メルセデス・ベンツSL/W113「パゴダ」:快適性と安全性を高次元で融合させたモダン・クラシックの傑作
筆者がヤナセに勤務していた頃、メルセデス・ベンツのクラシックカーを愛する支店長は週末の展示会で、あえて最新モデルの中に半世紀前の280SL/W113を並べていた。その粋な姿は「古いクルマでも、きちんとメンテナンスすれば、今なおこんなに魅力的に乗れる」と無言で語っていた。ジャニス・ジョプリンをも魅了し、アジアンテイストな「パゴダ」ルーフを持つこの名車は、なぜ現在も高額で取引され、「完璧なスポーツカー」と呼ばれるのか。その真価に迫る。
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「2台のSL」を1台に融合。新世代スポーツカー、230SLの誕生
1963年3月、ジュネーブモーターショーでメルセデス・ベンツが発表したのが2代目の230SL/W113だった。1957年から1963年まで生産された300SLロードスター/W198と1955年から1963年まで生産された190SL/W121。この性格の異なる2台の後継車として登場したW113は、いわば「2台のSLの役割を1台にまとめた」新世代の2シータースポーツだった。
300SLのような硬派な高性能だけを追求するのではなく、190SLが持っていたエレガンスや快適性も融合。スポーツカーでありながら長距離ツーリングにも適した新しいSLの方向性を示したのである。

メルセデス・ベンツは1963年のジュネーブモーターショーで230SL/W113を発表。写真は230SL/W113に群がる観客。
そして現在、230SL、250SL、280SLはいずれも世界中のコレクターが憧れるクラシックカーとなっている。2022/2023年のClassic Data市場調査では、最高コンディションとされるグレード1の230SLが12万8000ユーロ(約2050万円)、280SLが15万6000ユーロ(約2500万円)と評価されていた。なぜ、これほどまでに人気が高いのか。その答えは、W113が「美しいだけのクラシックカー」ではないところにある。
異彩を放つ「パゴダ」ルーフ。天才デザイナーが仕掛けた機能美