コラム

【徹底分析】なぜ「軽」は新車の4割を占めるのか? 歴史と産業構造から読み解く、2025年の軽自動車文化と進化の行方【自動車業界の研究】

COPEN Cero 〔DAIHATSU〕
DELICA MINI 〔MITSUBISHI〕
Jimny〔SUZUKI〕
MITSUBISHI ELEVANCE CONCEPTと加藤社長、未来デリ丸(JMS2025)
MOVE 〔DAIHATSU〕
N-BOX(FF)ファッションスタイル〔Honda〕
SAKURA〔Nissan〕
SPACIA〔SUZUKI〕
Tanto CUSTOM & Tanto〔DAIHATSU〕
軽自動車のBrand Originality〔ABeam Consulting〕
ロウ付け作業〔DAIHATSU〕
ミラクルオープンドア〔DAIHATSU〕
ミラ イース 〔DAIHATSU〕
マルチユースフラップ〔SUZUKI〕
ピタ駐ミラー〔Honda〕
スズライトSS〔SUZUKI〕
アルト〔SUZUKI〕

日本が誇る軽自動車の魅力と価値

今回は、日本独自の規格として発展してきた軽自動車が自動車産業を支え、日本ならではの自動車文化を築き、多くの自動車メーカーが現在も力を入れて様々な魅力あるモデルが販売されていることについて、その人気の理由や産業側面での重要性などを最新モデルも取り上げて分析してみます。選出したモデルは、販売台数が多く競合が激しい「スーパーハイトワゴン」の中からトップ3を競う、ホンダのN-BOX、スズキのスペーシア、ダイハツのタント、伝統の「ハッチバック」モデルとして長年競い合うスズキのアルトとダイハツのミラ イース、そして、ブランドオリジナリティに溢れるスズキのジムニー、ダイハツのコペン、三菱のデリカミニ、日産のサクラをご紹介します。

【画像18枚】日本の軽自動車の歴史と繁栄を紐解く

各メーカーによって絶え間なく進化し続ける

軽自動車は日本の自動車産業を代表するひとつで基本は日本のユーザーのために企画~開発~生産~販売されていて、扱いやすいボディサイズや痒いところにも手の届く各種機能を提供してくれる装備などが魅力的です。

軽自動車にラインアップされているボディタイプを大まかに分類すると、「スーパーハイトワゴン」、「ハイトワゴン」、「ハッチバック」、「SUV」、「クロスカントリー」、「スポーツ」、「バン」、「トラック」と豊富で様々な選択肢からモデルを選ぶことができます。

軽自動車の価値、その良さやメリットを挙げると、近年の自動車は世界中で人類の体格拡大によるとされている居住空間(室内寸法)の拡大からボディサイズも拡大を続け日本も同様ですが、ボディサイズに規格から制約のある軽自動車は狭い道でもスイスイ走れて機動性や利便性が高いです。

ボディサイズが小さいということは車両重量も軽量になるため、軽自動車規格から660cc以下という小排気量エンジンの出力(馬力)やトルクでもきちんと走ることができ燃費も良く、登録車に比較して車両価格や維持費、税金等の面から経済性にも優れます。そして、「スーパーハイトワゴン」モデル等は、登録車(小型自動車)と比較しても驚くほどの室内スペースを持ち、前席も後席も十分に快適で心地良い空間や広い荷室を提供してくれます。

さらに、ターボ等の過給エンジンを搭載するモデルでは、厚いトルクによって軽自動車規格最大である定員4名の乗車時や重量物の積載時、或いはスポーツドライビング時にも不足のない動力性能が提供されます。

そして、軽自動車の課題であるボディサイズが小さいことによる衝突時のクラッシャブルゾーン(衝撃を吸収するために潰すボディのエリア)を確保できないという安全面の課題や絶対的パワーの不足といった面でも各メーカーの絶え間ない研究開発によって進化を続けています。

MOVE 〔DAIHATSU〕

MOVE 〔DAIHATSU〕

軽自動車の歴史

軽自動車は、今から75年以上前の1949年に小型自動車から軽自動車の規格が生まれ、排気量やサイズを中心に経緯を追っていくと、1950年に軽3輪及び軽4輪として規格が「4サイクルが排気量350cc以下、2サイクルが200cc以下、長さ3.0m以下、幅1.3m以下、高さ2.0m以下」と定められ、戦後間もない当初の時代は2輪車や3輪車(いわゆるオート3輪の軽)が中心であったそうです。

1951年には「4サイクルが排気量360cc以下、2サイクルが240cc以下」に規格が改定され、名車として名高い○○〇360といった現代でも聞き覚えのあるモデルが生み出されています。

1955年には4サイクルと2サイクルの規格が「排気量360cc以下」に統一され、1976年に「排気量550cc以下、長さ3.2m以下、幅1.4m以下」へと拡大、1990年に「排気量660cc以下、長さ3.3m以下」、1998年にはボディサイズが「長さ3.4m以下、幅1.48m以下」へと改訂され、現在(2025年)の軽自動車規格は「排気量660cc以下、長さ3.4m以下、幅1.48m以下、高さ2.0m以下、貨物積載量350kg以下、定員4名以下」に至っています。

日本が戦後の復興から経済の発展を遂げる上で、軽自動車はなくてはならない存在として税制面(軽自動車税や自動車重量税)他でも優遇され、規格によって制約がある中においても、とても便利で魅力的でユーザーにとって嬉しい数々のモデルをラインアップしてきました。

スズライトSS〔SUZUKI〕

スズライトSS〔SUZUKI〕

国内自動車販売の概況と軽自動車のボリューム

国内における新車全体(登録車+軽自動車)の2025年の1月~9月(四半期の区切り)の販売(登録)台数は346万5408台で、認証不正問題等の影響があった前年同期よりも5.0%ほど増え、その内36.4%ほどの126万1498台を軽自動車が占め、同じく9.1%ほど前年同期よりも増えています。[※本掲載におけるデータは、一般社団法人 日本自動車販売協会連合会、一般社団法人 全国軽自動車協会連合会、日本自動車輸入組合のデータから]

つまり、新車が10台販売されるうちの4台に迫る割合を軽自動車が占めていて、特に数の上における軽自動車の存在感は大きく、自動車メーカー各社も力を入れています。メーカー別では、2025年の1月~9月に新車全体で55万6014台を販売したスズキ(トヨタに次いで全体2位)が軽自動車のシェアはトップで34.8%ほど(43万9114台)、続いてダイハツが29.6%ほど(37万3136台)、3位にホンダが17.1%ほど(21万5216台)と続きます。

国内の自動車ブランド(4輪)を大別すると、登録車が主体のレクサス、トヨタ、日産、マツダ、スバル、光岡。軽自動車が主体のスズキ、ダイハツ。およそ登録車と軽自動車が半々のホンダ(45.1%ほどが軽自動車)、三菱自動車(56.7%ほどが軽自動車)。貨物車(登録車)が主体のいすゞ、日野、三菱ふそう、UDトラックスに分かれます。

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橋爪一仁

AUTHOR

自動車4社を経てアビームコンサルティング。企画業務を中心にCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等、自動車産業の幅広い経験をベースに現在は業界研究を中心に活動。特にCASEとエンジンが専門で日本車とドイツ車が得意領域。

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