初試乗:フェラーリ・プロサングエ・ハンドリング・スペチアーレ
2026年4月末、フェラーリ初の4ドアモデル「プロサングエ」に、スポーツ性能をさらに際立たせた新仕様「ハンドリング・スペチアーレ(HS)」が追加発表された。日常の使い勝手という美点はそのままに、アクティブ・サスペンションの専用チューンで動的性能を研ぎ澄ませた意欲作だ。はたして、もともと標準車にして完璧だったプロサングエに、この仕様は必要なのか。モータージャーナリストの西川淳氏が、イタリアの聖地バロッコでその真価を試した。
【画像25枚】魔法のサスチューンが巨体を自在に操る。聖地バロッコを駆けるプロサングエ「HS」の雄姿を見る
最初のコーナーで気づいた「明確な違い」
先導するプロドライバーが、コースインするなり結構なペースで走り出した。こちらはフィアット・グランデプントで走って以来、久々のバロッコ・ランゲ・トラックだ。しかも路面はところどころ濡れている。慌てて追いかけた最初のコーナーは、案の定、ちょっとオーバースピード気味だった。
ところが、私の駆る赤いプロサングエは、難なくそこを抜けた。ノーズが向きを変えたあとに、大きな車体が遅れてついてくる感じがない。ステアリングを切ったぶんだけ、クルマ全体がすっと同じ方向へ入っていく。
「あれ、なんか違うな」。最初の連続するコーナーでそう思った。
今回、ステランティスグループのプルービンググラウンドであるバロッコまでやって来て試すことになったのは、プロサングエに新たに設定されたハンドリング・スペチアーレ、略してHSである。
といっても、最高出力を引き上げたような高性能版ではなく、当たり前だけれど、サーキット走行へ用途を絞ったスペシャルでもない。アクティブサスペンションやトランスミッション、そしてサウンドに至るまで制御を磨き込み、プロサングエ本来の快適性や使い勝手を担保したまま、ドライバーとの関係性をもう少しスポーツ方向に濃くしてみよう、という仕様だ。
標準車ですでに完璧。ならば「HS」の意義とは?
正直、乗る前には「そこまで必要だろうか」と思っていた。標準のプロサングエが、すでによくできていたからだ。フェラーリ初の4ドア、4シーターという、いかにも今どきの「フェラーリもSUVを作った」という切り口でこのクルマを理解すると、本質を見誤る。
前軸の後ろに6.5L自然吸気V12を押し込み、後方にギアボックスを置くトランスアクスル方式を採り、前輪を駆動するPTUを組み合わせた。SUVというカテゴリーにフェラーリらしさを加えたのではない。フロントV12フェラーリの世界を、4人で楽しめるところまで広げたクルマ、プロサングエはそう捉えなければならない。
全長5mに迫る大型のSUVスタイルのモデルでありながら、運転すればちゃんとフェラーリだと思わせる。その時点で、相当に欲張った企画を成立させていた。だから標準車で充分に思えたのだ。
巨体がひと回り小さく感じる、魔法のサスチューン
ところが、その考えはバロッコの最初のコーナーでもう揺らいでいた。
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