国内試乗

【比較試乗】街乗りからオフロード走行まで可能な本格オフローダーを比較検証。タフな相棒の戦闘力は?「ランドローバー・ディフェンダー vs トヨタ・ランドクルーザー vs メルセデス・ベンツ Gクラス vs ジープ・ラングラー」

ここで集めた4台は、世界を代表するリアルオフローダー。用途や出自はいろいろだが、不整地を難なく走り抜けられる走破力と、そんな道など走らぬ都会派から支持されているのが共通点。似ているようで似ていない4台を乗り比べ、個性や魅力を露わにした。

本格オフローダーのカリスマにも弱点あり

“ゲレンデ”の名で崇められ、カリスマ的な人気を誇る高級本格オフローダーがGクラスだ。NATOの軍用車両を起源とするこのクルマは、1979年に初代が誕生し、その後、何度もモデルチェンジを重ねながらも、直線的なフォルムやボンネットのウインカーレンズ、丸形ヘッドライト、堅牢なラダーフレーム構造といった特徴を守り、クロスカントリー車の頂点に君臨し続けている。

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION/圧倒的な人気のGクラスには、ただただ驚くばかり。

その最新型が、2024年に登場したW465型で、今回は上位グレードのメルセデスAMG G63をテスト。試乗車はローンチエディションと呼ばれる特別仕様車で、バンパーやアンダーガードなどの一部にカーボンが使われているのはそのせいである。

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION/現行型が登場した’18年以来、初の大幅改良を受けた新型Gクラス。ボンネットデザインやAピラーの黒い樹脂パーツなど細部の改良を積み重ね、Cd値は0.53から0.44へと改善している。Gクラス初採用となるMBUXやワイヤレスチャージング、キーレスゴーなどを標準装備。G63にはAMG専用ディスプレイスタイルも採用。

ガチャリとドアを閉じ、運転席に陣取ると、ひときわ高いアイポイントと間近に迫るフロントウインドーがオフローダーらしさを印象づける一方、最新のMBUXをはじめとするモダンなコクピットデザインに一瞬戸惑った。

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION

そんなG63には、AMG自慢の4L V8ツインターボが搭載され、最高出力585ps、最大トルク850Nmの実力を誇る。その加速は、低速から圧倒的に力強く、しかも、48Vマイルドハイブリッドの電動アシストにより、低回転域でもエンジンが素早く反応するのが実に気持ちがいい。もちろん、アクセルペダルを踏み込めば派手なV8サウンドとともに怒濤の加速を見せ、王者の風格に浸りきることができる。

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION

いまやラック・ピニオンのステアリングが搭載されるだけに、ステアリグ操作に対する反応も正確。乗り心地もマイルドでしなやかだが、スピードが上がると前後、左右の細かい揺れが目立ち、落ち着きが足りないのが弱点。それでも、圧倒的な人気を集めるGクラスには、ただただ驚くばかりだ。

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION

MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION

現代のテクノロジーで伝説の名前が復活!

Gクラスのライバルとして、このところ人気急上昇中のランドローバー・ディフェンダー。

LANDROVER DEFENDER 110 V8/シンプルなのに上質さに溢れている。

その歴史は古く、1948年、当時のローバーが発売したランドローバーシリーズに始まり、その後、後継モデルのランドローバー110や同90が、1990年にディフェンダーの名を手に入れている。2016年には生産が終了したが、2019年に現代のデザインとテクノロジーで蘇ったのが現行のディフェンダーなのだ。

LANDROVER DEFENDER 110 V8/インテリアは水平基調のダッシュボードなどオフローダーならではのデザインを残しながら、現代のデザイン言語を取り入れている。V8モデルにはスエードクロスのステアリングホイールを採用。また、エクステリアにはクアッドアウトボードマウンテッドエキゾーストやグロスブラックブレーキキャリパーを標準装備。

短い前後オーバーハングと直立したフォルムが伝統を受け継ぐ一方、デザインも中身も、すべてが新しい現代のディフェンダー。オフローダーでは常識のラダーフレームと決別し、アルミモノコック構造を採用するのもその一例だ。

LANDROVER DEFENDER 110 V8

レンジローバーにも通じるモダンさと、ディフェンダーらしいシンプルさを併せ持つエクステリアに見とれながら運転席のドアを開けると、エクステリアが負けないほど潔いデザインのコクピットが迎え入れてくれる。シンプルなのに上質さに溢れているのも、このクルマの印象を良くしている。

LANDROVER DEFENDER 110 V8

試乗車は2024モデルとして日本に導入されたスーパーチャージャー付きの5L V8ガソリンエンジンを搭載するディフェンダー110V8で、動き出しこそ穏やかだが、2000rpmあたりから大排気量エンジンの本領を発揮する太いトルク。さらに回せば6000rpm超えまで気持ちのいい吹け上がりを見せる。

