国内試乗

【国内試乗】「BMW 320i M Sport」新世代モデルを徹底検証

あたらしい3シリーズはいかなる進化を遂げたのか!?

いよいよ日本の公道を走りはじめた新型3シリーズセダン。その洗練されたデザインや先進の機能装備を語る前に、気になる動力性能と乗り心地について、まずは主力グレードの320i Mスポーツから実際にステアリングを握ってリポートしよう。

まずは市街地や都市高速で新型3シリーズの走りを確かめた萩原秀輝リポーター。Mスポーツのサスペンション設定は硬めだが、それが乗り心地の悪化とはイコールではない理由について掘り下げた。

Mスポーツに対する期待を満足させるサスペンション

新型3シリーズの主力となる320iは、欧州での展開がやや遅れたので日本市場専用に先行投入された。上位モデル330iと同系となる2L直列4気筒直噴ターボエンジンは、ディチューン版とはいえ最高出力は184psに達し、最大トルクは従来型と比べて30Nm上乗せされた300Nmを発揮。車両重量は装備が大幅に充実しながら20kg軽減され1560kgとなり、スペックから察してもパフォーマンスに不足はない。

新型3シリーズのテールパイプは全モデルが左右2本出しとなる。

実際に、低回転域から力強さの余裕を感じる。アクセルペダルに足を乗せる程度でも市街地で周囲の流れに合わせることができ、8速ATは2速までは2000rpmあたりに達するが、3速以降は1500rpm以下でシフトアップが繰り返される。流れに乗って一定の速度を保つ場面では、1000rpmそこそこで走っていることさえある。
しかも、アクセルを少し踏み足せば素早くシフトダウンされ加速態勢に入る。それでも、高回転域まで引っ張る必要はなく、都市高速なら中回転域でも速やかに先行車を抜き去ることが可能だ。さらに、ドライビングパフォーマンスコントロールの走行モードで「SPORT+」を選べば、アクセル操作に対する応答性が向上。大ざっぱに踏み込むと、トルクがカタマリとなって飛び出してくるほど。そのため、アクセル操作に気遣いが必要になるので、一般路では「COMFORT」のままでいいだろう。

Mスポーツはインテリアのトリムにアルミニウム・テトラゴンを標準装備。

一方で、気持ちのいい加速は5000rpmまでは確かめられるが、アクセルを床踏みし続けて6000rpmまでブン回しても加速の勢いが増す実感はあまりない。トップエンド付近では硬質なエンジン音が重なることもあり、パワーよりもトルクで走らせた方が320iの魅力が引き出せる。

ハードな設定はBMWらしい走りを期待すればむしろ好ましい

今回試乗したMスポーツ仕様のサスペンションはかなり硬めの設定となる。ただ、BMWらしい走りを期待する人にはむしろ好ましいはずだ。また、硬いから乗り心地が悪いというわけではない。ディーラーで試乗をする際に、誤解しないように注意していただきたい。硬くてもサスペンションがスムーズに動けば、路面からの突き上げなどの不快な振動が抑えられるからだ。
なおかつ、新採用のストローク依存型ダンパーも威力を示している。ストロークが長くなる(伸びる)際に減衰力が高まる、パッシブな可変ダンパーなのだ。路面段差などを通過しても、大きな衝撃を抑え込みつつボディの縦揺れをスムーズに収束させる。逆に、ストロークが短くなる際の減衰力を低くすることが可能となり、目に見えないような路面の荒れを通過してもブルブルという振動とは無縁でいられる。

320iが搭載するのは日本市場のために専用開発された2L直列4気筒直噴ターボエンジンだ。充実したトルクを発揮することが特徴であり力強さの余裕が実感できる。

なおかつ、従来型よりも25%剛性が向上したボディも乗り心地を犠牲にしない重要なファクターだ。高剛性ボディが通常レベルの振動を遮断し、それでも伝わってくるタイヤがドスッ打音を発するような強い衝撃は巧みに減衰するからだ。

Mスポーツは18インチタイヤを標準装備する。接地感はやや硬めだがサスペンションがスムーズに動くので不快感はない。

その意味で、新開発ボディはロードノイズの抑制にも役立っている。舗装の骨材がハッキリ視認できるようなザラついた路面では、ゴーッというロードノイズは聞こえるが、振動によるノイズはボディが減衰する。ピラーを通じて耳元から聞こえることもなく、音源が分散されずに床下から届く感じなので騒がしさを意識させない。
もちろん、Mスポーツらしい走りへの期待は十分に満足させる。高速でコーナーを通過する場面などでは、微小な舵角からステアリング操作の通り忠実にクルマが向きを変えることがわかる。その切れ味はスムーズそのものであり、「COMFORT」モードなら手応えが重すぎることもない。「SPORT」を選べば手応えが増すものの、ダイレクトなハンドリングを楽しむには適度な範囲だ。都市高速だけではなくワインディングロードを駆けぬけたくなる気分にさせる設定といえる。

都市高速で先行車を追い抜く際でも、アクセルを少し踏み足すだけで十分。応答性はターボを意識させないほど速やかであり自伝吸気式エンジンのようだ。8速で100km/h時の回転数は、わずか1400rpm。静粛性は5シリーズに迫るほどだ。

【Specification】320i Mスポーツ
■ハンドル位置=右
■全長×全幅×全高=4715×1825×1430mm
■ホイールベース=2850mm
■トレッド=前1585、後1570mm
■最小回転半径=5.3m
■燃料タンク容量=59L
■JC08モード燃費=15.2km/L
■車両重量=1560kg
■トランスミッション形式=8速AT
■変速比=1速5.250、2速3.360、3速2.172、4速1.720、5速1.316、6速1.000、7速0.822、8速0.640、R3.712、F2.813
■エンジン型式/種類=B48B20B/直4ターボ
■総排気量=1998cc
■圧縮比=10.2
■最高出力=135kW(184ps)/5000rpm
■最大トルク=300Nm(30.6kg-m)/1350-4000rpm
■サスペンション形式=前ストラット、後5リンク
■ブレーキ=前後Vディスク
■ステアリング=EPS
■タイヤ(ホイール)サイズ=前225/45R18(7.5J)、後255/40R18(8.5J)
■車両本体価格=5,830,000円

【問い合わせ】
BMWジャパン 0120-269-437 https://www.bmw.co.jp/

リポート:萩原秀輝/H.Hagihara フォト:山本佳吾/K.Yamamoto BMW COMPLETE 2019 VOL.71 より

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