コラム

電気代が高騰するドイツでは34%のEVオーナーがエンジン車へ戻ったという驚きのデータが!【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

BEVよりもE-Fuel燃料を利用する方向性も

ただでさえ冬時間中は日照時間が少ない上、すっきりとした気持ちの良い晴天の日が殆どないので、一日中どんよりとした日々が続くドイツのミュンヘンです。

さて、ドイツでは毎日のようにEV車両関連のニュースを目にしていますが、EV車両に否定的な視点で執筆されたものも少なくありません。私の一個人の意見としては、愛車を持つ方たちにはそれぞれのカーライフスタイルや考えがあり、各自が必要とする好みのクルマを買えば良いと思いますし、他人に愛車選びについてとやかく言われたくないのが本心ではないでしょうか。私はカブリオレが大好きで代々の愛車はカブリオレなのですが、それをとやかく言ってくる方も……。

ドイツのナンバープレートの末尾EはBEVやHEV等。

現在は内燃機関から水素まで多くの選択肢がありますので、自由に選べば良いと思います。私は日常生活にはママチャリ愛用者で、ミュンヘン市内では愛車を利用する事は非常にマレ。クルマを利用する時はかなりの長距離ドライバー、それも欧州各国の田舎のサーキットへ行く事が多いのでやはり不安要素は充電の事でしょうか。例えば、フランスのル・マン24時間レースに行く際は片道1200km程なのですが、経費削減の為に一日で走り切ります。道中に休憩で利用するドイツやフランスのアウトバーンのサービスエリアには十分な充電設備がありますが、問題は現地! ごく一般的な住宅地にある私の定宿にさせて頂いているフランス人女性のご自宅やその近辺にはもちろん充電施設は一切ありませんし、恐らく数千台規模で駐車されているであろうサーキットの広大なメディアやチーム関係者の駐車場には充電施設は一切ありません。朝から深夜までサーキットへ通う毎日に、もしもEV車両を所有していた場合に充電をしに遠くへ行く時間も気力もありませんので、いまのところ私のカーライフにおいてEV導入へは難しいと感じています。

スパ24hレースでは全車が100%サステナブルな燃料を搭載しています 毎年70台前後のGT3マシンが集う超ハイレベルのレースは見どころ満載。

EU主導でEV化へ向けて大々的に舵を切ったかと思ったら、なんやかんやでやっぱり様子を見ましょうかね……的な雰囲気になっていますが、そんなこんなで、結局は将来的にどっちなの? とよく分からなくなるEV化問題。
ドイツでは昨年までBEVをはじめとしたエコカーへ乗り換える方には、かなりお得な助成金制度を設けていましたが、それが終了した今年は内燃機関同様に助成金を利用する事が出来ません。
ADAC(ドイツ自動車連盟)が先日発表した2024年9月の自家用車としての新車登録台数を見てみると、以下の通りになっています。一見すると、ハイブリッド車(PHEV)やBEVがかなり多く占めているように思えますね。
ガソリン:32.1%
ハイブリッド:28.9%
BEV:16.5%
ディーゼル:14.9%
プラグインハイブリッド:7.2%
その他:0.4%
BEVの2024年9月の新規登記数は3万4479台。その売れ行きトップ10は以下の通りです。日本とは随分とラインアップが違うのではないでしょうか。
1位:シュコダ Enyaq 3406台
2位:テスラ モデルY 3067台
3位:VW ID.7 2673台
4位:VW ID.4/ID.5 1971台
5位:MINI 1663台
6位:クプラ Born 1501台
7位:BMW iX1 1212台
8位:VW ID.3 1208台
9位:Audi Q4 e-tron 1164台
10位:ヒュンダイ Kona  924台
特に面白い数値となったのは、3位のVW ID.7ですが、前年との同月比は+12,269.5%! 10位のヒュンダイは−51,2%という、なかなか興味深いですね。

