
シャシーを一新しつつもキープコンセプト
前回・第51回からまたも間を空けての復活となるが、連載第52回はトヨタの6代目コロナ(T130型系)のカタログをご覧いただこう。
【画像26枚】安全の次を見据えた殿下コロナのカタログを細部まで味わう!
「リフトバック」も6代目で復活
同じトヨタのカローラやクラウンが現在にもその名を受け継がれている一方、コロナは長く親しまれたファミリーセダンの名称でありながらすでに消滅してしまっている。コロナの初代モデルは1957年に登場したもので、トヨペット・マスターのボディなどを利用しつつ生まれたセダンであり、小型タクシー市場に向けて開発された車種であった。
2代目以降はファミリーカーとしての性格を徐々に強め、またその過程で日産のブルーバードと熾烈な販売競争(2車種の頭文字を取って「BC戦争」などと呼ばれた)を繰り広げたが、これも今となっては遠い過去の話である。3代目では国産初の2ドア・ハードトップを加えたこと、また3代目から4代目へのモデルチェンジの過程でマークII(コロナ・マークII)という派生車種が生まれたことも、記憶すべき事柄であろう。
本題のT130型系コロナは、1978年9月に登場している。このときブランドネームがそれまでの「トヨペット」から「トヨタ」に変わっているのだが、見たところは先代のキープコンセプト・モデル的性格が強く、ボディサイズやスタイリングは5代目から大きく変わってはいない。SAE規格の角型4灯ライトの採用や、樹脂でフルカバーされた衝撃吸収バンパーの導入が目を引くところである。
ただしプラットフォームは新設計されており、サスペンションも前ダブルウィッシュボーン/後ろリーフから、前ストラット/後ろ4リンクへと一新された。ブレーキは全車フロントがディスクとなり、上級グレードでは4輪ディスクも採用、またパワーステアリングもオプションとして用意。エンジンは1.6L OHVの12T-U、1.8L OHVが13T-Uと3T-EU(EFI)の2種、そして2LはOHCの21R-UとDOHCの18R-GEUで、合計5種類があった。
ボディ形式は4ドア・セダンを基本とし(先代にあった2ドア・セダンは消滅)、2ドア・ハードトップと5ドア・バンをラインナップ。なお、バンのみリアサスペンションはリーフとなる。さらにモデルチェンジ翌月の1978年10月には5ドア・ハッチバックを「リフトバック」の名で追加。これは3代目で登場後、4、5代目では途絶えていたボディ形式であった。1982年1月にはフルモデルチェンジで7代目・T140型系へと交代している。

カリフォルニアのライセンスプレートとドアミラーが、国内でのコロナとは全く異なる雰囲気を醸し出す表紙。撮影地はベバリーヒルズであろうか。遠くに見える、当時でも古めかしいクルマは、ロールス・ロイス(シルバークラウド)かベントレー(S2コンチネンタル)のフライングスパーと思われる。
実直さが売りのコロナらしいカタログながら、アメリカンな雰囲気も
さて、ここでご覧いただいているカタログは、このT130型系コロナの登場初期のもの。「このカタログの内容は昭和53年9月現在のもの」の注記や、「5309」のコード標記があるため、まさにデビュー直後、5ドアが加わるまでのごく短期間のものであると思われる。サイズは214×297mm(縦×横)、ページ数は表紙を含めて全16ページ。
カタログの特徴は寸法から分かる通り横長の版型であることだが、それだけでなく、一番変わっているのは横開きではなく上下に開くかたちであることだろう。つまり、壁掛け式カレンダーのような作りである。印象としては「見づらい」という一言につきるもので、わざわざこの作りとした意図はよくわからない。
肝心の内容はと言えば、安心感や落ち着きを前面に出したもので、このあたりはやはり先代の”安全コロナ”(安全性を重視したその内容から5代目コロナにつけられた通称)から受け継いだ性格と言えるだろう。メカニズムの優秀性を派手に謳うこともなく、一新したサスペンションなどをもう少しアピールした方がよいのでは、と心配になるほどだ。その反面、表紙を含めて撮影の一部はアメリカで行われており、地味になりすぎないよう配慮されていることが窺える。
この世代のコロナは、テレビドラマ『太陽にほえろ!』で殿下(小野寺昭演じる島刑事)の足として活躍することが多かったところから”殿下コロナ”の愛称もあるとのことだが、個人的にはリフトバック(5ドア)のイメージが強い。セールス的にはあまり成功しなかったボディ形式ということだが、薄ベージュの5ドアをよく見かけたような記憶がある。家の近所にいたか、通っていた小学校の駐車場に置かれていたかの、大方どちらかだろう。