コラム

赤字脱却目指す日産、なぜ今「スポーツモデル」を重視するのか? CEOが語る「ヘリテージ」と「カスタマーファースト」軸の再生戦略

イヴァン・エスピノーサCEO
イヴァン・エスピノーサCEO
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イヴァン・エスピノーサCEO
イヴァン・エスピノーサCEO

「カスタマーファースト」の企業精神を尊重する事業戦略を強調

経営再生計画「Re:Nissan」の真っ只中にいる日産。直近の上期決算では、第2四半期で北米市場の販売が若干持ち直したものの、2219億円の赤字だ。主力の神奈川県追浜工場や日産車体藤沢工場に続いて、横浜本社の売却も決めた。そのほかコスト削減に注力し2026年度末まで5000億円の削減を目指す。こうした厳しい経営状態では、一般的に「趣味材」として位置づけられ販売総量も少なめなスポーツモデルの未来も厳しそうに感じる。

【画像5枚】ジャパンモビリティショー2025で日産の未来について熱く語るイヴァン・エスピノーサCEO

スポーツモデルは「日産のアイコン」

ところが、イヴァン・エスピノーサCEO(最高経営責任者)はスポーツモデルの未来に対して悲観的ではなく、その反対に「日産のアイコン(象徴)として重要」という見解をCEO就任して以来示し続けている。例えば、ジャパンモビリティショー2025のプレスデー(10月29日)に実施した報道陣とのラウンドミーティングでもそうした姿勢は変わらなかった。
ラウンドミーティングに先駆けて、エスピノーサCEOが自ら日産ブース内を報道陣を引き連れて巡る一幕もあった。舞台中央の「エルグランド」について詳しく触れるのは当然だが、「スカイラン400R」と「フェアレディZ」の前では、「こうしたスポーツモデルが、これからの日産にとって極めて大切だ」と強調したのが印象的だった。

ラウンドミーティングでは、モータースポーツに対する質問もあった。具体的には、スーパーGTとフォーミュラEについてだ。エスピノーサCEOは、個人的に両シリーズのファンであり、また企業としても継続が必要だとの考えだ。

イヴァン・エスピノーサCEOその理由として、大きく3点ある。ロイヤルカスタマー(日産のファン)の期待に答えること、量産車へフィードバックする技術開発、そして日産のヘリテージ(歴史)を軸として競争に勝つことの重要性という3点だ。
この「ヘリテージ」は日産が再生する上でブランド戦略としての重要課題だ。つまり、「GT-R」「スカイライン」「フェアレディZ」はヘリテージとして不滅だという。また、過去のインタビュー記事でエスピノーサCEOが個人的な見解として「シルビア」復活の可能性にも触れている。ユーザーの要望にしっかり答える「カスタマーファースト」の企業精神を尊重する事業戦略を強調しているのだ。

ラウンドミーティングでは、Re:Nissanの初期段階がすでに終わり、次のステージに向けて加速する準備が整ったと前向きな姿勢のエスピノーサCEO。日産の「次の一手」を大いに期待したい。 

【画像5枚】ジャパンモビリティショー2025で日産の未来について熱く語るイヴァン・エスピノーサCEO

フォト=桃田健史 K.Momota
桃田健史

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専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。

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