コラム

世界最速!? ランボルギーニのワンメイクレース「スーパートロフェオ」が富士で開催!「テメラリオ」へのスイッチは2027年度に決定

スーパートロフェオに用いられる車両は現在、ウラカン スーパートロフェオEVO2。2026年シーズンもウラカンで競うことになる。
ランボルギーニオーナーが観戦や応援のために愛車のファイティングブルで富士スピードウェイに。
ペースカーは、最新のPHEVとなるウルスSEだ。
梅雨は明けていないにもかかわらず気温は軽く30度オーバー。路面温度も非常に気になるところだ。
スーパートロフェオでは現在タイヤはハンコックのワンメイクとなる。
レース終了後にチーム関係者や家族が集まり、表彰式が開催される。
中国やインドネシアなど、ファミリーで応援・観戦を楽しんでいる姿が多く見受けられた。
プロ、プロアマ、アマ、ランボルギーニカップ、それぞれの上位入賞者が集まって記念撮影。
ラウンジでは、ランボルギーニの最新アパレルなども販売されている。
スーパートロフェオの参戦車両やレース内容について解説をおこなってくれるガレージツアー。
スーパートロフェオを一緒に盛り上げ、レースの冠にもなっている、ロジェ・デュブイ。最新モデルを実際に手にすることもできる。
ラウンジでは、午前中は軽食、そして昼時にはランチと、つねに食事やドリンクが提供される。
ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏に、スーパートロフェオの現在についてお話を伺った。
ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏(右)とランボルギーニ ジャパンディレクターのパオロ・サルトーリ氏。
スーパートロフェオの第3戦となる富士には、23台がエントリー。
イタリアからシェフを帯同して振る舞われるイタリア料理は、スーパートロフェオが始まって以来、ずっと受け継がれている。
スーパートロフェオに用いられる車両は現在、ウラカン スーパートロフェオEVO2。2026年シーズンもウラカンで競うことになる。

ランボルギーニAPACディレクターが語る「スーパートロフェオ」の現在と未来

2009年に世界最速のワンメイクレースとして欧州でスタートしたランボルギーニのジェントルマンレース「スーパートロフェオ」は、その3年後にアジアシリーズ、4年後に北米シリーズが開始されるに至り、参加ドライバーのスキルも向上している。コロナ禍で一時中断していた時期もあったが、11年目のシーズンとなるスーパートロフェオ アジアの第3戦が、2025年6月27日~29日に富士スピードウェイにて開催された。そこで、スーパートロフェオ アジアの現在と今後の展開について、ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏に直接お話を伺った。

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アジアシリーズには19歳から72歳までがエントリー

──スーパートロフェオ アジアシリーズがはじまった2012年以降、オルドス(中国)やズーハイ(中国)でのレースウィークを取材した経験があるが、開催国の参加者が圧倒的に多い印象であった。それは当時の富士や鈴鹿で開催されたスーパートロフェオでも同じで、日本からの参加チームが多かったように記憶している。それが現在ではバランスよくアジア各国からエントリーしているようだ。アジアシリーズではどのような国から、どんな人たちが参戦しているのだろうか。

フランチェスコ・スカルダオーニ氏(以下フランチェスコ、敬称略):スーパートロフェオ アジアシリーズは現在、60%がアマチュア、40%がプロのドライバーです。元々ジェントルマンドライバーに、ランボルギーニでレースを経験してもらうことからスーパートロフェオは始まりました。

ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏に、スーパートロフェオの現在についてお話を伺った。

ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏に、スーパートロフェオの現在についてお話を伺った。

モータースポーツ文化という観点から見ると、アジアの中では日本は大変成熟しているマーケットだと思っているので、われわれも特に大切に思っています。今シーズンももちろん日本からの参戦者もいますが、そのほかにタイ、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、韓国、中国、シンガポール、台湾といった国と地域からエントリーしています。また、年齢層もとても幅広いのが特徴です。台湾やシンガポールからだと、19歳や20歳の若いドライバーがエントリーしていますが、最高齢は、香港からエントリーした72歳のドライバーです。

今シーズンの第3戦となる富士では、23台が出場しています。シリーズを通しての出走台数の平均は、21~22台くらいでしょうか。われわれとしては、20~25台くらいがベストな規模感だと考えています。その台数だとそれぞれのチームをわれわれも丁寧にケアすることができますし、参戦ドライバーも心から楽しんでもらえるのではないかと考えています。

──アジアシリーズが始まった頃より、ドライバーのスキルが上がっているように思います。もともとジェントルマンドライバーをターゲットにしたスーパートロフェオですが、いまや敷居が高くなったのではないでしょうか?

フランチェスコ:スーパートロフェオは基本的には二人でペアを組んで参戦するのですが、プロ、プロ−アマチュア、アマチュアの3つのクラスがありました。そこに数年前からランボルギーニカップというクラスを設けています。このクラスは、スーパートロフェオに初めて参戦するという初心者の方のためにつくられたものです。

スーパートロフェオに出場するには?

──これからスーパートロフェオに参戦したいという人は、どのような手順を踏んで参戦できるのでしょうか?

