに後席は単にミライより広いだけでなく、ヒップポイントを高める等、しっかりとショーファードリブン仕立てになっている。その意味でも、セダンは正統派な地位を受け継ぐ新型クラウンと言うことができそうだ。
【Specification】トヨタ・クラウンセダンZ ハイブリッド
■車両本体価格(税込)=7,300,000円
■全長×全幅×全高=5030×1890×1475mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=前:1620、後:1615mm
■車両重量=2020kg
■エンジン型式/種類=A25A-FXS/直4DOHC16V
■総排気量=2487cc
■最高出力=185ps(135kW)/6000rpm
■最大トルク=225Nm(22.9kg-m)/4200-5000rpm
■モーター形式/種類=2NM/交流同期電動機
■モーター最高出力=180ps(132kW0/—
■モーター最大トルク=300Nm(30.6kgーm)/—
■燃料タンク容量=82L(レギュラー)
■燃費(WLTC)=18km/L
■トランスミッション形式=10速AT
■サスペンション形式=前後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45ZR20
【Specification】トヨタ・クラウンセダンZ FCEV
■車両本体価格(税込)=8,300,000円
■全長×全幅×全高=5030×1890×1475mm
■ホイールベース=3000mm
■トレッド=前:1620、後:1615mm
■車両重量=2000kg
■FCスタック形式/種類=FCB130/固体高分子形
■モーター形式/種類=3KM/交流同期電動機
■モーター最高出力=182ps(134kW)/6940rpm
■モーター最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/0-3267rpm
■燃料タンク容量=141L(水素)
■燃費(WLTC)=148km/kg
■サスペンション形式=前後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:245/45ZR20
問い合わせ先=トヨタ自動車 TEL0800-700-7700