
ポルシェとファンの絆が生んだ、70台の特別な911
ポルシェは、世界最大のオーナーズクラブである「ポルシェクラブ・オブ・アメリカ(PCA)」の創立70周年を記念する、特別な限定モデル「911クラブクーペ」を発表した。このモデルは、長年にわたるポルシェと熱心なファンコミュニティとの固い絆を象徴するものであり、クラブの伝統に敬意を表した数々の専用装備が与えられている。生産台数はわずか70台で、米国とカナダの市場でのみ販売される予定である。
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ドライバーを魅了するピュアな仕様
この記念すべきモデルのベースとなったのは、純粋なドライビングプレジャーを追求する「911カレラT」である。心臓部には最高出力388psを発生する水平対向6気筒エンジンを搭載し、トランスミッションはウォールナット製のシフトレバーを備えた6速MTのみという、徹底したドライバーズオリエンテッドな構成が採用された。さらに、標準のカレラモデルより車高を10mm低めたPASMスポーツサスペンションや、ポルシェ・トルク・ベクタリング(PTV)を伴う機械式リミテッドスリップデフといった、パフォーマンスを最大限に引き出すための装備が惜しみなく投入されている。
この「911クラブクーペ」のワールドプレミアの舞台となったのは、毎年PCAが主催する「ポルシェ・パレード」である。これはブランドを祝うために全米各地で1週間にわたって開催される祭典であり、PCA会員やブランドの愛好家が情熱を分かち合う重要なイベントだ。
ポルシェカーズ・ノースアメリカのティモ・レッシュCEOは、
「PCAメンバーの情熱は、自動車業界全体においても際立っています。彼らが築き上げてきたコミュニティと興奮は唯一無二のものであり、その70周年を祝う特別なモデルを製作できることは、我々にとって大きな名誉です」
と語り、このモデルに込められた特別な想いを強調した。
歴史を受け継ぐ専用色「ショーラーブルーメタリック」
エクステリアデザインは、このモデルの特別さを雄弁に物語る。ボディカラーには、ペイント・トゥ・サンプル(PTS)による「ショーラーブルーメタリック」が採用された。この色は、2015年に登場したPCAクラブクーペの第2弾で用いられた「クラブブルー」を現代的に再解釈した新色であり、2023年初頭からスタイルポルシェ、エクスクルーシブマニュファクチャー、そしてPCAが密に連携し、幾度もの議論を重ねて生み出された特別な色調である。
さらに、赤いアクセントが施されたスポーツデザインフロントフェイシアや、サテンブラックとブリリアントシルバーで仕上げられた20/21インチのRSスパイダーホイールが、そのスポーティな佇まいを一層引き締めている。ドアにはブリリアントシルバーの「Club Coupe」ロゴ、リアには同色の「911」デカール、そしてグリルにはPCAのシグネチャーカラーであるガーズレッドのインレイが施され、クラブへのオマージュを表現。通常はバナジウムグレーとなるドアミラーもボディ同色に塗装され、特別なカラーリングの美しさを際立たせている。フロントグリルに輝く「70 year PCA」の専用バッジは、この車が受け継ぐ輝かしい伝統を静かに主張する。
ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャーが手掛けた内装
室内空間もまた、エクステリアに劣らず特別なあつらえとなっている。ドアを開けると、PCAの特別な書体で「Porsche Club of America」と刻まれたイルミネーション付きドアシルが乗り手を出迎える。インテリアはブラックレザーを基調としながら、スピードブルーとガーズレッドのステッチが随所に施され、シートベルトやステアリングの12時位置のマーカーもガーズレッドで統一されている。センターコンソールリッドにはPCAの70周年記念ロゴがエンボス加工され、ダッシュボードには「Club Coupe」のロゴが配されるなど、ポルシェエクスクルーシブマニュファクチャーによる丹念な仕事が随所に光る。
さらに、オプションとして人気の装備をまとめた拡張パッケージも用意される。これには、PCA 70周年を記念した特別なパターンのタータンファブリック製シートセンターや、ガーズレッドのレザーシートリリースプルループが含まれる。また、オーナーズマニュアルを収めるレザーウォレットや、ボディ同色に塗装された車両キーと専用のレザーポーチにも、スピードブルーのステッチとクラブクーペのロゴが施され、所有する喜びを細部に至るまで演出している。
この特別な体験を完全なものにするため、ポルシェデザインは「911クラブクーペ」のオーナーのためだけに、「クロノグラフ1 – 911クラブクーペ」を製作した。スイスのゾロトゥルンで手作りされるこの限定タイムピースは、車両からインスピレーションを得たデザインが特徴だ。サファイアクリスタルのケースバックからは、車両のホイールデザインを模したローターを眺めることができ、その中央にはモノクロのポルシェクレストが鎮座する。この時計は、PCAの70年にわたる豊かな歴史をオーナーの手首の上で刻み続ける、究極の付属品だと言えるだろう。