往年のクラシックカーから最新鋭のBEVまで。共に最適解を導き出す、ドイツ発・専業メーカーの矜持
独立系潤滑油メーカーとしては世界最大のFUCHS(フックス)は、2024年よりメルセデス・ベンツと戦略的業務提携を締結している。それは決して、一朝一夕にして成立したものではない。「潤滑という側面から、長年にわたってメルセデス・ベンツを支えてきた証であり、同時に未来への布石だ」と、フックスジャパンの代表取締役社長を務めるルーベン・エブナー(Ruven Ebner)氏は述べる。そんな彼の言葉に耳を傾けながら、メルセデス・ベンツに寄り添うフックスの姿を紐解く。
長年の協業のうえに成り立つ、メルセデス・ベンツとの戦略的業務提携
潤滑油に特化し、専業メーカーとしてまもなく1世紀を迎える。ドイツ・マンハイムに本拠を置く独立系オイルメーカー「FUCHS(フックス)」は、いまや世界中に35以上もの工場と70以上の拠点を展開し、多数のOEMや大口顧客に対してビジネスを手がけるグローバルプレーヤーだ。

メルセデス・ベンツ発祥の地マンハイムで1931年に創業したフックス社。当初はペンシルベニア産のオイルに「PENNA PURA」のブランドを冠し、マンハイムの港にある運送会社へトラックや自転車で配達していた。
その歩みを語るうえで、メルセデス・ベンツとの関係は欠かせない。2024年3月、両社は戦略的業務提携を締結した。さらに2026年9月初頭には、業務提携の延長および提携領域の拡大が発表されている。フックスジャパンの代表取締役 社長、ルーベン・エブナー氏は、今回の発表を心から喜び、誇りに感じていることが伝わる柔和な表情を浮かべ、その背景について教えてくれた。
「物語は2024年から始まったわけではありません。私たちは何十年にもわたってメルセデス・ベンツに対して、ファーストフィル(初期充填)オイルや交換用オイルなどを供給してきました。メルセデス・ベンツの純正ボトルに私たちのロゴがある。それは何十年もの間、築き上げてきた信頼関係の証であると考えています。近年の提携は長年の協業に対する信頼関係を認め合ったひとつの“結果”であり、未来への礎でもあると考えています」
提携という言葉の背後にあるのは、長い時間をかけて積み重ねられた技術と信頼――。その歴史こそが、フックスの現在地を物語っている。
メルセデス・ベンツを支える“テーラーメイド”
メルセデス・ベンツは、多種多様なパワートレインを持つ世界最大規模の自動車メーカーだ。ガソリンやディーゼルを含めた実用的な内燃機関(ICE)から、ハイパフォーマンスなAMGモデル、究極的にはピュアレーシングカーまで。近年はハイブリッドカー(HEV)や電気自動車(BEV)も増えてきた。それぞれ要求性能が異なるオイルに対して、フックスは常に最適なソリューションを追求してきた。
「私はドイツ車全般が好きですが、特にメルセデス・ベンツには強く惹かれています。いつの時代も、信頼性が高く、ハイテクノロジーな機構が詰め込まれている。それが魅力的なデザインに包まれている点も素晴らしいと思います。個人的にはハイパワーなガソリンエンジンが好きですが、メルセデス・ベンツの魅力はハイブリッドカーや電気自動車にも変わらずに宿っています」
ルーベン・エブナー氏は、知見を深める意味を込めて、ガソリン、ディーゼル、そしてBEVと、メルセデス・ベンツ以外を含めて、あえて多様なパワートレインを愛車として選び、試してきた。彼はエンジニアとしての経験を持つマイスターで、過去には防錆剤などの研究開発に携わってきた。機械の成り立ちを理解し、潤滑油の役割を熟知する彼だからこそ、メルセデス・ベンツとの協業に対して揺るぎない自信と、誇りを抱いているようだった。
「エンジンオイルだけではありません。ミッションオイルやディファレンシャルオイルといった駆動系から、金属加工液や防錆剤といった産業用油脂類まで、自動車を構成するオイルばかりか、自動車生産に欠かせない油脂類までを手がけています。BEVであっても、ドライブトレインは存在するし、たとえば電気駆動用フルードなどが必要となります」
全方位的にメルセデス・ベンツの潤滑をつかさどる。これに対して、ルーベン・エブナー氏は「テーラーメイド」と括った。とはいえ、フックスが一方的にベストアンサーを提示するわけではない。各モデル、各機構に応じた専用のオイルを、メルセデス・ベンツと一緒になって共同開発し、供給をしているのだった。
求められる性能を見極め、ともに最適解を導き出す。そこには、長年の協業によって培われた両社の技術と思想が息づいている。
メルセデス・ベンツの思想と重なるクラシック エンジンオイル
ユニークな取り組みとして、ルーベン・エブナー氏がさらに強調したのは、『メルセデス・ベンツ クラシック エンジンオイル』だ。名前の通り、メルセデス・ベンツのクラシック、ヤングクラシックと称される年代のモデルに向けた専用オイルである。エンジン内部の腐食を防ぐだけではなく、古いシール材や往年の金属(合金)との相性を見越して開発された。特に長期間保管されるコレクタブルカーでも始動時の潤滑性を維持し、防錆性に優れるという。
「クラシック エンジンオイルは、決して当時のレシピをそのまま再現したわけではありません。最新の研究開発に基づき、現代の原材料を使って、クラシックカーに相応しい成分配合を追求しました。メルセデス・ベンツが掲げる“クラシックの継承と保存”を、フックスは潤滑の面から支えています」
こうした部分にもフックスとメルセデス・ベンツが貫くテーラーメイドの考え方が宿る。最新鋭のBEVを駆動するために必要なオイルから、往年のクラシックカーまで。彼らはメルセデス・ベンツが歩む1世紀以上の歴史すべてを余すところなく受け止め、最新鋭の技術をもって潤滑しながら、その歴史をなめらかに未来へと受け継がせている。
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