
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safty Test)
Number 75(SEASON.7):SUVの考え方に一石を投じる結果となった今回「SUVは見かけによらない」を証明
ジャガーFペイスS vs メルセデスAMG GLE43 4マチック・クーペ/Test03:ダブルレーンチェンジ
●テストの「方法」と「狙い」
80km/hでコースに進入、障害物を回避してふたたびもとのレーンに戻るテスト。シャシーの総合性能、ESC(横滑り防止装置)など挙動安定化装置の能力をみる。そして、ドライバーが安心して操作できるかどうかも評価の対象となる。パニックに陥ったドライバーでも正確に操作できなくては、クルマが優れたシャシー性能を持っていても意味がないからだ。
メルセデスAMG GLE 43クーペ vs ジャガー F-PACE S(ダブルレーンチェンジ編)
優雅に走るのはGLEクーペ
MERCEDES-AMG GLE43 COUPE
●操縦安定性:★★★☆
●平均通過速度:64.09km/h(2回平均)
高い重心点とヘビー級の重量車にとってダブルレーンチェンジは過酷なテストだ。安全最優先を実行するメルセデスはどんな工夫を凝らしているのだろうか。ブレーキングで70km/hぐらいまで速度を落とし、左のレーンに急ハンドルを切る。一瞬恐怖を感じたが、急ハンドルを切ると手応えがズシッと重くなる。この重さだと急ハンドルが切れない。しかし、そこがGLEクーペ独特の工夫なのだ。なんとか隣のレーンに移動すると今度はESCが“全員出動”で一気に速度を低下させ、安定性を確保。車重ゆえにあえてアジリティを追わない。スポーティよりも優雅に走る方がGLEクーペには似合いそうだ。
スポーティなキャラクターのFペイス
JAGUAR F-PACE S
●操縦安定性:★★★★☆
●平均通過速度:68.31km/h(2回平均)
FペイスとGLEクーペはやはりコンセプトが異なるSUVだった。GLEクーペとは対照的にFペイスはまるでスポーツカーのように俊敏に安定した走りを披露した。ダブルレーンチェンジの通過速度では約4km/hもGLEクーペよりも速かった。急ハンドルを切って隣のレーンに移動するが、ステアリングの効きはシャープで、ヨーイングとロールの収まりも良かった。ESCはしっかりと介入するが、急ハンドル操作を行なっても手応えが重くなったりしない。SUVにとって最も過酷なダブルレーンチェンジを難なくクリアしたFペイス。まさにジャガー渾身の開発力で完成させたシャシー技術の勝利だと言えるだろう。