国内試乗

【国内試乗】「スズキ・スイフトスポーツ」徹底した軽量化で欧州車にはない魅力を獲得

毎日の移動にドライビングプレジャーを与えてくれる

欧州車に引けをとらないハンドリング性能や足回りを備え、しっかりと“スポーツ”できながら、普段使いでも不自由しない使い勝手を備えたスズキ・スイフトスポーツ。この、“スイスポ”が持ち合わせるベストバランスこそ、クルマ経験値が高い大人を満足させてくれる一番の魅力なのかもしれない。

アクセルを踏み始めた瞬間から湧き上がるトルクに、寝ぼけた頭がパキッ! と目を覚ます。ガッチリとしたボディはそのパワーを見事に受け止め、ボクはトップエンドまでエンジンを引っ張り、次のギアへと素早くシフトする。
すると一瞬だけトルクは途切れるが、クラッチをつないだ途端に再び、あの漲る加速が訪れる。
それと同時にボクの体中からもブワッと活力が漲って行く。心地良くアドレナリンが湧き上がる。
「これだよ……。これ!」
スイフトスポーツに乗る度に、ボクはこうした高揚感を味わう。脳みそと体が覚え込んでいた感覚が甦り、元気が出てくるのだ。

なぜスイフトスポーツはこんなにも楽しく刺激的なのか? それは何よりもこの小さなハッチバックが、いやスズキというメーカーが、「軽量化」という自動車メーカーとして一番の難題に対して、真摯に向き合っているからだ。それもカーボンといった特殊かつ高価な素材などは用いることなしに。
ちなみにスイフトスポーツの車重は、6速MTモデルで970kg、6速ATモデルでさえ990kgという軽さである。これは先代比で50kg(6速MT比)、同じBセグメントの王道、フォルクスワーゲン・ポロGTIに比べ、なんと300kg以上も軽い数値だ。

もちろんスイフトスポーツとポロGTIの両者には、立ち位置の違いがある。ポロGTIは2Lターボを搭載し、アウトバーンの日常化を宿命づけられたプレミアムコンパクトであり、かたやスイフトスポーツはピュアスポーツだ。軽さは運動性能の向上に直結するが、スタビリティや質感、ひいてはプレステージ性を重んじれば、大径タイヤとそれに堪えうるボディを与えるべく重量はかさむ。この軽さとスタビリティどちらを取るかで、個性は決まる。
そしてスズキは軽さを選んだ。この潔さこそが、私たちクルマ好きを唸らせるのである。

いろいろなクルマに乗った人こそスイスポはオススメ

そんな超軽量ボディには、1.4Lにして140ps/230Nmの出力を発揮する直列4気筒直噴ターボ「K14C」型ユニットが搭載されている。
このエンジンがもたらす恩恵は、単純明快。ずばり速さだ。
スイフトスポーツといえば先代まで1.6L自然吸気の直列4気筒ユニットを搭載し、その気持ちいい吹け上がりで多くのファンを獲得していた。
しかし現行スイフトは次世代への生き残りをかけて、この自然吸気ユニットと決別を図った。
当然ながらこれにより、かつての小排気量NAならではの爽快感は手放すこととなった。しかし代わりに、+4ps/+70Nmの出力アップを獲得。特に最高出力よりも最大トルク増大に主眼を置いた性能向上は大正解だった。

メーターパネル中央にはブースト計のディスプレイも可能で、スピードメーターの目盛りは260km/hまで刻まれる。

さらに現行モデルから3ナンバーとなったボディもその速さを後押しする。小型車が3ナンバー化することを嫌うクルマ好きは多いが、スイフトスポーツの場合はこれが当てはまらない。なぜなら、広げられた前後トレッドのおかげで足下には17インチのコンチネンタル・スポーツコンタクト5が収まり、先代モデル同様の天地に広い室内空間に対しては、重心を低めることができているからだ。なおかつ車両重量は、増えるどころか先代よりも軽いのである。

エンジンは燃圧を高め、ウエストゲートバルブを過給圧がかかりやすい制御へと変更してレスポンスを向上。排気抵抗を抑えたデュアルエキゾーストの効果もあり、スポーツエンジンといってもいいフィーリングを獲得している。

ボクは今まで何度もこのスイフトスポーツをサーキットで走らせたが、その度にこの小さなスポーツカーにドライビングの奥深さを教えられている。ブレーキング次第でニュートラルステア領域へとバランスする姿勢変化の面白さ。軽さとパワーの刺激。それに甘えず、17インチタイヤのグリップを使い切ることの大切さ。
いつまでも走り続けたくなる欲求に対して、この軽さとタフなボディはしっかりと応えてくれる。
こんなコンパクトスポーツが、200万円を切るスタートプライスで手に入るのはとても贅沢であり、奇跡だ。

いろいろなクルマに乗ってきた大人をも満足させる走り、そしてスタイリッシュな外観を手に入れたスイフトスポーツ。プライス以上の満足度は十分に得られるけれど、その性能を味わえば味わうほど、このクルマにはもっと予算を掛けて仕立ててもよいのではないか?と欲も出てくる。250万円くらいになってもよいからホットバージョンを出す価値は十分ありそうだ。
そうすればスイフトスポーツは、世界と本気で闘える日本車になるだろう……と、ボクは本気でそう思うのである。

Specification】SUZUKI SWIFT SPORT

■全長×全幅×全高=3890×1735×1500mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=970[990]kg
■エンジン種類/排気量=直列4気筒DOHC16V+ターボ/1371cc
■最高出力=140ps(103kw)/5500rpm
■最大トルク=230Nm(23.4kg-m)/2500-3500rpm
■トランスミッション=6速MT[6速AT]
■サスペンション=前:マクファーソンストラット、後:トーションビーム
■ブレーキ=前:Vディスク、後:ディスク
■タイヤサイズ=前後:195/45R17
■車両本体価格(税込)=1,836,000円[1,906,200円]
※[ ]内は6速ATのデータ

走り出すとやや重めのステアリングが高揚感を後押しし、エンジンは中速域でも力強く、高回転域を多用しなくてもスポーティな走りを満喫できる。

【問い合わせ】
スズキ 0120-402-253

リポート:山田弘樹/K.Yamada フォト:郡大二郎/D.Kori ル・ボラン2019年7月号より転載
LE VOLANT web編集部

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