フジミ製911ターボのメカニズム再現を堪能する
1ヶ月半以上のお待たせとなり、年も越してしまったが、ポルシェ911ターボの工作企画第3回である。
【画像39枚】緻密なパーツ割りゆえに現出する問題を解決しつつの組み立てを見る!
これまでにもお伝えしている通り、この作例はタミヤ製1/24スケール・プラモデルの911ターボをベースに、フジミ製の同スケール・同車種のキットを組み合わせ、良好なプロポーションとエンジン再現を両立しようというものだ。
異なるメーカー製のボディ/シャシーの合体に伴う調整をした第1回、前後フードの切り離しなどを行った第2回に続き、今回はシャシー/エンジンの組み立てへと進むわけだが、その工作内容の詳細については各画像とそのキャプションをご参照いただきたい。今回の本文では、タミヤ製911ターボの生い立ち・変遷について少し触れておこう。
タミヤ製911ターボ’88の意外な(でもない?)前身
変遷と言っても、タミヤの911ターボ ’88は2005年に発売されたときから911ターボ ’88で、以後もそれに変わりなく、内容的に目立った変化がある訳ではない。実はこの911ターボには前身となるキットが存在するのだ。1987年にタミヤが発売したスナップキット、ポルシェ911ターボ・フラットノーズがそれである。
第2回の内容からお分かりとも思うが、このフラットノーズのキットの時点でフジミはすでにエンスージアスト・シリーズを開始しており、国産カープラモ界にはその評判が轟いていた。一方で、難易度を高めすぎた内容には批判もあったことだろう。その意味では、二代目プレリュードやメルセデス560SECでフルディテール・ディスプレイモデル化の先鞭をつけたタミヤとしても、このままでは業界が隘路に入り込んでしまうのではないか、との危惧はあったのかもしれない。
……というあたりは想像にすぎないのだが、事実、この頃のタミヤは簡易な組み立て内容を持つキットを多く送り出していた。その2年ほど前のホンダ・トゥデイをスナップキットかつモーターライズとしてリリースしたのを皮切りに、サバンナRX-7やスバル・アルシオーネをクイックモーターライズ版として、二代目シティや91トレノなどをスナップキットとして発売している。
面白いのは、この潮流と並行して、二代目ソアラやポルシェ959など、車種によっては内容をフルディテールとしていることで(前述のRX-7の通常版はエンジン付き、アルシオーネもエンジンなしながらディスプレイキットが通常版だった)、こうした性格づけには使い分けがあった訳である。
少々前置きが長くなってしまったが、そんな訳でタミヤの911ターボ・フラットノーズは1987年にスナップキットとして発売された。エンジンなしのプロポーションモデルだったが、タミヤらしく迫力のあるボディに、彫りの深いシャシーや、バスタブ式ながら必要充分な内容の揃ったインテリアなどを持つ、傑作キットとして仕上がっている。
このフラットノーズと基本を共用するキットとしては、追って発売された911スピードスターがあったが、それからおよそ18年後の2005年に突如登場したのが、フラットノーズのボディを通常の930ボディに替えた911ターボ’88であった。おそらくその背景には、この世代の911がネオヒストリックとしての評価を確立させてきたことがあったと思われる。
ただし、基本パーツはフラットノーズと同じであるため、インテリアのゴージャスな電動パワーシートといったパーツがそのままになっている、という注意点も存在する。また、シャシーや内装などはほぼスナップのままだが、新造されたボディ周りはそうではない、という部分も注意が必要だ(もちろんキットはスナップ式とは謳っていない)。現代のキットらしくミラー鏡面などにメタルインレットが付属するのもありがたいところ。
元となったフラットノーズはスピードスターとともに、以前にスポット再販が行われているが、基本的には絶版のままである。また、この911ターボ’88のために新造されたパーツをごく一部流用するかたちで、グループ4マシーンであるポルシェ934もキット化されている。こちらは当然ながらコックピットやシャシーは新規パーツとなっており、前輪のステアも可能だ。