一方で、現在ドイツで自家用車として登記されている総数4910万台の中の割合で見てみると、まだまだ内燃系が全体の9割以上を占めている事が分かりますし、EV化には程遠いというのが数字を見てみると明らかですね。
ガソリン:61.5%
ディーゼル:28.8%
ハイブリッド:4.1%
BEV:2.9%
PHEV:1.9%
LPガス・天然ガス:0.8%

私の住む街ミュンヘンでは、随分と末尾にEが付くナンバーのクルマが(BEVやPHEV<Co2の排出が最高50mgかEVで最低40km以上の走行が可能な車両>)増えたように感じますが、人口150万人以上の都市部がゆえに充電装置が随分と増設された事と比例しているでしょうけれど、地方都市や村ではまだその設置は十分ではありません。

サーキットはどの国も大半が田舎にありますので、道中に地方の小さな市町村や集落を通るのですが、EVの充電装置はミュンヘンに比べると、かなり少ないと感じてしまいます。
EUやドイツ国家の指針は今後どうなっていくのか、まだ先行きは不透明ですが、現時点では問題なくガソリン車の愛車を所有していられる事にホッとしています。ただ、ミュンヘン市内中心部へのディーゼル車の乗り入れは規制されています(住民や運送業者、救急・介護・医療品配送等は除外)。

ミュンヘンの都市部のディーゼル車進入規制。

ドイツの大手自動車保険会社HUK Coburg社によると、2024年1月~9月末までに34%のEVオーナーが内燃機関へ戻ったという統計を出しました。2023年の1年間ではEVから内燃系に戻った割合は28%だったのが、9ヶ月でその数を大きく上回りましたので、恐らく12月末までには更に増えるのではないでしょうか。
再び内燃機関に戻る理由は一体なんなのでしょうか。その1位に挙げられたのが、購入以前に考えていた以上の維持費の高さ。2位は充電設備のインフラが不十分、3位には今まで内燃機関で慣れていた長距離ドライブ旅行との状況変化という事だそうです。

ドイツはEU諸国の中でも電気代金がかなり高額な国でもあります。家庭用の一般的な電気料金を比べてみると、日本:1kwh/32円、ドイツ:1kwh/45,1セント(約74円)となっています。当然ながら自動車用の充電も高額になりますので、よく利用される方や長距離を運転する方には割高になりますよね。

2023年のル・マン24hレースで発表された水素を燃料とするレーシングカー。

ホテルに充電施設を備えている所も増えましたが、かなり割高な所もあるようです。ドイツでのBEV車両は自動車税が非課税となっていますので、それだけでも十分羨ましいですが、それが利点にならない位にBEVの維持費は高いのでしょうか?

私が普段身を置くモータースポーツの世界では、いくつかのEVカーレースが開催されているのですが、最も代表的なものとしてフォーミュラEが挙げられ、今年は日本で初めて東京の湾岸エリアで開催されて大盛況でしたね。

電気自動車レースの最高峰であるフォーミュラEは、市街地の特設コースで開催されるのが特徴。昨年は東京で初の公道レースが開催された。

いまのところGTカーやハイパーカーでは、EVよりもカーボンニュートラルな燃料E-Fuelを利用する方向へ向いています。今後更に開発が進んで量産が叶えば、一般のガソリンスタンドで私たちも給油出来る日が来るのでしょうが、現時点ではその価格と供給量がネックで、モータースポーツの現場でもその価格に悩みながらも未来へ向けて始動し、WEC(世界耐久選手権)では水素カークラスの設立、開発が進められています。

スパ24hレースでは100%サステナブルな燃料を全車使用しています。

一般のガソリンスタンドでE-Fuelやの価格の安定や十分な供給量が賄えれば、必ずしもEV化にする必要もなくなるのかも知れませんので、今後に期待をしたいところですね。

この記事を書いた人

池ノ内 ミドリ

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

池ノ内 ミドリ

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