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トヨタ「カローラ クロス」が内外装デザインを刷新し、全体をブラッシュアップして登場した。いまやカローラシリーズで一番人気を誇るモデルだけあって、その改良ポイントは多岐にわたり、驚きの進化を遂げていた。モータージャーナリスト渡辺慎太郎氏がリポートする。
【画像33枚】日本初の「光る矢印」って何だ? 新型「カローラ クロス」、注目のディテールを写真で見る
国民車から多様化の時代へ、カローラブランドの現在地。
トヨタ・カローラは、来年で生誕60周年を迎えるという。日本の国民車や大衆車としてトヨタの屋台骨を担ってきたものの、時代と共にそれはプリウスやヤリスなどと共有することになる。それでも、150以上の国と地域でシリーズ累計5500万台、2024年だけでも166万台以上が販売されているそうだ。そして今年から、カローラシリーズは(GRカローラを除いて)ハイブリッドのみとなり、電動化の促進にも寄与している。
現在はセダンの「カローラ」、ハッチバックの「カローラ スポーツ」、ステーションワゴンの「カローラ ツーリング」、スポーティ仕様の「GRカローラ」、そして今回試乗したSUVの「カローラ クロス」の計5モデルを展開している。正直に告白すると、普段はカローラを意識することなんてまったくなかったので、いつの間にかこんなにバリエーションが増えていて驚いてしまった。セダン/ハッチバック/ワゴン/SUVを揃える銘柄なんて、トヨタの中でもカローラだけではないだろうか。クラウンは近いところにいるかもしれないけど。
そして、カローラシリーズの中でもっとも売れているのがこのカローラ クロスだということも知らなかった。SUV人気はカローラにも及んでいて、おかげで顧客の年齢層の若年化も図れているという。ひと昔前の「営業車」「おっさんのクルマ」みたいなイメージは、もはやほとんど存在しなくなっているようだ。
2025年モデルには色々と手が加えられている。フロントはボンネット下を走るセンターランプやグラデーションデザインのグリルなどにより、従来型よりも洗練された印象に様変わりしている。“シグナルロードプロジェクション”は、夜間に車両が曲がる際、その方向の路面に専用のライトがシェブロン形状を投影するというもの。日本初の試みである。デジタルライトの普及は進んでいて、中には画像が照射できるくらいの解像度のものもある。クルマと外部とのコミュニケーションツールとして、灯火類はとても有益だと思うのだけれど、日本では例によって法規が普及の足を引っ張っているらしい。このライトはきちんと法規の範囲内での実用化に漕ぎ着けたそうだ。
カローラのイメージを覆す走り。しかしトヨタへのさらなる要望も。
パワートレインに変更はなく、シャシー関係ではサスペンションの締結剛性の向上が行われている。サスペンションの締結部にはそれぞれに締付トルク値が指定されている。このトルク値を上げると同時にばらつきを管理することで、ステアリングの手応えがしっかりしたり、クルマの動きがよりリニアになったりする。これを実現するには当然のことながら生産工場の協力が必要となるけれど、トヨタ自動車東日本の岩手工場がそれを任されている。
都内を試乗して、操縦性には締結剛性向上の効果が現れていることを確認できたが、何より乗り心地がとてもよかった。上質感さえ感じられるほどで、失礼ながらちょっと意外でもあった。カローラの過去のイメージを引きずっていたからだ。
いっぽうで、アクセルペダルを強く踏み込むと、それまではとても静かだった室内に「うぉーん」とハイブリッド特有のエンジン音が入ってくる。コストやらなんやらで、できることが限られていると察しが付くけれど、「カローラならこれくらいでいいだろう」ともしトヨタが思っているのだとしたら、それはちょっと残念である。
個人的には、カローラもそろそろクラウンくらいのドラスティックな変貌を遂げてもいい時期に来ているのではないかと思っている。ちなみにトヨタ車の中で、グリルにトヨタマークが入っていないのはクラウンとセンチュリー、そしてカローラだけなのだ。
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【SPECIFICATION】トヨタ・カローラ クロス Z(2WD)
■車両本体価格(税込)=3,430,000円
■全長×全幅×全高=4455×1825×1620mm
■ホイールベース=2640mm
■トレッド=前:1570mm、後:1580mm
■車両重量=1400kg
■エンジン形式/種類=2ZR-FXE/直列4気筒DOHC 16V
■総排気量=1797cc
■最高出力=98ps(72kW)/5200rpm
■最大トルク=142Nm(14.5kg-m)/3600rpm
■モーター型式/種類=1VM/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:95ps(70kW)
■モーター最大トルク=前:185Nm(18.9kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■燃料タンク容量=36L(レギュラー)
■燃費(WLTC)=26.4km/L
■トランスミッション形式=電気式無断変速機
■サスペンション形式=前:ストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前&後:225/50R18
問い合わせ先:トヨタ自動車 TEL:0800700-7700