SLS AMGの後継モデルとして2014年に登場した初代AMG GTは、ハイパフォーマンスカーとして一定の地位を築いた。2代目となる新型AMG GTクーペは2+2シートの採用などコンセプトを一新し、着実な進化を遂げているのだ。
驚いたのはボディの凄まじいほどの剛性感
おそらく多くの人が、従来より俄然、エレガントな佇まいになったと感じるのではないだろうか。新たに2+2のシートレイアウトを用意する新型メルセデスAMGGTクーペは、そのために全長が従来より180mm伸ばされている。おかげで長いノーズが目立ちマッチョ感も強かった先代よりも格段に均整の取れたプロポーションになり、大人びた印象がもたらされるようになったのである。
後席は推奨身長150cmまでと広くはないが、人を乗せるにせよ手荷物を放り込んでおくにせよ、重宝することは間違いない。バックレストを倒せば最大675Lもの荷室を得ることもできるなど、実用性は大幅に高まっている。
こうして間口が大幅に広がったわけだが、あるいはそれはストイックさが削がれたと感じられるかもしれない。しかしながら実際に走らせてみれば、誰も不満など述べなくなるはずだ。
日本に上陸したのは、正しくはメルセデスAMG GT63 4マチックク+ クーペ。V型8気筒4Lツインターボユニットは、MHEVすらも組み合わせることなく最高出力585ps、最大トルク800Nmを発生する。
発進させてまず驚かされたのが、アルミスペースフレームにスチール、マグネシウム、CFRPなどを組み合わせたボディの凄まじいほどの剛性感だ。岩から削り出したのかというくらいのガチッと逞しい感触は、サイズアップそしてテールゲートの存在が信じられないほどである。
アクセルペダルをさらに踏み込むと、後輪から押し出すような強いトラクションが感じられる。実はその強大なパワーは9速ギアのAMGスピードシフトMCT、そしてAMG 4マチック+を介して4輪に伝達されている。
察しの良い方ならそろそろ気づく頃だろう。そう、新型の基本骨格は先にAMG銘柄で登場したSLと共有なのだ。
しかしながら走りの感触は両車、大きく異なる。これはよりワイドなタイヤ、リア寄りの駆動力配分、ロック率を強めた電子制御LSDに空力の違いなどによるもので、ありていに言えば一層ピュアスポーツカー度が強められている。
フットワークもまさしくそうで、ターンインはきわめてシャープ。長いノーズが軽やかに狙った方向に吸い込まれていく。アンチロールバーに代わって油圧連関システムを使ったAMGアクティブライドコントロールサスペンションや、後輪操舵の助けも得て、旋回スピードは速く、しかも安定感は抜群。2トンに迫る車重がウソのようだ。
目を瞠るのは後輪の横方向の位置決めの正確さで、おかげで絶大な安心感の下、アクセルを入れていける。そうやって踏んでいくとまるで背後から蹴飛ばされたかのような加速の渦に放り込まれるのだが、4WDのメリットで、そこに危うさは皆無という具合である。
気づくと、どんどんペースが上がっていくが、クルマはそれに余裕で応えてくれる。故にまたも右足に力が入る……まさに貪るように没頭してしまう魅力が、その走りには宿っているのだ。
間口が広がったと書いたが、その走りは同時に鋭さをも増している新しいメルセデスAMG GTクーペ。価格は2750万円に跳ね上がり設定は左ハンドルのみと、この点では間口がむしろ狭まってしまったのがツラいところである。
【SPECIFICATION】メルセデスAMG GT 63 4マチック+クーペ
■車両本体価格(税込)=27,500,000円
■全長×全幅×全高=4730×1985×1355mm
■ホイールベース=2700mm
■トレッド=前:1680、後:1685mm
■車両重量=1940kg
■エンジン形式/種類=177/V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=83.0×92.0mm
■圧縮比=8.6
■総排気量=3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2500-5000rpm
■燃料タンク容量=70L(プレミアム)
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前:5リンク/コイル、後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:295/30R21、後:305/30R21
問い合わせ先=メルセデス・ベンツ日本 TEL0120-190-610