ニューモデル

究極のV12エンジン搭載軽量スーパーカーが日本初上陸!「ゴードン・マレーT.50」

世界初公開から48時間で完売したという、超稀少モデルの日本上陸第一号を取材する機会に恵まれた。さらに、アジア地域におけるGMAオフィシャルのサービス拠点についてもご紹介する。

稀代デザイナーの集大成の1台

1970〜1990年代にかけては、ブラバムそしてマクラーレンのF1黄金期を支えたデザイナーとして、そしてロードカーでは伝説的なマクラーレンF1の開発を担ったエンジニアとしてその名を馳せたゴードン・マレー。ことのほか、ロードカーに対しては強いこだわりを持つ氏がそのキャリアの集大成として世に問うたのがT.50だ。

コスワースと共同開発した3994ccのV12自然吸気エンジンを搭載。エンジン単体重量は178kgで、最高出力670ps/11,000rpm、最大トルク479Nm/8000rpmを発生。6速MTトランスミッションを組み合わせる。

2019年の開発発表後、100台の予定数が即売に近いほどの反響をみせたT.50は、そのうちの15台が日本や香港からのオーダーとなっている。さらにクローズドコース専用車両となるT.50sニキ・ラウダが3台、そしてセカンドモデルとなるT.33はクーペとスパイダー合わせて200台の予定数に対して13台が日本をはじめとするアジア圏からのオーダーとなる。

T.50の車名はゴードン・マレー氏がデザインした50番目のクルマであり、氏のデザインとエンジニアリングの50周年から由来される。

通常この手のモデルであればアジア圏の比率は全数の5%もあれば御の字だろう。それが10%以上の比率となる大きな理由が、かつてマクラーレンカーズでF1を18台、日本の顧客へと届けた安川実氏の尽力がある。ちなみにF1のロードカーの生産台数は64台。新車販売当時、日本には28%以上というとんでもない数が上陸していたことになるわけだ。マクラーレン・ホンダの黄金期にF1ブームが訪れた、その時代的な知名度もさておき、当時の日本のエンスージアストたちの、ゴードン・マレーのエンジニアリングに対する尊敬や期待も大きかったのだと思う。

シャシーとボディはすべてカーボンファイバー製で、これまでに作られた中で最も純粋で、最も軽量で、最もドライバー中心のスーパーカーに仕上がっているという。

そこで培われたゴードン・マレーとの友情と信頼関係から、ゴードン・マレー・オートモーティブ=GMAで手掛ける3モデルのアジア地域における販売をサポートすることになった安川氏は、顧客対応と並行して、PDIや定期メンテナンス、重整備や修理といったアフターサポートを担当する拠点設置の検討を始めたという。

全長×全幅×全高は4352×1850×1164mm。ホイールベースは2700mm。重量は997kg。

そこで白羽の矢が立ったのが、千葉県でクラシックレーシングカーや特別なスポーツモデルなどの販売、さらにはそういったクルマたちを好環境で保管するストレージサービスなどを展開するプロスリンクだ。同社の主力業務の中にはル・マンカップやGTアジア等を転戦する海外レーシングチームの日本国内でのレース活動におけるメカニック派遣やロジスティクスなどのレーシングサポートもあり、現在もWECにおけるAFコルセのサポートを担当している。

サスペンション形式は前後ともにWウイッシュボーンを採用。2020年8月に発表された価格は236万ポンド(当時約3億2785万円)。すでにT.50の100台、T.33のクーペ100台、スパイダーモデルの100台は完売しているが、まだ確定ではないがT.50、T.33に次ぐ第三のモデルもナンバー付で登場するようなので、興味のある方はプロスリンクに問い合わせていただきたい。

メカニックの腕や設備の充実ぶりに加えて、海外との豊富なネットワークや部品等を的確にやり取りできる言語能力の高さも評価され、安川氏をエグゼクティブ・アドバイザーとして迎え入れるかたちで、プロスリンクはイギリス、アメリカ、中東に加えてアジアで唯一となるオフィシャルのGMAサービスセンターとして認定を受けた。安川氏は自らの年齢を引き合いにプロスリンクのスタッフの若さにも期待しており、GMAの3モデル、ひいてはマクラーレンF1のメンテナンスも長きに渡ってサポートしてもらえればと話す。

10月上旬、整備確認用のテストコースで日本上陸1号とT.50と初めて対面した。オーナー氏の計らいで撮影が許されたその個体はシンプルな白に塗られたことで、ゴードン・マレーが指標するシンプル&ミニマルがひときわ強調されているかのようにも窺える。

3座のセンターシートの背後に収まるのはコスワースとの共同開発となる3.9L自然吸気のV12ユニットだが、そのエンジン本体の体積もひっくるめて、車体はとにかく小さい。サウンドは想像以上に静かでむしろメカノイズが際立つほど、そして転がり感からして車重は軽そうに映る。ともあれ、一切の無駄がなく凛としている。T.50はただ眺めるだけでも、稀代のデザイナーの集大成であることがひしひしと伝わる1台だった。

GORDON MURRAY AUTOMOTIVE Service Tokyo PROSLINK(プロスリンク)

GMAでは、イギリス、アメリカ、アジア、中東の4大陸にサービスセンターを持ち、アジアを担当するのがこのプロスリンクで、試走コースをはじめ本国同様の設備を誇る。クルマ購入の契約は直接GMAとのやり取りになるが、ロジスティックからナンバー付け、メンテナンス等のアフターフォローはレース経験豊富なスタッフにお任せできる。

住所:千葉県富津市岩坂487-2 TEL:0439-29-7888 https://www.proslink.jp/

フォト=柏田芳敬 ル・ボラン2024年12月号より転載

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