LANDROVER DEFENDER 110 V8

走りについては、目地段差を超えた際など、ショックの遮断がいまひとつということもあるが、概ね快適な乗り心地で、フラットさもまずまずで、今回の4台のなかではもっとも心地よい仕上がり。全長5m弱、全幅2mというボディは、広大なキャビンスペースを誇る一方、街中ではやや手に余ることも。それさえ気にしなければ、楽しく付きあえる一台である。

LANDROVER DEFENDER 110 V8

新型のインテリアは親しみやすい雰囲気に

オフローダーの代名詞といえばジープ・ラングラー。その歴史は1987年にスタートしたが、起源は1941年のウィリスと古い。現行型は、2018年に発売された“JL”と呼ばれる4代目で、この2024年にはフェイスリフトが実施されている。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT/独特な雰囲気が魅力のオフローダーの代名詞。

独特のフォルムに加えて、7スロットグリルや丸目のヘッドライト、台形のホイールアーチといった伝統を受け継ぐことで、ひとめでラングラーとわかるのも人気の秘密。かつては3ドアも選べたが、現在は5ドアのみの販売になり、その中から今回はエントリーグレードのアンリミテッド・スポーツを引っ張り出した。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT/2024年5月にラングラーはマイナーチェンジし、デザインの変更、装備の充実、エントリーモデル「アンリミテッド・スポーツ」の復活と既存モデルの値下げを実施。内装は、インパネルまわりをブラック基調としたカラーリングで統一、新たに第5世代の「Uconnect 5」インフォテインメントシステムを搭載。

見慣れたエクステリアとは対照的に、最新のラングラーのコクピットは、横長のタッチスクリーンやダッシュボードを覆うソフトパッドなどにより、これまでよりも親しみやすい雰囲気に仕上がっている。それでも、水平基調のダッシュボードやドライバーに迫る直立したウィンドシールドが、オフローダーらしい独特の雰囲気を醸し出している。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT

搭載されるエンジンが2L直4ガソリンターボというのが、いまどきのクルマらしく、その排気量から想像する以上に豊かなトルクを低回転から発揮する。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT

最高出力はたった272psとはいえ、車両重量1990kgのこのクルマを活発に走らせるには十分の性能である。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT

ラングラーの走りは、細かいピッチングが伴うものの、ロールはよく抑えられている。路面によってはショックを伝えがちだが、十分快適なレベルに仕上がっているのも見逃せない。取り外し可能な3分割ハードトップを採用することもあり、そのきしみ音や風切り音が気になるが、見た目ほどスパルタンでないところが、いまなお多くのユーザーを獲得する秘訣なのかもしれない。

JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT

忘れてならないのは日本を代表するランクル

ここまで、ドイツ、イギリス、アメリカを代表する本格オフローダーを紹介してきたが、忘れてならないのは日本を代表する“ランクル”こと、トヨタのランドクルーザー。これまで、最上級グレードの200シリーズ、中核モデルのプラド、そして、伝統の70シリーズというラインナップだったが、現在は最上級モデルを300、プラドの後継を250と変更することで、それぞれのポジションが明確になった。今回はついに日本でも発売された250から、2.8Lディーゼルを搭載する最上級グレードのZXをチョイス。試乗車は丸目ヘッドライトがクラシカルな雰囲気を醸し出す限定車のファーストエディションである。

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition/日常ユースで気軽に乗るには打ってつけの一台。

このランドクルーザー250ではラダーフレームを用いるGAーFプラットフォームを採用し、フロントがダブルウイッシュボーンサスペンションであるのに対して、リアはリジット式となる。

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition/シートレイアウトは2列5人乗りと3列7人乗りの2タイプで、後者については2列目シートと3列目シートの配置を見直すことで、951mmの広いタンデムディスタンスを実現。荷室容量は5名乗車時で408Lを確保し、電動格納式の5:5分割フロア格納サードシートやバックドアガラスハッチなどを採用する。

そんな本格的なスペックからはスパルタンな乗り味を想像してしまうが、実際はとても扱いやすく、日常で乗りやすいクルマに仕上がっていた。走り出すと、乗り心地はマイルドで、コーナリング時のロールはやや大きめだが、ピッチングはうまく抑え込まれている。電動パワーステアリングが装着されるおかげで操舵力は軽めで、ステアリングのギア比もスローすぎず、乗用車とかわらぬ感覚で操縦できるのがうれしいところだ。

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition

204ps、500Nmを発揮する2.8Lディーゼルはややノイズが目立つものの、低回転からトルクの太さが自慢。2000rpm手前あたりから力強さを増し、街中から高速までストレスとは無縁である。物理ボタンを多く配置するコクピットは一見煩雑だが、使い勝手は良く、日常の足として気軽に乗るには打ってつけの一台といえるだろう。

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition

TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition

最新リアルオフローダーのメカニズム解説

最新のリアルオフローダーはオフロード性能の高さはもちろん快適性にもこだわって開発されているのが特徴。ここでは、各モデルの4WD性能やシャシー、搭載するパワーユニットについて解説してみる。

