コラム

「条件が厳しくなるほど面白い」軽自動車開発者が語った“いびつな車体”を“正しく”走らせるための戦い【渡辺慎太郎のツベコベイワセテ その2】《LE VOLANT LAB》

誤解されがちな「自動車評論家と軽自動車」の関係。実は選り好みなんてしません

たまたま、立て続けに軽自動車に乗る機会があった。そのうちの1台は試乗会で、広報部の方に「しんたろーさん軽自動車にも乗るんですね」と意表を突かれたような顔をされた。試乗会の案内をしてくださったのはそちらのほうで、こちらは招かれてもいないのに勝手に試乗会に来たわけではないのだから、そんなことを言われてもちょっと困ってしまう。これでも一応自動車ジャーナリストを生業としているので、普通自動車免許で乗れるクルマならなんだって乗ります。ただ、この1年くらいに自分が書いた原稿をチェックしてみたら、確かに軽自動車について書いたものはわずかしかなかった。

【画像46枚】全幅1.48mの制約の中に詰まった無数の技術。渡辺慎太郎氏が最近試乗した軽自動車3台のディテールをチェック

全長2.8m、全幅1mからの進化。規格変更の歴史は「戦い」の軌跡

あらためてお伝えしておきたいのは、どのクルマに試乗して原稿を書くかは、たいていの場合は自分の自由意志ではなく媒体の編集者が決める。少なくとも自分の場合、お仕事の依頼が来たら基本的には車種の選り好みなどせずに喜んでお引き受けしています。だからもし「アイツは(値段の)高いクルマばっかり乗っている」とか「高級車しか乗らないらしい」なんてことになっているんだとしたら、これは媒体による一種の印象操作のようなものなので、くれぐれも真に受けないでくださいね。個人的には、軽自動車こそ日本人にしか絶対に作れない日本車の代表だと確信しているし、だからもっとたくさんの軽自動車とそれを作ってきたエンジニアのみなさんとふれ合う機会を持ちたいと願っている。

最近試乗した軽自動車その2:三菱デリカミニ ※本文中の開発者談話とは関係ありません。

そもそも「軽自動車」が誕生したのは昭和24年(1949年)で、その際の規格は全長2.8m、全幅1m、全高2m、排気量150cc(4サイクル)/100cc(2サイクル)。車輪数の規定がなく(4輪でも3輪でも2輪でもOK)、全幅がわずか1mだったり、排気量をエンジンの工程数によって2種類設けたりするあたりに時代を感じてしまう。その後何度も改変されて現行の規格に落ち着いたのは平成10年(1998年)で、全長3.4m以下、全幅1.48m以下、全高2m以下、排気量660cc以下と定められている。軽自動車の進化と変遷は、いわばこの規格とメーカーの壮絶な戦いの軌跡でもある。

「ボディは穴だらけですよ」開発者を苦悩させた、あまりに過酷な条件

以前、某メーカーの実験部のエンジニアがこんなことを漏らしていた。

「いまの軽自動車は、物理的にも自動車工学的にも本来ならあり得ないディメンションなんです」

フォト=郡 大二郎/D. Kori(デリカミニ)、篠原晃一/K. Shinohara(ルークス)、竹内耕太/K. Takeuchi(ムーヴ)

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