その輝かしい履歴でも希少な個体
8月4日、BMWはエルビス・プレスリーの所有していたBMW 507をオリジナルの状態に復元し、8月21日にペブルビーチのコンクールデレガンスへ出展すると発表した。シャシーナンバー70079のこの個体は1958年12月20日にプレスリーのもとへ納車され、50年近く消息が不明だったが、BMWグループ・クラシックがおよそ2年間をかけてレストアし、今回の展示にこぎ着けた。
この個体は1955年のフランクフルト・モーターショーに展示され、プレスリーの手に渡る前にハンス・スタックのドライブでヒルクライム選手権に参戦している経歴を持つ。発見された時点ではエンジンとギアボックスが失われており、リアアクスルは社外の代替品でフロアの錆による侵食も進んでいたものの、それ以外はほぼ無傷に近い状態だったという。
プレスリーはこのクルマを兵役で南ドイツに駐留していた23歳のときに入手しているが、米国に帰還したときに持ち帰ったかどうかは不明だった。発見できたのは、シャシーナンバーと所有者を記録した書類がBMWに残っていたため。1968年に引き取った前オーナーで宇宙工学エンジニアのジャック・キャスターがシャシーナンバーから個体の経歴を知り、レストアに備えてのパーツ収集と保管を開始し、おかげでBMWはレストア可能な状態で引き取ることができたそうだ。
ジャック・キャスターは2014年11月に77歳でこの世を去り、BMWにプレスリーの507とレストア計画は引き継がれたが、失われたパーツはBMWにもストックがあまりなく、インストルメントパネルやシート表皮など、多くが当時のカタログなどの資料をもとに再製造されたとのこと。“キング”の所有した個体としてだけでなく、キャスターの遺産として、またBMWグループ・クラシックの手掛けた代表作としての意味も、ペブルビーチでの展示には込められているそうだ。