電化製品はポータブルソーラーパネルとポータブルバッテリーが必須アイテム
未曾有の被害となった、能登半島地震。お亡くなりになった方々のご冥福をお祈りする。地震発生から3週間以上が経った今でも、避難所で過ごしている方が大勢いる状況だ。また、避難所の駐車場、または被害によって住めなくなった自宅の敷地内で車中泊を続けている方々もいる。
こうした災害が起こる度に、「自分がこの立場になったらどうなってしまうだろうか?」と不安に感じる人もいるだろう。つまり、防災という意識である。
コンちゃんとの生活も早くも3年だが、この3年の間はコロナ禍という異常事態に対して、コンちゃんをリモートオフィスで使うなどしてきた。もちろん、コンちゃんを防災の際の避難空間として捉えていたが、コンちゃんとの馴染みが深い北陸地方で発生した、能登半島地震で起こっている現実に直面し、改めてコンちゃんと防災について考えようと思った。
話は、コンちゃんのようなバンタイプのクルマに限ったことではない。防災としての車中泊や車内滞在のあり方について広く考えてみたい。まずは、車内空間をどう使うのか?
休憩したり、飲食をするだけならば、通常のシートポジションから少しシートを倒した程度でも対応できる。これは、一般的な感覚として理解できると思う。それが、夜間の睡眠となると、やはりフルフラットなシートアレンジの重要性が高まる。
コンちゃんのように、キャンピングカーを想定して改造されている場合、完全なフルフラットになる。また、近年発売されている多くのミニバンがフルフラットに近い状態となる。こうしたフルフラット、またはフルフラットに近い状態であっても、十分な睡眠をとるためにはエアマットレスは必需品である。インターネット上には様々なタイプのエアマットレスが販売されており、エアの入れ方で各種方法があるが、我が家で使っているのは枕部分を足で踏むタイプ。これまでいくつかのエアマットレスを購入しているが、耐久性も含めて実際にいろいろ試してみることが重要だと痛感しているところだ。
次は、寝袋。登山用やキャンプ用など、季節に応じて仕様が様々あり、価格にも大きな開きがある。特にコロナ禍で、自宅でキャンプ体験をする人も増えたこともあり、多様なタイプの寝袋がインターネット上や量販店で販売されている。こちらも、感想は個人差が大きいため、実際に購入して試してみるしかない。我が家でも複数購入し、クルマ移動で冬季にホテル滞在する際、部屋で寝袋を使うこともある。慣れない人は、寝袋を仕舞う作業に時間がかかることもあるので、購入後は積極的に自宅で使うことをお勧めする。
電化製品については、ポータブルソーラーパネルとポータブルバッテリーが必須アイテムとなる。停電が続くと、「生活するのに、電気がこんなに大切なんだな」と痛感するものだ。
一方、ポータブルソーラーパネルを日常的に使ってみると、電気は自分の力で確保できるもの、という認識が高まる。コロナ禍になってから、家電量販店やホームセンターの一部でポータブルソーラーパネルを展示販売するお店も増えてきた。また、インターネット上には様々なタイプのポータブルソーラーパネルが出回っているのだが、発電の性能や耐久性にはかなりの差があると言われている。できれば、ある程度大きなサイズで発電能力が高い商品を選ぶことが、防災という観点では重要だと思う。
その上で、ポータブルバッテリーを併用することをお勧めする。ポータブルバッテリーは電池容量に応じて価格が違うが、防災用としては携帯端末など小型電気機器の充電で2〜3日分が必要になるだろう。そうなると価格は10万円以上になる商品が少なくない。
また、コンちゃんのようなキャンピング目的で制作されたモデルでは、エンジン始動用途とは別に各種電気製品に対応するバッテリーを搭載している場合がある。このバッテリーは走行中やアイドリング中に充電できる。また、トヨタのハイブリッド車では近年、100V/1500Wの給電が可能であり、ガソリンがある間は給電し続けることが可能だ。そのためにも、日常からクルマは満タンにすることを心がけることも必要。クルマが大きな発電機という発想はEVだけではない。
次のトイレだが、お勧めしたいのが、いわゆる「猫砂」だ。携帯トイレといえば、凝固剤とポリ袋がセットになっている商品がホームセンターなどで販売されている。こうした商品を車内や自宅に完備することも必要だ。ただし、避難の期間が長くなり、また家族での避難となれば、携帯トイレはかなりの数を常備する必要がある。
それが猫砂の場合、実際に使ってみるとすぐに固まるし、同じ砂で何度も使用しても吸収と消臭の効果がある。また価格も、大きな袋で購入してもホームセンターのプライベートブランドだと数百円とコスパが高い。自宅に猫ちゃんがいれば、防災用に買い足す。また、猫ちゃんがいないお宅でも、猫砂を常備していると、災害時の困り事がひとつ減るだろう。
また、屋外で避難する場合、縦長のポップアップテントをトイレ代わりに使うことができる。小型トイレ容器も数千円なので、こちらも防災グッズとして必要だと思う。
そして重要なのが、水である。飲料用としては賞味期限が5年程度の水がホームセンターなどで購入できる。20L程度のポリ容器に水を常備し、定期的に入れ替えることも防災として必要だろう。
こうした水を使って、飲食、洗顔、シャンプーなどを行うのだが、シャンプーについては水なしでスプレーやジェルで代用できる商品がある。こちらは数百円の商品なので、数本常備することをお勧めする。
食べ物については、古くからカンパンが防災用として知られているが、近年はビスケットタイプなどで様々な商品が販売されている。賞味期限が近づいたら、新規に購入すると同時に、家族で防災用の食事をとりながら、災害時を想定した避難訓練を自宅で行うことも必要だと思う。
こうした防災に関して、毎年9月1日の「防災の日」にメディアで取り上げられることが多い。だが、災害はいつ、我が身に直接的な影響を及ぼすのか想定できないのは当然のことだクルマと防災について、常日頃から関心を持つことが大事。
また、思い立ったら、防災グッズを一気にまとめて揃える、決断力と行動力も大事だと思う。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。