

























ミラフィオーリ工場は年間10万台の増産体制に
去る2025年5月、ル・ボランWebではフィアットの現行型4代目「500」に待望のハイブリッドモデルが追加される情報をお伝えした。その続報が、ついにイタリア本社から届いた。生産の舞台となるのは、500の聖地とも言うべきトリノ・ミラフィオーリ工場。11月からの生産開始が正式にアナウンスされると共に、「500ハイブリッド」の姿を捉えた数々の写真も公開された。EVの「500e」とは一味違う、新たな生命が吹き込まれた500ハイブリッドの全貌に迫る。
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約束は果たされた。500がミラフィオーリに帰還
2025年5月に当サイトで報じた通り、第4世代フィアット500に、待望の内燃エンジン搭載モデル「500ハイブリッド」が加わるというニュースは、世界中のファンを歓喜させた。これまでEVである「500e」のみのラインナップだった現行500に、より多くのユーザーに門戸を開く選択肢が生まれるからだ。その際、生産は歴史あるトリノのミラフィオーリ工場で行われ、5月12日には試作1号車がラインオフしたことをお伝えしたが、今回その計画がより具体的に、そして公式なものとして発表された。
フィアットを擁するステランティスは、2025年11月よりミラフィオーリ工場内の「カロッツェリエ」と呼ばれる車体製造ラインで、新型500ハイブリッドの量産を正式に開始すると発表。まずは年内に5000台の生産を目標に掲げている。
これはフィアットブランドにとって、そしてイタリアの自動車産業にとって、極めて象徴的な出来事だ。何を隠そう、このミラフィオーリ工場こそが、歴史的な2代目500(ヌォーヴァ・チンクエチェント)が1957年に産声を上げた場所なのである。
フィアットブランドのCEOであり、ステランティスのグローバルCMOでもあるオリビエ・フランソワ氏は、今回の決定を次のように語っている。
「500ハイブリッドをミラフィオーリに戻すという約束を、守ることができました。これは、お客様と未来に賭けることを選んだ、献身的なチームによって推進された勝利なのです」
この言葉からは、今回の決定が単なる生産計画の見直しではなく、ブランドの魂をそのルーツへと回帰させるという、強い意志の表れであることがうかがえる。
今回の500ハイブリッドの生産移管は、ミラフィオーリ工場そのものの未来にとっても大きな意味を持つ。フィアットはこの計画を皮切りに、トリノ工場の生産能力を年間10万台規模で増強することを目指している。これは、工場の活性化はもちろん、トリノという都市、そしてイタリアの産業サプライチェーン全体に対する力強い信頼のメッセージに他ならない。
EVへのシフトが加速する現代において、あえてハイブリッドモデルをブランドの象徴的な工場で生産するという決断。それは、エネルギー転換の過渡期におけるユーザーの多様なニーズに応えつつ、イタリアが誇る「ものづくり」の伝統と革新を両立させていくという、フィアットの現実的かつ戦略的な姿勢を示している。
「イタリア製」にこだわったパワートレインと、選べる3つのボディ
改めて、今回発表された500ハイブリッドのスペックを確認しておこう。心臓部には、定評のある「FireFly」系の1.0L直列3気筒エンジンに、マイルドハイブリッドシステムを組み合わせる。5月の記事で触れた通り、トランスミッションには6速MTも用意されることが、今回の公式発表でも明言された。エンジンからトランスミッションに至るまで、すべてが「メイド・イン・イタリー」であることも誇らしげに語られている。
ボディタイプは、EVの500eと同様に3種類が用意される。最もベーシックな「ハッチバック」、観音開きのリアドアを備え利便性を高めた「3+1」、そして開放感あふれる「カブリオ」だ。アイコニックなデザインはそのままに、ライフスタイルに合わせて選べる選択肢の広さも、500の大きな魅力であり続けるだろう。
EV時代に生まれた現行500が、そのルーツであるミラフィオーリの地で、新たにハイブリッドという心臓を得て走り出す。それは、伝統と未来、デザインと実用性、そしてイタリアの情熱とグローバルな視点とが、見事に融合した結果と言えるだろう。
日本への導入についても、期待はますます高まるばかりだ。ル・ボランWebでは、引き続きこの魅力的なコンパクトカーの動向を追い、新たな情報が入り次第、読者の皆様にお届けしていく。