龍泊ライン(No.018)
龍が飛び立つ岬へ向けて駆け抜ける麗しの道。
龍泊ラインの北端である龍飛崎はアイヌ語のタムパからの転訛で「突き出た地」の意味だという説がある。南端の小泊は、日本各地で見つけられる地名でもあるが、これもアイヌ語のポン・トマリを語源とし「小さな(ポン)港(トマリ)」を意味するとい う。津軽という地名自体が崖を意味するツガ・カルを語源とするという説もある。これらの言葉に漢字の当て字をつけてきたのが我々の先代である。
国道339号は龍泊ラインから龍飛崎を経て三厩まで続く。このあたりは義経北行伝説が残る最北の地。
小泊から龍飛崎へ向けて龍泊ラインを走り、海岸線から離れて標高を上げる。360度のパノラマが広がる眺瞰台から半島を眺めると、その当て字のセンスの良さにあらためて感心してしまう。タムパを〝龍が飛ぶ〟と当て字し〝龍飛〟としているのは秀逸だ。
山ひだを縫うように緩やかで美しい道の曲線が見え隠れする。その姿はまるで雲間に舞い上がる龍のごときである。そして突端の龍飛崎めがけて海へと降りていく。漢字も、麗しい道も、後付けなのに現代の旅人の心までも震わせる。
国道339号の階段国道は、車道が未開通だった時代の名残。
とはいえ、陸奥湾側の三みんまや厩は、東北へと逃れた源義経が岩窟にいた3頭の駿馬を得て北海道へ渡ったという伝説に基づく地名であり、これも興味深い。
龍泊ラインを有する中泊町は中規模の港かと思いきや、飛び地である中里町と小泊村との合併後の名前である。
地名は旅心を刺激する。龍が飛ぶ岬は哀しい演歌の舞台だけではないのだ。