清水和夫のDST

ジャガーXE 20dピュア vs アウディA4 2.0TFSI、英国ブランドがドイツ車御三家の独擅場に待ったをかけた!【清水和夫のDST】#73-1/4

清水和夫のダイナミック・セイフティ・テスト(Dynamic Safty Test)
Number73(SEASON.6):英国仕立てのプレミアムサルーンがドイツ車御三家の独擅場に待ったをかけた!

ジャガーXE 20dピュア vs アウディA4 2.0TFSI

アッパーミドルサルーン市場を意のままに独占してきたメルセデスとBMWの二強に、新たに入り込んだアウディ。ブランドの認知度も高まりドイツ車御三家と呼ばれるようになった。一方、英国が誇る高級車ジャガーもフォードからインドのタタ社へと資本家が変わり、モデルラインアップを刷新。ドイツ勢にこの英国ブランドがどう対峙するのか、興味はつきない。

DセグはFFかFRかガソリンかディーゼルか

アウディは真剣にFRプラットフォームの開発を考えたほうがいいかもしれないと、今回のテストを通じて強く感じた。それは、ますます進化するプレミアムブランドの中で、アウディの存在感が薄らぎつつあるからだ。メルセデスとBMWを追いかけるようにアウディはずっと前から「技術による先進」をスローガンに掲げてプレミアム路線を突き進んできたが、VW・アウディのディーゼル不正問題でつまずくと、電気駆動の戦略に力を入れると発表した。だが、個人的にはアウディにはもっとエンジンの魅力を見せて欲しいと思う。今回テストした新開発のターボアトキンソンサイクルはとても先進的で、クワトロとの組み合わせでも進化を期待したいというのがその理由だ。

運動性能と乗り心地はどうか。高速の安心感こそアウディの得意分野だったが、FFのA4を高速で走ると、クワトロとの差が大きかった。FFは大きな横Gをかけていくとステアリングに頼りなさを感じるし、ボディの剛性感も不足気味と感じた。

ジャガーのディーゼルは実用的

英国では以前からジャガーのディーゼルは人気者だ。トルキーなエンジンはジャガーの大人っぽい走りに合っている。先代のXJの時代からジャガー・ランドローバーの試乗会に行くと、XJディーゼルでショーファー送迎が行なわれており、その後席ではディーゼルだと気が付かなかったほどだ。
XJはともかく、今回テストしたXEはれっきとしたドライバーズカー。しかもアルミボディとディーゼルエンジンの組み合わせはジャガーだけ。アルミの使用は単なる重量軽減のためだけではなく、重量の最適化こそが真の狙いで、サブフレームやサスペンションはアルミ製だが、そこには強さをもたらすべく、タップリとウェイトを与えている。そのおかげで、足腰がしっかりとした印象の走りが味わえるのだ。

A4もXEも同じ2輪駆動だが、ふたつのタイヤで駆動するならFRが有利。ゴルフクラス(Cセグメント)ならFFのほうがパッケージ的な優位性はあるが、プレミアムブランドの快適性と操縦性を考えるとFFでは限界がある。FRのほうが前後のタイヤをバランスよく利用できるし、より上質な走りが可能だ。プレミアムブランドではFFよりもFRが適しているといえる。
一方エンジンは、排ガス浄化装置のコストがますます高まることを考えると、(価格がさほどネックにならない)プレミアムブランドこそ、今後はディーゼルエンジンが主力になるかもしれない。

ジャガー独自開発のインジニウム(見事なという意)と名付けられたディーゼルエンジン

ジャガーのインジニウムディーゼルはBMWほどスポーティではないが実用的なエンジンだ。エンジンルームを見るとラジエターとの隙間が大きいので、もしかしたら直列6気筒のディーゼルが開発されるかもしれない。メルセデスもガソリンの直列6気筒を実用化する。ジャガーの直列6気筒が復活する日は遠くないかもしれない。

アウディはクワトロに専念すれば差別化可能

通信簿ではFFのA4がFRのXEに負けてしまったが、A4の失点はウェットの旋回ブレーキに課題が残ってしまったことにある。XEよりもタイヤが減っていた点も敗因だが、根本的にはABSの制御とFFのシャシー性能の熟成不足が原因かもしれない。日本ではA4のFFよりも、クワトロに専念するのもいいだろう。
XEはFRにディーゼルを組み合わせることで、トルキーでスポーティなハンドリングのサルーンを実現した。メルセデスCクラスディーゼル、BMW3シリーズディーゼルとガチの戦いなら、ドイツ車とは違う英国車らしい乗り心地を持っているのが強みだ。

RESULT

プレミアム市場では駆動方式の違いも重要なファクターに

●アウディA4 2.0 TFSI:14.0/20点
●ジャガーXE 20d ピュア:15.5/20点

リポート:清水和夫 フォト:篠原晃一 ル・ボラン 2016年10月号より転載

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