デトロイトが再びモータウンに!?
2019 年2月にFCAがジープブランド車の製造工場を米国ミシガン州デトロイトに新たに建設すると発表したが、続いて3月にはゼネラルモーターズ(GM)もデトロイト北部のオリオン・タウンシップの工場に3億ドル(約330億円)を投資して電気自動車(EV)の生産を行なうと発表。かつてモータウン(モータータウン=自動車の街)と呼ばれながら、1980 年代以降はビッグスリーの工場の縮小・移転で財政破綻にまで追い込まれたデトロイトだが、ここにきてその名が再び注目されつつある。
FCAの新工場はデトロイトでは28年ぶりの完成車工場建設となり、他のミシガン州の工場増強も含め45億ドルを投じるとしている。それに対してGMのEV工場への投資規模は大きくないが、の2018年11月には北米5工場の閉鎖と、約1万5000人の人員削減を発表していたGMのカムバック宣言だけに、現地でも歓迎されているようだ。
こうした自動車メーカーの動きは、ドナルド・トランプ大統領の発言によるところが大きいことは容易に想像できる。2018年11月にGMが工場閉鎖と人員削減を発表した際、トランプ大統領は強い不満を表明。国内製造業の拡大と雇用確保を目指す政策に反するとして、かつてオバマ政権時代に税金で救済されながら工場閉鎖を進めたGMを非難していた。
米国では保守層に限らず同じ思いを抱く人も少なくなかったようだが、それに応えるようにFCAが工場建設を正式発表し、トヨタ自動車もデトロイトではないがケンタッキー工場をはじめ5カ所の工場に7億5000万ドルを投じて米国生産を増強する計画を発表。トヨタは2021年までに米国に100億ドルを投資する中期計画を進めているが、その金額を130億ドルへと拡大する意向も明らかにしている。
こうした他社の動きを見てGMも一転、米国内生産の増強計画を打ち出したわけだが、EV工場の3億ドルを含め、米国での生産に18億ドルを投資する計画も明らかにしている。デトロイトが再び1960-1970年代の活気を取り戻すのは難しいだろうが、投資にともなう雇用増が地域の経済的自立に貢献することはたしかだろう。2020年からはデトロイト・モーターショーも6月の開催へと移行するが、そのときに何かしらの動きの変化が見られることになりそうだ。