コンパクトボディに高性能な3L直6ツインターボを積むBMW M2コンペティション。一方、レクサスRC Fは高性能なV8エンジンを搭載し、ドイツ勢に真正面から挑む国産スポーツクーペとして貴重な1台だ。ここではドライビングプレジャーを軸に両車を考察してみた。
成り立ちはほとんど同じ。ホンキへの誘いかけも巧み
大きすぎないボディサイズのボンネット下に、超ハイパフォーマンスエンジンを押し込める。駆動方式は4WDではなく、FRにこだわる。両モデルとも、成り立ちは同じ。さらにいえるのは、絶滅が危惧されるモデルでもある。
BMWは、M2を含む2シリーズクーペの先行きに対してウワサはあっても明言を避けている。衆知の通り、ベースとなる1シリーズはFFに生まれ変わってしまった。Z4のプラットフォームがベースになるのでは……と、期待はするものの果たしてどうか。トヨタは、ISのマイナーチェンジを実施しRCも出番待ちということなのかもしれない。ただ、大排気量の自然吸気エンジンの延命をどこまで図れるのかは不明だ。
だからこそ、アクセルのひと踏みごとの印象を心に刻みつけたくなる。M2のアクセルを踏み込むと、3Lの直列6気筒エンジンは3500rpmにかけて力強さを一気に立ち上げる。スペックでは2350rpmで最大トルクを発揮するが体感は異なる。自ずとドライバーの気持ちも熱くなる。
そして、アクセルを踏み続ければレーシーな高周波サウンドを響かせながらレブリミットの7600rpmまでブン回せる。ツインターボであっても、パワーはエンジン回転数で稼ぐことはMモデルの約束事。そしてまた、このパフォーマンスがBMWのモータースポーツ活動で蓄積されたノウハウが投入されていることも。
RCシリーズでは別格扱いのFは、5LのV型8気筒エンジンを搭載する。アクセルを踏むと、エンジン回転数の上昇とパワー炸裂の度合いが完全に一致。このリニアな特性こそ自然吸気エンジンの魅力であり、それこそ“踏み続けてみろ”とドライバーを叱咤するかのようだ。
ただ、エンジン制御をパフォーマンス優先のモードにすると公道では扱いにくくなるのはM2もRC Fも同じだ。路面の荒れにより右足が少しでも動くと、レスポンスが鋭いだけにトルク変動が大きくなりかねない。そのため、モードはM2ならエフィシェント、RCFならノーマルがいい。それでも、十分な刺激が得られる。
サスペンションは引き締まった設定となるものの、可変制御されないM2でも乗り心地にガマンを強いられることはない。RC Fなら、ダンパー減衰力の可変領域が選択できノーマルにすれば洗練度が高い走りに結びつく。
日常から日常、つまり公道からサーキットまで何の制約を受けずに道が通じている。そして、両モデルともコースをホンキで攻めることが可能なのだ。そうした誘いかけの巧みさについては、試乗車の場合CFRP製パーツを多用するRCFが勝っていた。