モータースポーツ活動における知見を取り入れた「12R」
ついに、ロードスター最強モデル「マツダスピリットレーシング ロードスター12(いちにー)R」の実態が明らかになった。マツダが東京オートサロン2025で発表した。
カムシャフト、シリンダーヘッド、ピストン、エキゾーストマニホールドを専用設計したSKYACTIV 2.0Lエンジンの最高出力は200ps。アルミ製のタワーバーなど車体にも手を加えた。
スーパー耐久シリーズに参戦する、マツダスピリットレーシングのモータースポーツ活動における知見を量産車に組み込んだ形だ。価格は700万円代後半。限定200台で、2025年に予約を開始し販売は年内。この他にも、量販モデル「マツダスピリットレーシング ロードスター」は500万円台を予定している。
ここで気になるのは、次期ロードスター(NE)についてだ。ロードスターの歴史を振り返ると、初代NA、2代目NB、3代目NCそれぞれで様々なスペシャルモデルが登場してきたものの、今回の「12R」のような本格的なモータースポーツの現場で培った技術をフル活用する事例はなかった。
なぜならば、80年代から2010年代にかけて、マツダは事実上、本社直轄のモータースポーツ組織を持っていなかったからだ。これはル・マン24時間レースを含む。それが2020年代になり、グラスルーツからスーパー耐久シリーズまでを総括的にカバーする本社直結戦略へと移行し、それが商品としてユーザーに直結する第1弾が「12R」となる。
そう考えると、次期ロードスター(NE)もモータースポーツの場で基本技術を磨くことになるのだろうか?この点について、マツダ側は否定も肯定もしない。というより、現時点でNEの姿が明確になっているとは言い切れないのだろう。
また以前、筆者がロードスターの歴代主査の3人に「NEが目指す姿」をお聞きしたところ、「EVという選択肢はあり得る」という回答があった。マツダは今、社内に「eマツダ」というEV開発を専門に行う組織を数百人体制で敷き、グローバルで変動するEVシフトの地盤固めを進めているところだ。
その中に、NEのEV化が含まれているかどうか、マツダ外部からは知る由もない。マツダの毛籠勝弘社長は今回の会見で「電動化が進むカーボンニュートラル時代においても、マツダはエンジン開発を諦めない」と力強く宣言した。果たして、NEはいつ、どのような形で世に出るのか。その行方を見守りたい。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。