フランチェスコ:まずはFIAのライセンスを取得することが必要となります。もし、このライセンスを持っていないという人は、ランボルギーニのプログラムでも取得することはできます。

ランボルギーニには、いくつかのドライビングプログラムがあります。そのうちの一つの「ランボルギーニ アカデミア」は、参加者のスキル向上に合わせて、マーク1、マーク2、マーク3という3つのレベルのレーシングトレーニングがあります。この最後のステップでは、トロフェオのレースカーを実際にドライブして、プロのインストラクターからドライビングについて教わり、ライセンスを取得することになります。

ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏(右)とランボルギーニ ジャパンディレクターのパオロ・サルトーリ氏。

ランボルギーニAPACディレクターのフランチェスコ・スカルダオーニ氏(右)とランボルギーニ ジャパンディレクターのパオロ・サルトーリ氏。

ライセンス取得後は、参戦車両を購入し、パートナーとチームを見つけて参戦することになります。チームのなかにはディーラーのサポートを受けたチームもあり、また独自で作るチームもあります。参戦車両も購入ではなくてレンタルというケースもあります。

スーパートロフェオ車両はいつテメラリオにスイッチする?

──その参戦車両ですが、すでに市販車としてのウラカンはテメラリオにスイッチしています。テメラリオのスーパートロフェオ車両が登場するのはいつでしょうか?

フランチェスコ:現在使用されているウラカン スーパートロフェオEVO2は、来年の2026年度まで使用されます。スーパートロフェオに限っては、2027年からテメラリオにスイッチする予定です。同じく、GT3に関しても今年2025シーズンはウラカンですが、こちらは来年の2026年からスーパートロフェオに先んじてテメラリオにスイッチされます。テメラリオGT3に関しては、もう間もなく公式に発表する予定です。

──市販モデルのテメラリオはハイブリッドモデルです。スーパートロフェオでもハイブリッドになるのでしょうか?

スーパートロフェオとGT3だと、GT3の方がもちろんプロ寄りの車両になります。スーパートロフェオは、ジェントルマンドライバーをメインに考えていることと、高圧のハイブリッドシステムをチームが管理しなければならなくなるため、現在とはまったく異なるスキルと設備が必要となることから、いまのところはハイブリッドになるプランはありません。

スーパートロフェオは2026年度も日本で必ず開催される

──これからインジェでの第4戦、セパンでの第5戦、さらには本国イタリア・ミサノでのファイナルが控えているなか、少々気が早い話かもしれませんが、来年度のスーパートロフェオ アジアは、開催地など、どのようになる予定でしょうか。

スーパートロフェオの第3戦となる富士には、23台がエントリー。

スーパートロフェオの第3戦となる富士には、23台がエントリー。

フランチェスコ:ちょうどいま、来年度のスケジュールについて協議しているところです。日本ではかならず1戦開催することは考慮に入れています。いまのところ、今回と同じく富士がベストかと考えていますが、鈴鹿もまだ視野に入れているところです。どちらも美しく、F1も開催された象徴的なコースなので、非常に悩ましいですね。鈴鹿の方が速度域は高くなると思うのですが、富士はバランスがいいコースだと思っています。日本で山といえば富士山ですよね。コースもアップダウンがあって、そのあたりもいいバランスなのかなと思っています。

ただ、かつて同シーズンで鈴鹿と富士で開催されたこともありましたが、日本で2戦開催することはありません。日本はランボルギーニにとって非常に重要なマーケットで、ディーラーもとてもサポートしてくれていますが、ほかのアジア各国でもモータースポーツのカルチャーが浸透してきており、そうした国でもスーパートロフェオの存在感を示していきたいと思っているのがその理由です。

オーストラリアはもちろん、韓国からも参戦しています。中国もモータースポーツがかなり成熟してきていて参戦ドライバーもチームもあるので上海も重要だと考えてます。マレーシアはまだモータースポーツが成熟しているとは言えないかもしれませんが、今シーズン同様にセパンで開催したいと考えています。また、現在の開催国以外でもインドネシアやタイなどからも開催してほしいという要望が届いていることもあって、一つの国で1レース開催が現実的と言えるでしょう。

また、ラウンジではイタリアから直接招いたシェフによる料理が振る舞われるなど、これだけのラグジュアリーな環境でのレース、そしてホスピタリティを考えると、参戦費用はかなり抑えられていると思います。テメラリオにスイッチしても、参戦のランニングコストは現在より少し上がるかもしれませんが同程度にしたいと考えています。

イタリアからシェフを帯同して振る舞われるイタリア料理は、スーパートロフェオが始まって以来、ずっと受け継がれている。

イタリアからシェフを帯同して振る舞われるイタリア料理は、スーパートロフェオが始まって以来、ずっと受け継がれている。

──スーパートロフェオは、週末の土曜日と日曜日にそれぞれ1回ずつ、50分間のセミ耐久レースで競われる。ラウンジでは、レースに参戦しているドライバーだけでなく、家族でレースウィークを楽しんでいるグループも多く見受けられた。私と同じテーブルで観戦していたグループは、インドネシアからファミリーで来日して家族が参戦しているチームを応援していた。宿泊はもちろん富士スピードウェイホテルとのこと。このほか、スーパートロフェオ開催日に合わせて、正規ディーラー主催で富士スピードウェイへ愛車のランボルギーニで行くツーリング&観戦ツアーというイベントも行われているようだ。いまやスーパートロフェオはレースの参戦者だけでなくその家族、そしてランボルギーニを所有しているオーナーやファンも含めて、ランボルギーニの世界観に浸ることができるイベントとして定着しているようである。

【画像16枚】サーキットの熱狂から豪華ラウンジまで。「スーパートロフェオ」富士ラウンドの舞台裏を見る

フォト=西山佳比古/Y. Nishiyama、Automobili Lamborghini S.p.A.

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