
清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safety Test)
Number 67:ハイパフォーマンスカーの同士が掛け値なしのガチンコ対決!
メルセデス AMG GT S vs ポルシェ 911 ターボ
TEST 03:ダブルレーンチェンジ
テストの「方法」と「狙い」
80km/hでコースに進入、障害物を回避してふたたびもとのレーンに戻るテスト。シャシーの総合性能、ESC(横滑り防止装置)など挙動安定化装置の能力をみる。そして、ドライバーが安心して操作できるかどうかも評価の対象となる。パニックに陥ったドライバーでも正確に操作できなくては、クルマが優れたシャシー性能を持っていても意味がないからだ。
曲がる・止まることに対するブランドの違いが露わになり、甲乙つけがたい名勝負となった。
MERCEDES AMG GT S
●操縦安定性:★★★★☆
●Wレーン通過タイム平均:78.08km/h(2回平均)
最近は横滑り防止装置ESCの普及で、ダブルレーンチェンジの通過速度は高まっているが、反面運転がうまくなったと勘違いするドライバーも増えてしまった。AMG GTの場合フロントタイヤの限界点が少々分かりにくい感じがあった。どこまでステアリングを切りこめばいいのかと思ったが、目いっぱい切り込むとノーズの追従性が非常に高いことに驚いた。フロントには重いV8ターボを搭載しているので、俊敏性ではポルシェにかなわないだろうと思ったが、実際はそうではなかった。思っている以上に高いスピードでレーンチェンジできたので、元のレーンに戻れないのでは……と不安になるくらいだ。V8のFRスポーツカーとしては秀逸の出来栄えだった。
圧巻のダブルレーンチェンジ
PORSCHE 911 TURBO
●操縦安定性:★★★★★
●Wレーン通過タイム平均:69.0km/h(2回平均))
911ターボのダブルレーンチェンジは圧巻だ。ステアリングを操舵するとワープしたようにレーンチェンジした。実はESC(PSM) が静かに介入し、進入速度を抑えているのだ。ここがAMG GTと違うところで、ポルシェはリアエンジンゆえにリアのオーバーステアを嫌って、徹底して安定性を再優先している。急ハンドルを切った時に不安定となる挙動は、RR最大の欠点なのでポルシェはずっと安定性を高める努力をしてきた。データを見ると、スポーツモードでの通過速度はAMG GTとほぼ同じだが、通常モードでの911ターボは10km/hも低い。つまりPSMを早期に介入させ、意図的に速度を下げる。両社のスポーツカーに対する考え方の違いが興味深い。