MERCEDES-BENZ G-CLASS

このW465型にも伝統のラダーフレームを採用。G63 ローンチエディションでは電子制御油圧スタビライザーを用いたAMG ACTIVE RIDE CONTROLサスペンションを採用。フルタイム4WDは、フロント/センター/リアのデフロックをスイッチひとつで操作できる。オフロード走行モードとしてTrail/Rock/Sandが選択可能。渡河水深性能は750mm。

アファルターバッハにて「One Man, One Engine」の原則に則って生産される4L・V 8ツインターボエンジン(M177型)は、最高出力585ps/最大トルク850Nm発揮。さらにISG+48V電気システムの搭載により電動化され、パワーと効率を大きく高めている。

LANDROVER DEFENDER

LANDROVER DEFENDER/本格的オフローダーでありながら、ラダーフレームではなく、アルミモノコック構造を採用。フルタイム4WDは、オンロード、草/砂利/雪、泥/轍、砂地、岩場、渡河走行から好みのモードが選択できる。また、センダーデフ/リアデフなどの動作などをカスタマイズすることも可能。ウェイドプログラムを起動すれば最大900mmの渡河水深性能を誇る。

525ps/625Nmを発生する5LV8エンジンは長らくジャガー・ランドローバーのハイパフォーマンスモデルや上級モデルに使われてきたパワーユニットで、過給にはスーパーチャージャーを使用している。

JEEP WRANGLER

JEEP WRANGLER/ジープといえども、オフロード走行に適したラダーフレーム構造を採用するのはこのラングラーのみで、サスペンションは前後ともリジッドアクスル。“セレクトラック”と呼ばれる4WDシステムは、電子制御センターデフを搭載し、手動でさまざまなモードが選ぶことが可能。後輪駆動の「2H」、センターデフをロックする「4H」、フルタイム4WDの「4H AUTO」など。

現在ではラングラーのすべてのカタログモデルに搭載される272ps/400Nmの2L直4気筒ターボエンジンは、V6モデルより前軸荷重が小さく、前後軸重配分も53:47となる。日本はすべてレギュラーガソリン仕様となる。

TOYOTA LAND CRUISER 250

ランクル300同様、250にもラダーフレームを用いるGF-Aプラットフォームを採用。4WDは、センターデフにトルセンLSDを採用するフルタイム4WDを搭載。オフロード走行を支援するために、AUTO/DIRT/SANDなど6つのモードが選べるマルチテレインセレクトを用意。リアデフロックをスイッチひとつで切り替えられる機能も搭載。

ランドクルーザー250は、2.8L直4ディーゼルターボエンジン+8速ATと、2.7L直4自然吸気エンジン+6速Super ECTといった力強い走りと高い環境性能を実現する2タイプのパワートレインを設定。

【SPECIFICATION】MERCEDES-AMG G63 LAUNCH EDITION
■車両本体価格(税込)=30,800,000円
■全長×全幅×全高=4690×1985×1985mm
■ホイールベース=2890mm
■車両重量=2570kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+ツインターボ/3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/6000rpm
■最大トルク=850Nm(86.7kg-m)/2500-3500rpm
■トランスミッション=9速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:リジッドアクスル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:285/45R21
問い合わせ先=問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610

【SPECIFICATION】LANDROVER DEFENDER 110 V8
■車両本体価格(税込)=16,270,000円
■全長×全幅×全高=4945×1995×1970mm
■ホイールベース=3020mm
■車両重量=2450kg
■エンジン種類/排気量=V8DOHC32V+スーパーチャージャー/4999cc
■最高出力=525ps(386kW)/6000rpm
■最大トルク=625Nm(63.7kg-m)/2500-5500rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:275/45R22
問い合わせ先=ジャガー・ランドローバー・ジャパン TEL0120-18-5568

【SPECIFICATION】JEEP WRANGLER UNLIMITED SPORT
■車両本体価格(税込)=7,990,000円
■全長×全幅×全高=4870×1895×1845mm
■ホイールベース=3010mm
■車両重量=1990kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1995cc
■最高出力=272ps(200kW)/5250rpm
■最大トルク=400Nm(40.8kg-m)/3000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:リジット、後:リジット
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:245/75R18
問い合わせ先=ステランティスジャパン TEL0120-712-812

【SPECIFICATION】TOYOTA LAND CRUISER “250”ZX First Edition
■全長×全幅×全高=4925×1980×1935mm
■ホイールベース=2850mm
■車両重量=2410kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ディーゼルターボ/2754cc
■最高出力=204ps(150kW)/3000-3400rpm
■最大トルク=500Nm(51.0kg-m)/3000rpm
■トランスミッション=8速AT
■サスペンション=前:Wウイッシュボーン、後:トレーリングリンク
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤサイズ=前後:265/60R20
■車両本体価格(税込)=7,350,000円
問い合わせ先=トヨタ自動車 TEL0800-700-7700

フォト=小林俊樹 ル・ボラン2024年12月号から転載

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