
日本国内でのディーラー展開を積極的に進めているBYD が、ミドルサイズSUV の「シーライオン7」を導入した。SUV らしいユーティリティの高さに加え、BEV ならではの走りの質感と、戦略的な価格設定にも注目だ。
BYDの今後の躍進を担う重要なモデル
日本に上陸して以降、BYDは中型SUVの「アット3」、小型車の「ドルフィン」、スポーツセダンの「シール」を導入してきた。この3月末までに日本で4000台あまりが販売され、街でもちらほらBYD車を見かけるようになってきたところだが、本来の実力はぜんぜんそんなものじゃない。2024年の世界販売台数は427万台まで数字を伸ばし、もはや日産やホンダを超えて6位まで登りつめたのだから恐れ入る。
【画像32枚】BYDのクロスオーバーSUV「シーライオン7」のフォトギャラリーを見る

低めたられた全高により、スタイリッシュなクーペSUVのデザインが特徴。リアゲートにはダックテール型のスポイラーが備わる。
年初の事業計画の発表では、最新鋭の運転支援システム「天神之眼」の標準装備化や、わずか5分間の充電で400km走行できる新技術のことも明らかにされたばかりだ。そんなBYDの日本導入第4弾として、海洋シリーズのフラッグシップクロスオーバーSUVとなる「シーライオン7」が発売された。その車名はアシカを意味し、「7」は車格を表している。
プラットフォームはシールと同じく、BYDならではのリン酸鉄リチウムイオン電池を用いたブレードバッテリーをフロア下に敷き詰めて強固な骨格を実現した「CTB=セル・トゥ・ボディ」と呼ぶ構造を採用。シールに通じるスポーティでエレガントな海洋シリーズにSUVの力強さを付与した容姿はスタイリッシュだ。

コクピットには15.6インチの回転式タッチスクリーンをメインとしたインフォテイメントシステムを装備。新たな機能として、スマートフォン等からドアの施錠や解錠、さらにシステムONといった様々な操作を行なうことが可能だ。
ラインナップは駆動方式の違いのみの構成で、見た目や装備の差も小さく、価格はAWDが572万円、RWDが495万円となっているが、この数字がいかにリーズナブルであるか次からの解説でご理解いただけることだろう。

リアのラゲッジスペースは、標準状態で500Lの容量を確保。60:40の分割可倒式シートを倒せば、広大な荷室が出現する。フロントにも58Lの収納スペースが備わる。
車両重量はAWDが110kg重く、パワートレインには、いずれもリアに最高出力が230kWで最大トルクが380Nmの同期モーターが、さらにAWDのフロントには同160kWと310Nmを発生する誘導モーターが搭載されている。
0→100km/h加速タイムの公表値は、RWDが6.7秒、AWDは4.5秒と、RWDもなかなかだが、AWDはさらに速い。実際にも発進や再加速時にはAWDのほうが瞬発力があり、加速フィールもずっと力強い。気になる一充電航続距離は、AWDが540km、RWDが590kmと十分に確保されている。

一充電での航続距離はRWDで590㎞、AWDで540kmを実現。AWDモデルのタイヤはミシュランのパイロットスポーツEVが装着されている。
足まわりは入力に応じて減衰力が変わる可変ダンピングアブソーバーが標準装備される。AWDとRWDでは、タイヤとホイールのサイズとタイヤ銘柄と、ブレーキキャリパーの色が異なる。タイヤサイズはAWDが1インチ大きく、前後で同じ幅なのに対し、RWDはリアが太くされている。
ドライブフィールもRWDは回頭感が軽やかで、アクセルを踏むとリアから押し出してくれる感覚があり、いかにも後輪駆動らしい走りを楽しめるのに対し、AWDは軽快ながら重厚な走り味で、より操縦安定性も高い。どちらにもそれぞれのよさがある。
いずれも乗り心地にシールで感じられたような硬さもなく、フラット感のある走りとともに、オンザレール感覚の正確なハンドリングを実現しているのは、可変ダンピングアブソーバーやダブルピニオン式電動パワステも効いてのことに違いない。
広大なパノラマルーフとフラットな床面を持つブラック基調の車内には、インパネ中央にBYDならではの縦横自在の大画面ディスプレイが配されていて、最大1500Wの給電も可能なほか、車内で本格的なカラオケまで楽しめる。
耐久性にも配慮した上質なナッパレザーを用いたシートの触感や着座感も申し分ない。フロント3面の防音・熱線吸収ガラスにより極めて高い静寂性までも実現している。このようにこれほど魅力的な内容で、この価格。BYDの躍進の理由がうかがいしれるだろう。