クルマの性能以上に“音”の世界も熱かった
ヤングタイマー世代のクルマに欠かせないもののひとつにカーオーディオがあるのではないだろうか? クルマ技術の発展とともに日進月歩の進化を遂げた、なつかしのカーオーディオを振り返ってみたいと思う。
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移動のための娯楽が、栄華を極めたひとつの時代
移動のための手段として開発された自動車だが、単なる「手段」として以上に、いかに移動中の長い時間を快適に過ごすか、という点でも進化を遂げてきた。クーラーは言うに及ばず、運転中の情報収集のためラジオを装備してみたり……そしてヤングタイマー車の世代になって、一気に進化が加速したのが、カーオーディオに代表されるAV機器たちだ。
かつてはラジオに始まり、8トラックといった機器もあったが、一般向けとして広く受け入れられたのはカセットテープだ。メディアとして安価だったこと、そして録音環境の容易さが普及のきっかけとなった。
日本初の車載カセットデッキは1968年にクラリオンから発売された。そこから日本のAVメーカー各社が追随。続々と車載カセットデッキが販売され、1970年代半ばくらいには一般に広く普及することとなる。

1968年にクラリオンが発売した日本初のカセットカーステレオデッキ。それまでの車内の娯楽といえばラジオで、このカセットデッキの誕生が、運転中に好きな音楽を聴くという新たな娯楽を生んだ。
なお当時の純正車載オーディオといえばラジオが関の山で、自分で好みのブランドのカセットデッキや後付けのスピーカーを買ってカスタムする、というのが一般的だった。パイオニアの「ロンサムカーボーイ」や、クラリオンの「シティ・コネクション」といった当時の人気ブランドを覚えている人は少なくないだろう。
そしてカセットテープに遅れて登場したのがCD(コンパクト・ディスク)だ。それまでのカセットやレコードとは違い、音声をデジタル信号で記録し、音質に優れる利点があった。発表当初こそメディアそのものの値段が高く、普及に苦戦したが、ポータブルプレーヤーなどの普及もあって、1980年代後半くらいから、カセットと同程度の市民権を得るに至った。
カーオーディオにおいてもCDはいち早く取り入れられ、1984年にはパイオニアが世界初の車載CDプレーヤーをリリース。さらに複数枚のCDを自動で入れ替えて再生できる「CDチェンジャー」の登場により、車載オーディオメディアはカセットテープとCDの2大体制となった。

複数枚のCDを自動的に入れ替えて再生できるCDチェンジャー。お気に入りのアルバムCDを何枚もセットして、気分に合わせて曲を再生できた。
そして1980~1990年代にかけては、日本の経済成長と呼応するようにカーオーディオのシステム化・多機能化が進み、家庭用オーディオ顔負けの音響性能や、派手な演出やイルミネーションによるデラックス化が進んだ。まさに車載カーオーディオの全盛期といえる時代だろう。
現在ではカーナビゲーションシステムの登場や、専用のメディアを必要としないデジタルオーディオの登場などによって、以前のような多機能・独自機能は必要なくなっている。極論を言ってしまえばスマートフォンひとつあれば事足りてしまうのだ。
だがヤングタイマー車オーナーであるなら、ぜひとも車内のオーディオも「当時仕様」にこだわってカスタムしてみるのも一興というもの。なつかしのオーディオで、懐かしの曲を流しながらドライブすれば、このクルマが走っていた当時の匂いがふわりと漂ってくることだろう。
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