ジャーマンプレミアム御三家のアッパーミドルワゴンは、時にはビジネス、時にはプライベートの“アシ”として活躍。しかもそのチョイスが周囲から羨望の的になることも。ここではそんなマルチユースな3台を同時に走らせ、あらためてそれぞれのキャラクターを明らかにしてみる。
排気量を意識させないE200の力強さ
一時期、ドイツ御三家はブランドの方向性を修正していたように思える。メルセデス・ベンツはスポーティに、BMWはラグジャリーに、アウディは、そのままだったけど……。そんな変化が、ブランドの価値を一段と高めたことは間違いない。ただ、近年は本来の価値を再び強化しつつある。
MERCEDES-BEMZ E200 STATIONWAGON SPORT
メルセデス・ベンツは、ラグジュアリーであり優れた実用性を備えることがE200を走らせると明らかになる。ザラついた路面を通過する際に聞こえるゴーッというロードノイズは同行のライバルと比べて音量が低く、2020年9月のマイナーチェンジにより耳元でザワつく印象も改善された。ワゴンで問題になりがちな、リアから聞こえる排気系のこもり音とも無縁だ。このあたりの快適さは、メルセデスならではと納得できる。
エンジンは、1.5Lの直列4気筒ターボを搭載する。アッパーミドルのワゴンに1.5Lエンジンでは頼りなさそうだが、日常的な場面では満足度が高い。48V電気システムを採用するマイルドハイブリッドを組み合わせているからだ。低回転域では、ジェネレーター(発電機)を兼ねるモーターが最大トルク160Nm(クランクシャフトへの作用値)を発揮してベルト駆動によりエンジンをアシスト。発進時はターボによる過給効果を得る前に力強さが立ち上がり、アクセル操作に即応して排気量を意識させない加速に入る。
しかも、ターボは低回転域をモーターに任せ中回転域にかけて過給効果を立ち上げるので、3000rpm台に乗るまでの力強さの盛り上がり感が心地よい。とはいうものの、そのままアクセルを踏み続けても高回転域でパワーが伸びるわけではない。加速のスポーティさを期待するなら、E300以上のグレードを選べばいい。
相変わらず、ステアリングの切れ味とサスペンションの動きはスムーズだ。ノーズが軽いので、コーナー進入時の応答性は想像以上に軽快。コーナリング中は、路面のうねりを通過してもロール感を適度に抑えながらフラットな姿勢が保たれるあたりも好印象だ。
BMW 540i xDrive TOURING M SPORT
同じ場面で、540iはロールが認められボディが少しだけ縦揺れする。おやっ、BMWらしくないと判断するのは早計だ。抑制された姿勢変化は、むしろ操作に対してクルマが忠実に反応していることを示す実感となるからだ。一時期、ラグジュアリーな走りも重視したことで得た新たな価値といえる。もちろん、ボディの余計な動きが残ることはない。
コーナーの立ち上がりでは、アクセルをわずかに踏みエンジン回転数が2000rpm台であっても加速時は音量こそ低いが誘いかけるような快音が聞こえてくる。そのため、もっとアクセルを踏み込んでみたくなる。実際にそうすると、3Lの直列6気筒ターボはDレンジのままでもタコメーターの針が6500rpmから始まるゼブラゾーンに突入する。
その間、パワーはギッシリ詰まっている。メーターにパワーを表示するとスペックの通りに5500rpmで340psに達し、その先で落ち込むことがない。高回転域でパワーが伸びるのも、当然というわけだ。そして、アクセルを戻すとクゥーンと心地良く余韻を奏でる。