歴代市販SUVで最速のタイムを樹立
2025年7月10~13日に開催された英国が誇るモータースポーツの祭典「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」。その象徴であるヒルクライムコースで、1台のSUVが新たな歴史を刻んだ。ベントレーが放つラインアップの頂点、新型「ベンテイガ スピード」である。
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ウェットコンディションをもろともしない圧倒的なシャシー性能
開催に先立ち行われた走行会では、折からの降雨で部分的にウェットという難しいコンディションに見舞われた。しかし、ベンテイガ スピードはこのヒルクライムをわずか55.8秒で駆け抜けた。このタイムは、これまでドライコンディションで記録されていた従来のW12エンジン搭載ベンテイガ スピードの記録を1秒近くも更新する驚異的なものであった。さらに、過去にこのコースを走行した全ての市販内燃エンジン(ICE)搭載SUVの公式記録を塗り替えるという快挙も成し遂げたのである。ステアリングを握ったのは、ベントレーの車両開発を熟知するスペシャリスト、アンディ・マーソン氏。彼は最高速度130mph(約209km/h)に達する果敢な走りで、このSUVが持つポテンシャルの高さを世界に証明した。

この記録樹立の原動力となったのが、新型ベンテイガ スピードの心臓部に搭載される新開発の4.0L V8ツインターボエンジンだ。同じV8を搭載する高性能モデル「ベンテイガS」の最高出力555ps/最大トルク770Nmというスペックを起点としながら、ターボチャージャーの改良、ECUの専用チューニング、そして冷却性能の強化といった多岐にわたる改良を実施。その結果、最高出力は95ps増しの650ps、最大トルクは80Nm増しの850Nmという、まさしく「スピード」の名にふさわしい圧倒的な数値を手に入れた。
この強大なパワーによって0-60mph(約96km/h)加速3.4秒、最高速度310km/hという、スーパーカーの領域に踏み込むパフォーマンスを実現する。ベンテイガSの0-100km/h加速4.5秒、最高速度290km/hというスペックと比較しても、その非凡さがお分かりいただけるだろう。
しかし、グッドウッドでの記録が証明したのは、単なる直線性能の高さだけではない。むしろ、その巨体を意のままに操るシャシー性能の進化こそ、新型ベンテイガ スピードの真骨頂である。このクルマのために再キャリブレーションされた「SPORT」モードでは、ステアリング応答性、ロードホールディング性能、ドライバーとの一体感などの飛躍的な向上が図られたほか、サスペンションの減衰特性は従来のベンテイガと比べて15%剛性を強化、コーナリングでよりマシンのポテンシャルを引き出せるようになったという。
さらにオプションのカーボンセラミックブレーキを組み合わせることで、ESC(横滑り防止装置)の介入をより緩和する「ESCダイナミック」を設定。これにより、状況に応じてダイナミックなドリフトアングルやパワーオン時のオーバーステアといった、エキサイティングな走りが可能となっている。
後輪を操舵する「オールホイールステアリング」システムも装備され、低中速域では後輪を前輪と逆位相に操舵し、回転半径を縮小させることで、タイトなコーナーが続くヒルクライムコースや市街地での驚異的な俊敏性を実現しつつ、高速走行時には後輪を前輪と同位相に操舵し、盤石の安定性をもたらす。今回の走行がウェットコンディションであったにもかかわらず、新記録を樹立した秘訣はこういったシャシー性能による恩恵が非常に大きい。
ベントレーにおける真のパフォーマンスフラッグシップ
エクステリアデザインもまた、フラッグシップとしての特別な存在感を放つ。ベンテイガSがブラック基調でアグレッシブさを表現するのに対し、スピードはブライトウェア(クロームパーツ)に深みのあるダークティント処理を施し、洗練されたスポーティネスを演出。フロントドアの「Speed」バッジや、専用デザインの22インチホイール(オプションで初の23インチも設定)が、その特別な血統を静かに物語る。
新型ベンテイガ スピードは、単なるパワーアップモデルではない。エンジン、シャシー、電子制御、そしてデザインのすべてが、最高のドライビング体験というひとつの目標に向かって完璧に調和した、真のパフォーマンスフラッグシップである。グッドウッドの丘で打ち立てられた記録は、その総合性能の一端を示したに過ぎないのである。
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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。