
年々進化を続ける、軽井沢の自動車の祭典
2025年9月6日から2日間にわたり、「軽井沢モーターギャザリング2025 Autumn」が開催された。最新モデルの試乗会から希少なクラシックカー展示、本格的なオークションまで多彩な企画が催されるなか、ハイライトは「2000年以前のドイツ車」をテーマとしたコンクール・デレガンス。集まった珠玉の名車たちとオーナーの情熱から、成熟した日本の自動車文化が見えてきた。
【画像74枚】晩夏の軽井沢に新旧の名車が集結!「軽井沢モーターギャザリング」の熱気をギャラリーで一気に見る
最新EVからディフェンダーまで、国内外の注目モデルが集結
わが国を代表する高級避暑地、長野・軽井沢には日本国内のみならず、今や世界各国から観光客や別荘族が集結しているが、ここ数年は自動車愛好家にとっても注目を集める場所となっているようだ。
JR軽井沢駅前に拡がる巨大ショッピングモール「軽井沢プリンスショッピングプラザ(PSP)ガーデンモール 芝生のひろば」を舞台として、さる2025年9月6(土)~7日(日)、大規模な自動車イベント集合体「軽井沢モーターギャザリング2025 Autumn」が開催された。
この大型イベントは2022年10月に初めて開催され、以後は原則として毎年春と秋に開催。国内外のメーカーやインポーターが出品する各種の環境対応車両をはじめとする、新型車両の展示および試乗会なども行われている。
今回は、もはや常連となったジャガー・ランドローバーから「ディフェンダー」と「レンジローバー」の2台が出展されたほか、BMWの人気SUVモデルが2台。話題のサブコンパクトBEV「インスター」をはじめとするヒョンデの最新BEVも4台が勢ぞろいした。
クルマだけではない、家族で楽しめるライフスタイル提案
また、傘下で運営する超高級会員制サーキットクラブ「MAGARIGAWA CLUB」名義で出展したコーンズ・モーターズは、日本では見られる機会の少ない「ポルシェ911リマインドbyシンガー DLS」を展示し、会場に詰めかけたファンを狂喜させていた。
さらに、国内を代表するクラシックカー/コレクターズカーのスペシャルショップ4店舗の素晴らしい商品車両たちや、関東・甲信越一円の自動車愛好家たちが持ち込んだクラシック/ヤングタイマークラシックカーたちも展示。
そのラインナップは国産車や輸入車問わず、あるいは年代もまちまちで、あたかも毎年2月にパシフィコ横浜にて開催されるクラシックカー・ショー「ノスタルジック2デイズ」の一部が晩夏の軽井沢で再現されたかのような、実に見ごたえのある内容となっていた。
くわえて、アウトドアやペット、ゴルフなど、モビリティを通じたライフスタイル提案なども積極的に行うことにより、回を重ねるごとに自動車ファンのみならず、軽井沢を訪れる家族連れやなど多くの来場者で賑わっているという。
スーパーカー展示に本格オークション、新たな魅力が続々
とはいえ、まだ成長過程にあるイベントということで毎回のように新機軸が盛り込まれ、それがまた新たなファンを喚起しているとのことである。
今年は、まず初日の土曜日に現代のスーパーカーをオーナー諸氏の協力のもと初めて展示。2日目の日曜午後には「BHオークション」社とのコラボ企画として、「トヨタ・ミニエース」や「日産スカイラインGT-R(R32)」、あるいはオートモビリア(自動車周辺グッズ)などを競り合う、本格的なオークションも併催されることになった。
そして、2日間を通じたメイン企画として「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢 2025秋(Concours of Elegance@2025 AUTUMN)」と銘打ったコンクール・デレガンスが、昨年の第1回に引き続いて日曜日に開催された。
テーマは「2000年以前のドイツ車」、珠玉の名車が集う
昨年の「コンクール・オブ・エレガンス@軽井沢」は英国車に対象を絞って行われたが、今回は熱心なル・ボラン読者諸兄のご興味をそそるであろう「2000年以前に生産されたドイツ車」がテーマ。そして当日朝に会場を訪れた筆者は、エントリー車両のレベルの高さに瞠目させられてしまうことになった。
1970~80年代に一世を風靡したBMWおよびBMWアルピナ、ドイツ車の集まりでは定番の空冷ポルシェに、クラシック/ヤングタイマー双方で風格を示すメルセデス・ベンツと、ドイツ車の定番ともいえるモデルながら、その多くが希少かつオリジナル性も高く、しかも良好なコンディションに保たれていたのだ。
一方、老舗人気TV番組「開運なんでも鑑定団」の自動車担当「鑑定士」の中村孝仁さん、カーライフエッセイストの吉田由美さん、ライフスタイルの分野でも第一人者として活躍する九島辰也さん、軽井沢プリンスショッピングプラザ総支配人の清水務さん、軽井沢モーターギャザリングの実質的オーガナイザーである「MOTOTECA」の星野雅弘さん、そして末席に不肖筆者を合わせた6人で編成された「ジュリー(Jury:審査員)」陣の間でも、授与できる賞典の数に対して魅力的な候補があまりにも多かったことから、ジュリーメンバーが会場に揃った直後から悩ましい問題に直面することになる。
「質実剛健」だけではない、ドイツ車の奥深いデザイン性を再発見
この日は、午前中から来場者のオンライン人気投票がスタートするかたわら、われわれジュリー陣も三々五々会場を散策し、それぞれのエントリー車両のオーナーさんたちから、愛車に関する情報や思い入れを伺うことができたのだが、そのインタビューにてエントラントと愛車との間に紡がれたストーリーをお聞きして、入賞車選びはさらに難しい課題となってしまう。
それでも第1位に「BMW3.0CSi」、審査員特別賞に「ポルシェ928S」および「BMWアルピナB7ターボ」、主催者特別賞に「BMW M1」、そしてPSP特別賞に「VWタイプ2ウェストファリア・キャンパー」をなんとか選び出したのだが、この選に漏れてしまった参加車両のなかにも、素晴らしいクルマがたくさんあったことを改めて記しておきたい。
ところで、ドイツ車と言えば「機能最優先」あるいは「質実剛健」というイメージが強く、コンクール・デレガンスに出品されるようなクルマに求められる趣味性という点では、正直なところいささか不利な印象を抱いていた。
ところが、今回久方ぶりに対面したクラシック/ヤングタイマー時代のドイツ車たちのデザインレベルは非常に高く、見応えのあるものであることを再確認。しかも、いずれのクルマにもオーナーの深い「思い」と「物語」が込められていることに深い感銘を受け、日本におけるドイツ車ファンの感度と熟度の高さを、今さらながら実感させられてしまう一日となったのである。