
「純粋」な走りを生み出すエンジニアリング
マセラティが2025年7月10日に発表した新型「MCプーラ」は、パワーとエネルギーの純粋な象徴である。その心臓部には、マセラティが誇る自社製エンジン「ネットゥーノ」が搭載され、そのパフォーマンスは徹底した軽量化と洗練されたエンジニアリングによって支えられている。このスーパーカーの走りの本質は、単なるスペックシートの数字を超えた、テクノロジーと情熱の結晶なのである。
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クラス最高のパワーウェイトレシオと、そのパワーの源泉
MCプーラのパフォーマンスを語る上で欠かせないのが、クラス最高を誇るパワーウェイトレシオだ。クーペモデルの車両重量は1500kg未満の1475kgに抑えられ、最高出力630psのパワーと組み合わせることで、1psあたりが負担する重量はわずか2.33kgとなる。この驚異的な軽さは、車体のシェル全体にカーボンファイバーおよび複合素材を採用することで達成された。しかし、軽量化のために快適性が犠牲にされることはない。パフォーマンスとラグジュアリーを両立させるという、マセラティならではのグランドツーリングスタイルが貫かれているのだ。
その強大なパワーの源泉である「ネットゥーノ」エンジンは、「MC20」と共に誕生した技術革新の結晶であり、国際特許を取得した最先端技術によって生み出された。その仕様は、90度のバンク角を持つV型6気筒、排気量3.0Lのツインターボで、スーパースポーツカーの定番であるドライサンプ方式を採用している。最高出力は7500rpmで630ps、最大トルクは3000rpmから5500rpmの広い範囲で720Nmを発生させる。1Lあたり210psという比出力は、このエンジンの効率の高さを物語っている。
このエンジンの核となるのが、F1由来の「プレチャンバー燃焼システム」である。これはマセラティが特許を取得し、世界で初めて公道用車両に搭載した技術だ。このシステムは、中央のスパークプラグと通常の燃焼室の間に設けられた小型の燃焼室「プレチャンバー」と、それをサポートする「サイドスパークプラグ」、そして間接噴射と直接噴射を組み合わせた「デュアル燃料噴射システム」という3つの主要要素から構成される。これにより、ネットゥーノは高効率でレスポンスに優れ、かつエモーショナルな走りを実現するエンジンとなっているのだ。
ダラーラと磨いた“見えない”空力とカーボンモノコック
このエンジンの核となるのが、F1由来の「プレチャンバー燃焼システム」である。これはマセラティが特許を取得し、世界で初めて公道用車両に搭載した技術だ。このシステムは、中央のスパークプラグと通常の燃焼室の間に設けられた小型の燃焼室「プレチャンバー」と、それをサポートする「サイドスパークプラグ」、そして間接噴射と直接噴射を組み合わせた「デュアル燃料噴射システム」という3つの主要要素から構成される。これにより、ネットゥーノは高効率でレスポンスに優れ、かつエモーショナルな走りを実現するエンジンとなっているのだ。
そのパワーを路面に伝えるシャシーとエアロダイナミクスもまた、徹底的に磨き上げられている。MCプーラの空力性能は、レーシングカーの設計で名高いダラーラ社との協力のもと、2000時間を超える風洞実験と1000回以上のCFD(数値流体力学)シミュレーションによって開発された。
設計の基本は、車体を「上部の美しさを重視した領域」と「下部の機能性に特化した領域」に分けるという考え方だ。ボンネットやサイドパネルのエアインテークはボディに溶け込むようにデザインされ、目立ったエアロパーツは控えめなリアスポイラーのみである。一方で、車体下部は完全に機能性が優先される。フロントフロアには渦流を発生させるボルテックスジェネレーターが組み込まれ、リアには大型のディフューザーが装備されるなど、見えない部分で最大の空力効率を引き出す工夫が凝らされている。
この強靭かつ軽量なプラットフォームの基礎となるのが、ダラーラ社との長年の協業で生まれたカーボンファイバー製モノコック構造だ。このモノコックは、クーペとコンバーチブルの両仕様に対応できるよう最初から一つのコンセプトで設計されており、カーボンの積層の種類や配置を調整することで、各モデルに求められる剛性や軽さを実現している。
ドライバーは、センターコンソールに配置されたセレクターによって、5つのドライブモードを意のままに操ることができる。日常の快適性を重視した「GTモード」から、安全性を最優先する「WETモード」、スポーティな「SPORTモード」、そしてトラクションコントロールの介入をほぼ解除し最も過激な体験を提供する「CORSAモード」まで、走行シーンに応じて車の性格を劇的に変化させることが可能だ。
MCプーラのパフォーマンスは、革新的なエンジン、軽量な車体、そして磨き抜かれた空力性能という、エンジニアリングの粋が結集して初めて完成するのである。
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