
ルノー トゥインゴGT/ルーテシアR.S. シャシーカップ
コンパクトなボディと圧倒的な小回り性能が売りのルノー トゥインゴ。今回、ルノー・スポールが走りを強化したMTとEDC仕様の「GT」が登場した。
もう一台はマイナーチェンジで随所に磨きがかかった「ルーテシアR.S.」。気になるのは当然走りだが、その実力は果たして……。
2台のベクトルは明確に分けられている
ドライビングにおけるスポーツの定義は人それぞれ。だが、走るという行為自体をそれとするなら、トゥインゴGTとルーテシアR.S.は、いずれもスポーツをする相棒にはピッタリといえる。
まずトゥインゴGTだが、昨年5速MT仕様が200台の限定車として上陸。こちらは発売されるや瞬時に完売したそうだが、この2月からは晴れてカタログモデルに昇格している。限定車との違いは、ボンネットからルーフエンドに至るストライプが省略されたこと。そして、5速MTに加えて6速DCTが設定されたことだ。
もちろん、ルノー・スポールがチューニングしたハードウェアは限定車と変わらない。搭載される0.9L 3気筒ターボは、サイドエアインテークの採用やエンジンマッピングの変更、エキゾーストのリファインなどにより標準版であるインテンス用ユニットより19psと35Nmが上乗せされた109psと170Nmを発揮。
一方、シャシーはスプリングとダンパーがそれぞれ40%強化され、フロントスタビも大径化(23mm)。ステアリングにはバリアブルギアレシオが採用されたほか、ESCも積極的な走りに応えられるようにリセッティングされている。

ボディカラーは、「オランジュ ブレイズM(オレンジ)」と「グリ リュネールM(グレー)」の2色。ボディサイドにはストライプが入り、リアフェンダーにはエアインテークも装備。17インチのホイールは、コンセプトカーから受け継がれた造形を採用。
その走りは、まさにスポーティなコンパクトハッチという見ためのイメージ通り。動力性能は誰もが日常的に使い切れる感覚の力強さで、エンジンの美味しい回転域を上手に摘んで走らせれば、十分な速さとともに走りの臨場感が味わえる。吹け上がりは良い意味でターボらしさが感じられる一方、回転落ちも納得の出来映えなので、特にMT仕様だと積極的にシフトする歓びも見出せる。
だが、走りの愉しさという意味ではDCT仕様も決して見劣りしていない。純粋なマニア的視点ならMTに軍配を上げる人が多いはずだが、歯切れの良い変速制御と多段化の恩恵もあって、こちらも走りは軽快。車重はMTより30kgほど嵩むものの、日常域でそれを意識させられることはない。また、DCT版は左足の置き場所に困らないことも魅力のひとつ。当然、十分以上の快適性を確保していながらRR駆動らしい軽いノーズの入り、あるいは強いトラクションを実感させつつ適度にリアを滑らせる(と感じさせる)絶妙な身のこなしもMTと変わらないから、1台ですべてをまかないたい人にも積極的にお勧めできる。
- TWINGO GT
- ボディカラーは、「オランジュ ブレイズM(オレンジ)」と「グリ リュネールM(グレー)」の2色。ボディサイドにはストライプが入り、リアフェンダーにはエアインテークも装備。17インチのホイールは、コンセプトカーから受け継がれた造形を採用。
- ボディカラーは、「オランジュ ブレイズM(オレンジ)」と「グリ リュネールM(グレー)」の2色。ボディサイドにはストライプが入り、リアフェンダーにはエアインテークも装備。17インチのホイールは、コンセプトカーから受け継がれた造形を採用。
- インテリアは、随所にオレンジのアクセントが入る仕立て。MTのシフトノブには亜鉛合金(ザマック製)を採用する。
- インテリアは、随所にオレンジのアクセントが入る仕立て。
- インテリアは、随所にオレンジのアクセントが入る仕立て。
- MTのシフトノブには亜鉛合金(ザマック製)を採用する。
- MTのシフトノブには亜鉛合金(ザマック製)を採用する。
- ベースユニット比で19psと35Nmが上乗せされた0.9Lターボは、適度なビート感とターボユニットらしい吹け上がりも魅力。
そんな実用性と適度な刺激を兼ね備えたトゥインゴGTと比較すると、ルーテシアR.S.は直球仕立てのスポーツハッチだ。もちろん、ルノーらしく実用域の快適性はこちらも上々。試乗車は昨年追加された中堅モデルのシャシーカップで、足回りは相応に引き締まっているのだが、ある程度速度が上がってしまえばライド感はフラットと形容できるほど。当然、気の利いた日常のアシとしても過不足なく使うことができる。

試乗車は昨年夏のアップデートで再設定された中堅グレードの「シャシーカップ」。その車高はベーシック仕様である「シャシースポール」比で3mmローダウン化され、フロントサスペンションは27%、リアは20%ハードなセッティングに。
しかし、ある種「自己完結型」な弟分とは異なり、こちらは絶対的な速さが追求されている。日常域だと柔軟にも振る舞える1.6Lターボは、EDCを積極的に操ってこそ本領を発揮する味付けだし、前述の足回りにしても相応の速域で深くストロークさせた際に持ち前の美点が活きる類のもの。つまり、このクルマの本性を理解し、堪能するには然るべき環境を用意することも肝要になるわけだ。トゥインゴGTを日常使いもできるトレーニングシューズとするなら、こちらはさしずめ準競技用。同じルノー・スポールの作品といっても、そのベクトルは明確に分けられているのである。
トゥインゴGT
■全長×全幅×全高=3630×1660×1545mm■ホイールベース=2490mm■車両重量=1040kg(EDC)/1010kg(MT)■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/897cc■最高出力=109 ps(80kW)/5750rpm■最大トルク=170Nm(17.3kg-m)/2000rpm■トランスミッション=6速EDC/5速MT■サスペンション(F:R)=ストラット:ド・デオン■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ドラム■タイヤサイズ(F:R)=185/45R17:205/40R17■車両本体価格(税込)=2,390,000円(EDC)/2,290,000円(MT)
ルーテシアR.S. シャシーカップ
■全長×全幅×全高=4105×1750×1435mm■ホイールベース=2600mm■車両重量=1290kg■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1618㏄■最高出力=200ps(147kW)/6050rpm■最大トルク=240Nm(24.5kg-m)/1750rpm■トランスミッション=6速EDC■サスペンション(F:R)=ストラット:トレーリングアーム■ブレーキ(F:R)=Vディスク:ディスク■タイヤサイズ(F:R)=205/40R18:205/40R18■車両本体価格(税込)=3,090,000円
COLUMN
LUTECIA R.S. TROPHY
よりホットなモデル
「トロフィー」は、ルーテシアRSで最も硬派なモデル。エンジンは、唯一220psと260 Nmを発揮するハイスペック版を搭載。足回りはシャシーカップ比でフロントが20mm、リアは10mm低くなり低重心化が徹底される。
取材協力=ルノー・ジャポン 0120-676-365